いびつな握りコブシ

　蝉の声がない静かな朝だ。
　ベランダから見おろす木についた赤い花のようなものは、コブシの実。
　袋果の集合果。いびつな握りコブシ。

ブナはいいけど

　ブナの実は、多くの動物の餌となる。その落ち葉は良質な腐葉土となる。その腐葉土は、養分たっぷりの水をつく出し、田畑の作物を実らせ、海に注ぐと魚介を育てる。ブナは、多くの命に恵みをもたらしている。だが、建材としては、ほとんど使われることがない。加工後、狂いが生じやすい、耐久性がない、虫に弱い、その上、板にしたとき出る斑点が、日本人の美意識にあわないというわけである。それで、ブナは漢字で、木偏に無と書かれてしまったりしている。
　白神山地のブナ林が世界遺産に登録されるなど、そのイメージはプラスに振れているが、長短あり、それぞれの持ち味があるということだ。