ラウンド・ミッドナイト

2021-01-31 | 【断想】音楽

 チェット・ベイカーの「ラウンド・ミッドナイト」。
 死の2年前、1986年の「クール・キャット」(タイムレス・レコード)から。
 チェット・ベイカー(tp,vo)
 ハロルド・ダンコ(p)
 ジョン・バー(b)
 ベン・ライリー(ds)
 チェット・ベイカーは、みずからの生で、人の弱さ、小ささを僕たちに思い知らせる。
 同時に、それを乗りこえるすべのひとつを示してくれているかのようだ。
 とても不完全であるとしか思えぬが。
 彼の歌やトランペットの声・音は、波立つ心を静める方法を示唆する。
  チェット・ベイカー自身が、どこまで自覚していたかは知れぬ。
 でも、彼の音楽は結果として示している。
 今夜、やしろの黒い木の向こうに光る丸い月。
 和泉式部の歌
 冥きより冥き道にぞ入りぬべきはるかに照らせ山の端の月
 「ラウンド・ミッドナイト」に耳を傾けてみよう。


アワ・マン・イン・パリ

2021-01-31 | 【断想】音楽

 デクスター・ゴードンの「アワ・マン・イン・パリ:OUR MANN IN PARIS」(1963 Blue Note)。
 1962年に渡欧し、翌63年にパリで録音されたアルバム。
 錚々たる顔ぶれで演奏されている。
 デクスター・ゴードン:DEXTER GORDON(ts)
 バド・パウエル(p)
 ピエール・ミシュロ(b)
 ケニー・クラーク(ds)
 デクスター・ゴードンは、コールマン・ホーキンスより年下、ジョン・コルトレーンやソニー・ロリンズよりは年上。
 以前、「ゴー」を聞いたとき、どんな印象を持っただろうか。
 いいけど、これと言ったひきつけるものがない。
 収録曲は5曲。
 1.スクラップル・フロム・ジ・アップル
 2.ウイロー・ウィープ・フォー・ミー
 3.ブロードウェイ
 4.ステアウェイ・トゥ・ザ・スターズ
 5.チュニジアの夜
 デクスター・ゴードンの主なアルバム。
 ・1947:ザ・ダイヤル・セッション(Storyville-Polydor)
 ・1955:ホット・アンド・クール(Dootone) 
 ・1962:ゴー!(Blue Note)
 ・1963:アワ・マン・イン・パリ(Blue Note)
 ・1965:ゲッティン・アラウンド(Blue Note)
 ・1969:ライブ・アット・パラダイオーソ(Odeon)
 ・1974:「アパートメント」(teeple Chae)

 


クレイジー・ムーン:Crazy Moon

2021-01-31 | 【断想】音楽

 Chet Baker / Oh You Crazy Moon ~ The Legacy Vol.4(enja)
 1978年、チェット・ベイカー49歳の録音である。
 1曲目は、「ザ・タッチ・オブ・ユア・リップス」。
 ヴォーカルだけである。
 その声には、若々しさ、ナイーブさを感じる。
 2曲目は、「ビューティフル・ブラック・アイズ」。
 これは、トランペット。
 3曲目は、アルバム名になっている「オー・ユー・クレイジー・ムーン」。
 ヴォーカルとトランペット。
 月からの何やら妖しい光の滴り・・・でも、さみしい心にひとときの慰め・・・。
 4曲目、「ラブ・フォー・セール」。
 そして、「ワンス・アポン・ア・サマータイム」、「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」。 6曲、収録されている。
 パーソネル
 チェット・ベイカー(tp,vo)
 フィル・マーコウィッツ(p)
 スコット・リー(b)
 ジェフ・ブリリンガー(ds)  
 ジャズの魅力、人の喜びや悲しみが、演奏者の存在と一体になって表現される。
 演奏者は、自分の存在をかける。
 そうでないジャズもあるが、それは、ジャズと言えるのか。
 チェット・ベイカーの音は、いつも悲しみをたたえている。
 叙情がある、こけおどしのような気どりはない。
 明日の運動会や遠足を前に、わくわくする、そんなところはない。
 恋に胸がときめくと言うのではない、彼女といると安心できる、心がやすまる、やさしさに感謝する・・・・。