梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

事業の継承(その2)

2018年12月08日 04時55分43秒 | Weblog
政府が行なった事業継承税制の今回の改正では、納税が猶予される割合が8割から全額になり、対象となる株式も発行総数の3分の2から全てに拡大されました。継承時点での税負担をゼロにすることができます。更に孫の代まで経営を引き継げば、猶予されていた税負担は免除されます。まさしく、日本の産業を支える中業企業の事業継承を円滑に進める為の優遇措置です。

そのセミナーで、東京税理士会の先生と東京都事業引継ぎ支援センターの担当者からの話しを受けて、実態が2~3浮かび上がってきました。2015年のデータでは中小企業の経営は誰へ継承されたか、その内訳は親族33%、従業員26%、第三者41%だそうです。しかし今から50年前は、親族継承が93%を占めていたとのことでした。

経営者のボリュームゾーンは20年前が47歳であったのに対し、現在は66歳前後と、当時のボリュームがそのままスライドした状態となっているそうです。それらの多くが70歳前後でリタイアを希望するとすれば、後継問題は正に正念場を迎えます。引き継ぎ手が現れず更に続投を余儀なくされるのか、後継者不在で廃業するのか、あるいはM&Aの道を模索するのか。

東京商工会議所は東京都事業引継ぎセンターを設けて、中小企業の、主にM&Aを無料で支援しています。具体的な仕事は、譲渡希望企業と買収希望企業からの相談や、実際のM&A成約です。

譲渡希望企業が多いかと思いきや、買収希望企業も多く、件数は拮抗しているとのことでした。買収希望企業の目的は、新たな技術取得もさることながら、人材確保が挙げられるそうです。会社ごと人材を確保する。現在の求人難の世相を反映してるともいえます。このような説明を受けると、正に中小企業のおかれている厳しい実態が見えてきます。

わが社は先代が昭和27年に創業して、今年66年目になります。大正時代中期、私の祖父が鉄の仕事に携わって、戦中・戦後10年ほどのブランクはありましたが、鉄の主体から外れることなく、お陰様で長きに亘り事業を継承させてもらっています。

5年前の11月22日、創業60周年記念式典を新浦安のホテルで、多くのお客様を招いて挙行させてもらいました。その11月22日は、以来わが社の創業記念日と制定しました。

今年は私の都合が悪く、前の日の11月21日に行事をおこないました。行事といっても、全社員がお昼時間に少し豪華なお弁当を買ってきて食堂で食べ、その後会社前面に設置してあるモニュメントを皆で綺麗に磨き上げ、その前で集合写真を撮ります。そのオブジェとは、祖父の時代に工場で使っていたシャーリング機のフライホイールです。

前回紹介しました伸鉄メーカーは、最盛期100社以上存在した同業者がほぼ撤退する中で、それでも生き残った会社です。親族四代に引き継がれ、更に現社長の息子も会社におられます。伸鉄メーカーは一時期、斜陽産業と言われました。斜陽かどうかは問題ではなく、長年の技術力を活かしニッチの市場に対応して存続したのです。

事業の継承問題は、後継者が存在するのか・会社の中身はどうなのか、この両輪です。わが社のオブジェは一つだけの輪ですが、事業継承の両輪を見据えていきます。


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