吉澤兄一のブログ

お江戸のど真ん中、平河町から、市井のトピックスを日記風につづりたいと思います。

いまはやりの検疫と疫学考

2009年05月10日 | Weblog
 このところ毎日のように”検疫”という言葉に触れる。新型インフルエンザの国内への侵入や広がりを防ぐには、何と言っても水際対策であり、検疫の体制や方法が”水も漏らさぬ”ように出来ているかいないかなのだ。2009年5月8日の帰国入国者の検疫で3人の新型インフルエンザ感染者が確認された。日本初の感染者を”水際”で検疫捕捉したことになる。

 カナダはオークビルから米国デトロイト経由で帰国した大阪の高校生3人が、成田機内検疫で感染の疑いが出、9日国立感染症研究所のウィルス遺伝子検査にて、新型インフルエンザの陽性反応がでたという。ノースウエスト航空25便乗客で彼らの近くにいた(濃厚接触者)49人が空港周辺施設(ホテル)に隔離ステイさせられたという。日本の検疫体制がしっかり出来ていることを示した初事例だ。

 このように完全確立しているような日本の検疫体制をもってしても「完全」はない。今回でさえ、接触の疑いのある同乗帰国者の何人かを”水際”スルーさせている。これらのヒトも含めて”必要と思われる”同乗者が、全国自治体や保健所を通じて向こう10日ほど健康観察がなされるというが、それでも検疫スルーするウィルス(ヒト)があることを否定できない。

 むかしは検疫というとギョウザなど輸入食品の検疫(厚生労働省)や動物植物の検疫(農林水産省)など空港・港湾の検疫がイメージされたが、ただいまはウィルス検疫や検疫ネットワークなどインターネットやパソコンへのウィルス侵入防御がイメージされるようだ。実は植物や動物などについて入ってくる病原体や害虫やウィルス以上に、渡航し帰国したり、入国したりする人間がカラダにつけて持ち込む病気や病原菌の方がよほどコワイのだ。

 この検疫は、ある意味で疫学的検査とも言える。実験科学や臨床科学のように二つの事象(原因結果)の因果関係を直接的に検証することではなく、何らかの事象の原因や発生条件を統計的に明らかにしたり、二つの事柄の蓋然的関係を明らかにする疫学や疫学的検証は、大変有効な方法なのだ。病原体の有無の診断や調査などは検疫と同じなのだが、これをいろいろな集団や特性の人々をカバーして調査し、病気、流行、公害や変容などについて(仮説)要素間の因果・蓋然関係を明らかにすることは大変効率効果のいい方法だと思う。

 国民の健康、地域の環境、病気や暮らし方などの問題の分析や解決処方を考える上で疫学がより体系化され、より積極的に使われるようになることを希望する。
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