風音土香

21世紀初頭、地球の片隅の
ありをりはべり いまそかり

私感

2018-05-27 | スポーツ
なかなか静まらない日大アメフト部の騒動。
昔から日大アメフト部フェニックスをはじめ、
アメリカンフットボールそのもののファンとして、
また日大出身者として、
悲しく、恥ずかしく、複雑な心境だ。

で、多少大学スポーツやアメフトを知っている人間として
できるだけ不透明な情報や憶測を廃し、
テレビで見た、いくつかの記者会見でのコメントだけを参考に
しかも極力すべてできるだけ肯定的に聞いてみた私的感想を述べる。
(疑い始めると憶測も生まれてきて客観的じゃなくなるからね)


多少コンタクトスポーツを知っている人たちはわかると思うが、
アメフトに限らず、ラグビーでも、ボクシングでも
最初にモメンタム(試合の流れ)をつかめるかどうかが勝負を決める。
いきおい試合前はどこのチームもアドレナリンを最大限噴出させるために
指導者からも、メンバー同士でも大声で気勢をあげる。
曰く「相手をぶっ潰せ」「ぶっ壊せ」「叩きのめせ」・・・
もちろん本当にやる奴はいない。
ただ怖さをはねのけるために自分の交感神経をMAXにする。
おそらくこの試合の時もそうだったのだろう。
特に今回の場合は、監督からコーチに対し
当該選手のメンタルを鍛えるよう相当強い強い指示が出ていた。
コーチは当該選手を精神的に追い込むことにより
メンタル面の強さを鍛えようと思っていた。
コーチからの「相手選手がケガすれば」発言は、聞き様によって
「思い切ってぶつかって、仮にケガしても・・・」
と解釈することができなくもない。
それ以外の発言は上に書いたように、実は珍しい発言ではない。

一方選手の方だが、たぶん不器用なん選手だと思う。
事前の練習時に精神的に追い詰められ
激しい言葉を真に受け、周りが煮えなくなり、とにかく相手を倒す。
DEというポジションはQBを捕まえ倒すことが仕事だから
相手のブロック外してフリーになった後は一直線。
ちなみに、多少アメフトを知っている人なら感じたと思うけど
あのタックルは(あれでも)手加減している。
自責の念から瞬間的に手加減したのだろう。
でなければ身長180cm以上、体重100kg以上で
体脂肪率が1桁という筋肉の塊のアメフト選手の突進を
無防備な状態で後ろから受けてあの怪我で済むはずがない。
記者会見時の有馬さんの質問で反則プレーと知っていたと知り
余計にそれを確信した。

という見方をすると、コトも本質が見えてくる気がする。
それぞれの間のコミュニケーションが足りず、
信頼関係もなく、言葉の表現や解釈に齟齬があった。
想像や憶測を廃しても、少なくともそれだけは言えるし、
それならそれぞれの人たちの言葉も
(是非や同意するかどうかは別として)
まぁわからなくもない。

しかし、それでも全く理解できない言葉があった。
思わず耳を疑い、ついテレビに向かってツッコミ入れた言葉。
それは内田監督の言葉だった。
「ボールを見ていたのでそのプレーは見ていなかった」
「次から次へプレーが続き、替えるタイミングを逸した」
これは間違いなくウソだ。
アメフトでは監督もコーチもグランド全体を把握する必要がある。
ボールキャリアのみならず、どんな選手がどんなブロックし
ボルガないところでどんなファイクプレーがあるかを把握しなければ
作戦も立てられないし、試合中のアジャストもできない。
どちらかというとそっちの方が大事。
ボールしか見ていないのは、まぁ素人の見方だろう。
もし本当に言葉通りだったとしたら、
とんでもない素人に監督を任せていたコトになる。
例え、たまたま、偶然あのプレーを見逃したとしても
フラッグが出たのはなぜか、コーチ陣に確認するだろう。
なぜ、どんな反則があったのか、知らずにいるわけがない。
また「次から次へ・・・」についてはもっと開いた口がふさがらない。
アメフトは1プレーごとに選手の入れ替えがある。
仮に次のプレーで交代が間に合わなかったとしても
さらにその次のプレーで交代できるはずだ。
いつまでも交代できないまま出し続けざるを得ないなんてことは
100%ありえない。

私が見たすべての会見画像、言葉を
客観的に、できるだけ肯定的に見て見て
全く理解できないのはこの2点だけだ。
何を言わんとしたいかわかると思う。

ただ、今回の件で最大の問題と感じたことは
普段の実情を知らないまま、憶測や感情のままに
テレビのコメンテーターも、ネット住人達も
好き放題言いたいコトを言っているコト。
まったく見当違いのことを口角泡を飛ばして罵っている。
例えばテレビで「勝利至上主義がよくなかった」と語る識者もいるが
ラフプレーを続けば罰則だけ増えて勝てないってことは明白。
例えひとりがケガして交代しても、
100人からのメンバー同士で試合するアメフトでは
それだけで勝てるというものではない。
単なる1勝のためにラフプレーするチームはないと思った方がいい。
だから、実は選手とコーチの間で理解の齟齬があったと信じる。
問題なのは監督のあまりの傲慢なチーム運営と責任転嫁。
そして大学の理事でもあるその監督への大学当局の忖度だろう。
まるで「内田王国」を築き上げた裸の王様。
かつての彼の師匠である、日本のアメフト界のカリスマ
故篠竹さんとは雲泥の差だ。


ところで蛇足ながらもうひとつ。
少しだけ↑に書いたが、
今回はあまりにネットの炎上やマスコミの対応が目に余る。
しかもあまりにピント外れした意見の多いことか。
中には、ちゃんと冷静に考えれば分かりそうなことを
憶測と、想像(妄想)だけで発言する人もいる。
例えば、少し前のことだが
内田監督が関学大に謝罪に行った時の服装が話題になった。
曰く「ピンクのネクタイは謝罪に行くときの格好じゃない」など。
早稲田の臙脂、明治の紫と同様に日大のスクールカラーは桜色。
それを身につけるというのは、どこの大学もある意味紋付袴の感覚だろう。
仮に、叩いている方々がそういう文化に無知だったとしても、
サンダル履きにジーンズならいざ知らず、
最近この時期はノーネクタイが主流にもかかわらず
きちんとスーツにネクタイ締めている人の服装に
いちゃもんつけるっのもどうなんだろう。
関学の方々が「失礼だ」というならわからなくもないが、
ネット上で叩いている人たちに失礼を働いたわけじゃない。
「あんたらに何かしましたか?」って話。
何でもかんでも問題にするのではなく
何が悪かったのか、何が問題なのかをはっきりさせるべき。
芸能人の失態の時も「謝り方に誠意がない」とか、
全然関係ない人が言ってる。
なんだそりゃと思うことが多い。

そこが私がちょっと気になったこと。
ラフプレーは単なる反則という範疇超えてるし、
その後の指導者、大学側の対応もまったくなってない。
相手の大学名の言い間違いに至っては失礼千万。
でもね、いかに問題ある指導者だったとしても、
しゃべりかた方から顔つきから、
スクールカラーのネクタイまで揚げ足取りのオンパレードは必要か?
ネット上では想像豊かにめぐらせて、
事実かどうかわからないことまで決めつけで攻撃対象になっている。
今回に限らずだけど、ネットの炎上ってほぼいじめだよね。
あることないこと挙げ連ね、
重箱の隅つついたり、揚げ足とったり
完膚なきまで相手を叩きのめさなければ気が済まない集団ヒステリー状態。
何かのフラストレーションをぶつけているみたい。
ホロコーストってのはこんな風にして始まるのかな。
この件だけじゃなく、芸能人の不倫やら犯罪やらにも同じこと感じる。

「こうに違いない」ではなく
誰かの憶測や面白半分の言葉を受け売りして反射的に攻撃するのではなく
冷静に、何が問題で何は問題じゃないのか、
自らの頭で考えることこそ情報化社会の今必要なことだと思う。
政治も、社会も。
コメント
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