梶哲日記

鉄鋼流通業会長の日々

シルクロード(その3)

2021年03月13日 04時48分20秒 | Weblog
今から一億年前、中国内陸部は海だったといいます。それが地殻変動によってインド亜大陸がユーラシア大陸に衝突して、中国内部に相当な力が掛かり、断層が隆起しヒマラヤなどが造山されます。その結果、祁連(きれん)山脈や天山山脈や崑崙山脈などが出現します。

崑崙山脈は、標高6000m以上の高山が200峰以上連なり、東西約3000㎞にも及びます。これら東西の壁の山肌を縫うように、また広大な砂漠を避けるように生まれたのがシルクロードです。中国西安から敦煌までを河西回廊、敦煌から更に西域は北から、天山北路、天山南路、西域南路とシルクロードは三つに分かれます。 



隆起した高い山は万年雪や氷河を抱いています。それらが解けて水となり、低地に流れていき河や地下水となります。その水を利用すれば作物が実ります。シルクロードには塩湖が点在します(海底が隆起し海水が閉じ込めれた塩湖も)。水、食料、塩があれば人は生きていけてオアシス都市も形成され、激しい大自然の中でも旅人は行き交うことが可能なのだと、今回のテレビの番組などを通し理解出来ました。

シルクロードの起源は紀元前2世紀、前漢・武帝が西域(中央アジア以西)の調査を始めたことに由来します。それまで、反対側のヨーロッパからアジアへの道は中国との国境で止まっていましたが、いわば当時は、天山、崑崙、ヒマラヤなどの大山脈が古代中国文明を世界から守っていたことになります。中国と同盟を組んでいた遊牧民の一部が、敵対する部族に追い出され西方へ去って行った。後を追って、武帝が派遣した張騫率いる外交使節団が中央アジアを訪れたことで、偶然にも西方への道が開かれました。

6~14世紀交易を軸に、この絹の道は隆盛期を迎えます。15~16世紀海洋での大規模な地理的発見があった後、大陸間の陸運ルートは衰退し始めました。海運のスピード、運搬量、安い輸送コストは、15世紀の終わりごろシルクロードの衰退をもたらしました。しかし、タジキスタン、アフガニスタン、パキスタン、インド、中国を結ぶ、特に高山地帯のルートは20世紀初頭まで存在していました。

しかしそのシルクロードが復活しています。中国が推進する「一帯一路」は、同国とヨーロッパにかけての巨大経済圏構想です。習近平中国共産党中央委員会総書記が、2013年カザフスタンでの演説でこの構築を提案したことに始まり、翌2014年中国で開催されたアジア太平洋経済協力首脳会議で、習総書記が提唱しました。中国からユーラシア大陸を経由してヨーロッパにつながる陸路の「シルクロード経済ベルト(一帯)」と、中国沿岸部から東南アジア、アラビア半島、アフリカ東岸を結ぶ海路の「21世紀海上シルクロード(一路)」の二つの地域で、インフラストラクチャー整備、貿易促進、資金の往来を促進する計画です。

この一帯一路をネットで少し調べてみると、確かに世界各地への中国の進出は地域の経済発展の可能性が高まる一方で、さまざまな懸念やトラブルも起こりそうです。この構想をヨーロッパ側に拡大したのは、一つはアメリカを刺激したくなかったからです。また、一帯一路の沿線国がそれを受け入れたのは経済的に貧しく、中国からの投資やインフラ整備に対する期待が大きかったことも事実のようです。

しかし借りた金が返せなくなれば、そこには債務のワナがあります。これは単なる経済支援ではなくて、中国が安全保障上の権益のために行ったものともとれ、インド洋で中国軍のプレゼンスが高まる危機感が生まれます。中国は経済的な合理性よりも政治的な戦略を優先しているのではないか。このようなことが浮かび上がります。少なくとも昔のシルクロードに見られた、国や地域同士の交易だけではないようです。

新聞に載ってた、『シルクロード全史/ピーター・フランコパン著』の書評を見つけました。「シルクロード地域は、西洋の過去と密接に繋がっていた。しかも多くの時期に、この地域の動向こそが世界全体の動きを律していた。常にヨーロッパを中心に回っていたわけではなく、この地域に注目すれば、世界史を異なる視点から解釈できる」。これが本の主張であるとのことです。著者は、「この地域は西洋に住む私たちから再発見されるのを待っている世界」なのだといいます。

世界が更にグローバル化に進んでいく中で、これからこの道はどう変わっていくのか。今回この地域の歴史などを知ることで、シルクロードを再発見しました。
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