【理念や社是・家訓】
何代も続く老舗から銀行が離れないのは、長く培われた確かな社是や家訓があるからです。反対に老舗であっても銀行が去っていくのは、その社是や家訓を軽視することが一つの要因となるでしょう。社是や家訓は、理念ともいえます。理念とはその会社の行動の基礎となる旗印です。会社の存在意義や価値観などが理念の中核をなします。
理念に基づいて、社員が共に働き、扱う商品やサービスが生かされます。理念により社長も正され、理念が受け継がれながら後継者も育ちます。それによって何代も続く企業となり、社歴が長くなるのは(老舗)、その結果としてです。銀行に対する担保に関しては、前回まで色々書かせてもらいましたが、理念も物的や人的(個人保証)に匹敵する無形の担保です。
銀行が注視したり警戒したりするのは、経営者交代の時です。理念に沿ってその会社が経営されていくのかが、銀行の大きな視点となります。理念として明文化されたものがなくとも、前社長の思いや経営方針からかけ離れていないか、そこが関心事です。後任の社長が、従来の路線を無理やり変えようとしていると捉えられてしまうと、銀行としても退いた先代の意向を、場合によっては確認してみたいとなるのです。
わが社は来年加工機器の大型投資を打ち出していますが、現に最近私にメイン銀行の支店長が何回か接触を図っています。久しぶりに支店長と対談してみると、単刀直入ではありませんが、遠回しにその話題に触れられました。社長とは十分に導入を話し合った上で、一年越しの懸案の実行でした。現社長の独断で行われていないかと、探っていたのかもしれません。銀行の手堅さを感じ、だからこそ安心できる存在なのだと、好感的に受け止めました。
企業の一番の使命は「継続・存続」である、という人がいます。確かに短期に利益を上げても、長いスパンで永続しなければ会社の存在意味はありません。では何故長いスパンでの永続なのかです。「社員の雇用を守り、自社の仕事を通し社会貢献を実現できるから存続が大事」だと、私は捉えています。これに限ったことではありませんが、個々の経営者の思想が込められていて、どれだけ社員を巻き込んでいるかが、その企業の理念だと思います。
【経営者自身】
「会社は社長の器以上には大きくならない」と、よくいわれます。会社を生かすも殺すも社長次第であり、それだけ社長の資質が会社に影響を及ぼしているのです。幹部や社員が優秀で、社長がさほど才能が無く実質仕事をしなくても良い会社があるのではないか、との反論があるかもしれません。しかし、組織である以上無秩序な放任主義は会社を混乱させ、任せた社長の管理責任は免れられず、いざ会社が大きな問題を抱えたら最終責任を取るのは社長しかいません。従って経営者こそ、銀行の担保となっていることを自覚すべきです。
私の経験の範囲となりますが、会社を潰した取引先の社長には特徴があります。中でもその最大は公私混同です。次に、独断や傲慢(人の言うことに耳を貸さない)、見栄っ張り、嘘をつく、言動不一致などなど並べてみるときりがありません。自ら自分を律しなくてはならない社長は孤独といわれます。しかし社員はその後ろ姿を見ています。社員に支持されない社長に、社外(銀行)からも手を差し伸べてはくれません。公私混同を排除し、苦しくなっても誰も助けてくれない覚悟を持てば、協力者は必ず現れると思います。
【最後に】
通常の融資以外で、会社の土地取得の際や先代の相続において、取引銀行には色々なアドバイスをもらい、資金調達の上でも支援を受けました。30代で社長となり、拙い経験の連続でしたが、銀行との取引は正に私の社長業の歴史でもあります。銀行の方には数々の失言もしました。覆水盆に返らず。その失敗も糧となりました。
今回のテーマは現社長からの質問が切っ掛です。この機会に、今までの銀行との付き合いを整理するために、関連する文献も当たってみました(下記※)。相手との付き合い方を、相手がどう見ているかの、裏返しの見方をベースとしました。“彼を知り己を知れば百戦殆うからず”ではありませんが、相手を善く知る努力をすれば自ずと見えてくるものがあります。このシリーズ六回に亘り、お付き合い下さり感謝致します。
※ 参考・引用文献
『銀行管理の内幕』森彰英著/日新報道出版社
『銀行は、社長のどこを見ているのか?』藤原勝法著/青春出版社
『金融機関の活用法と付き合い方』関根宏而著/税務経理協会
『中小企業の「事業継承」はじめに読む本』藤間秋男著/すばる舎
何代も続く老舗から銀行が離れないのは、長く培われた確かな社是や家訓があるからです。反対に老舗であっても銀行が去っていくのは、その社是や家訓を軽視することが一つの要因となるでしょう。社是や家訓は、理念ともいえます。理念とはその会社の行動の基礎となる旗印です。会社の存在意義や価値観などが理念の中核をなします。
理念に基づいて、社員が共に働き、扱う商品やサービスが生かされます。理念により社長も正され、理念が受け継がれながら後継者も育ちます。それによって何代も続く企業となり、社歴が長くなるのは(老舗)、その結果としてです。銀行に対する担保に関しては、前回まで色々書かせてもらいましたが、理念も物的や人的(個人保証)に匹敵する無形の担保です。
銀行が注視したり警戒したりするのは、経営者交代の時です。理念に沿ってその会社が経営されていくのかが、銀行の大きな視点となります。理念として明文化されたものがなくとも、前社長の思いや経営方針からかけ離れていないか、そこが関心事です。後任の社長が、従来の路線を無理やり変えようとしていると捉えられてしまうと、銀行としても退いた先代の意向を、場合によっては確認してみたいとなるのです。
わが社は来年加工機器の大型投資を打ち出していますが、現に最近私にメイン銀行の支店長が何回か接触を図っています。久しぶりに支店長と対談してみると、単刀直入ではありませんが、遠回しにその話題に触れられました。社長とは十分に導入を話し合った上で、一年越しの懸案の実行でした。現社長の独断で行われていないかと、探っていたのかもしれません。銀行の手堅さを感じ、だからこそ安心できる存在なのだと、好感的に受け止めました。
企業の一番の使命は「継続・存続」である、という人がいます。確かに短期に利益を上げても、長いスパンで永続しなければ会社の存在意味はありません。では何故長いスパンでの永続なのかです。「社員の雇用を守り、自社の仕事を通し社会貢献を実現できるから存続が大事」だと、私は捉えています。これに限ったことではありませんが、個々の経営者の思想が込められていて、どれだけ社員を巻き込んでいるかが、その企業の理念だと思います。
【経営者自身】
「会社は社長の器以上には大きくならない」と、よくいわれます。会社を生かすも殺すも社長次第であり、それだけ社長の資質が会社に影響を及ぼしているのです。幹部や社員が優秀で、社長がさほど才能が無く実質仕事をしなくても良い会社があるのではないか、との反論があるかもしれません。しかし、組織である以上無秩序な放任主義は会社を混乱させ、任せた社長の管理責任は免れられず、いざ会社が大きな問題を抱えたら最終責任を取るのは社長しかいません。従って経営者こそ、銀行の担保となっていることを自覚すべきです。
私の経験の範囲となりますが、会社を潰した取引先の社長には特徴があります。中でもその最大は公私混同です。次に、独断や傲慢(人の言うことに耳を貸さない)、見栄っ張り、嘘をつく、言動不一致などなど並べてみるときりがありません。自ら自分を律しなくてはならない社長は孤独といわれます。しかし社員はその後ろ姿を見ています。社員に支持されない社長に、社外(銀行)からも手を差し伸べてはくれません。公私混同を排除し、苦しくなっても誰も助けてくれない覚悟を持てば、協力者は必ず現れると思います。
【最後に】
通常の融資以外で、会社の土地取得の際や先代の相続において、取引銀行には色々なアドバイスをもらい、資金調達の上でも支援を受けました。30代で社長となり、拙い経験の連続でしたが、銀行との取引は正に私の社長業の歴史でもあります。銀行の方には数々の失言もしました。覆水盆に返らず。その失敗も糧となりました。
今回のテーマは現社長からの質問が切っ掛です。この機会に、今までの銀行との付き合いを整理するために、関連する文献も当たってみました(下記※)。相手との付き合い方を、相手がどう見ているかの、裏返しの見方をベースとしました。“彼を知り己を知れば百戦殆うからず”ではありませんが、相手を善く知る努力をすれば自ずと見えてくるものがあります。このシリーズ六回に亘り、お付き合い下さり感謝致します。
※ 参考・引用文献
『銀行管理の内幕』森彰英著/日新報道出版社
『銀行は、社長のどこを見ているのか?』藤原勝法著/青春出版社
『金融機関の活用法と付き合い方』関根宏而著/税務経理協会
『中小企業の「事業継承」はじめに読む本』藤間秋男著/すばる舎
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