馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

馬ウィルス性パピローマ

2015-06-13 | 皮膚病

馬の乳頭腫。というよりパピローマと呼んだ方がとおりがいいだろう。

馬ウィルス性パピローマ equine viral papillomatosis

これからの時季、セリに出す馬にパピローマが出ると気になるし、コンサイナーや育成場でつぎつぎにうつると困ってしまう。

こいつはひどい。

目の回りにも出る。

Equine Dermatology
Danny W. Scott,William H., Jr. Miller
Saunders

馬の皮膚病学の教科書にはなんて書いてあるか・・・・・

治療

 馬ウィルス性パピローマ症の病変は3ヶ月以内に自然に治癒する。

慢性に侵されている動物は免疫抑制状態にあることが疑われる。

外見上や健康上の理由で病変を除去するときには、外科的な切除や凍結手術が効果的である。

いくつかのより大きな病変を外科的に切除することで他の病変が小さくなるのを促進できることが逸話的に述べられてきた。

しかし、この仮説を調べるためにデザインされた馬での計画研究では他の病変が存在した期間は短縮されず、実際には延長したかもしれない。

 手術が現実的でないときには、多くの局所投与剤がそれぞれの病変に試されてきた。

このような薬剤にはポドフィリン(50%podophyllin; 20%podophyllinの95%エチルアルコール溶液 ;2%podophyllinの25%サリチル酸溶液)、トリクロル酢酸、ベンゾイン・チンキなどがある。

これらの薬剤は寛解が得られるまで1日1回適用される。

すべてのこれらの報告は純粋に逸話である。

最近の逸話にはイミキモッドimiquimod やblood root/ 塩化亜鉛含有製剤の局所塗布がある。

他の治療の逸話としては、病巣内あるいは静脈内へのmicobacteria あるいはPropipnibacterium acnes製剤の免疫刺激剤としての投与や、シスプラチンあるいはインターロイキン2の病巣内注入がある。

炎症反応を引き起こすどのような治療も恒久的な色素脱を引き起こす可能性があることを覚えておかなければならない。

 馬のウィルス性パピローマ症の治療において、自家腫瘍細胞ワクチンが「満足がいく」あるいは「価値あり」と報告されてきた。

これらのすべての報告は純粋に逸話である。

 皮膚病変のlaser治療への感心の増加に伴って、ウィルス性であると疑われる病変へのlaserの使用時の注意が喚起されている。

パピローマウィルス抗原はCO2laserで治療したウィルス性パピローマ内で蒸発することがしめされている。

 ウィルス性パピローマは伝染性なので、発症個体を隔離したり、免疫的に敏感な馬が感染厩舎へ入ることを制限することで病気の広がりを抑えられるかもしれない。

汚染馬房、餌や水桶、手入れ道具、そして手綱は清潔にし、アルカリ剤かポピドンイオジン剤で消毒するべきだ。

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laserも用意して使ったし、凍結もやったけれど、結局、アリス鉗子で引きちぎるのが一番てっとり早かった。

鎮静剤も投与し、眼窩下孔で神経ブロックもしたのでおとなしかった。

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追記

 私はパピローマで相談されると、はと麦を食べさせることを勧めている。

ヨクイニンという成分がウィルス性のパピローマを抑える効果がある・・・だろう、かもしれない、と考えられている。

が、本に書いてある通り、放っておいてもほとんどの馬が3ヶ月ほどで自然治癒するし、

上の写真の馬のようにはと麦やヨクイニンを与えても効果を感じられない馬もいるし、

どのくらい与えれば良いのかもわかっていない。

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では、寒気がする写真のあとは、爽やかな楽しい画像をどうぞ。

 


14 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2015-06-13 20:42:23
 どこでもそうだったとは思えませんが、10年くらい前、子どもたちのミズイボをとるのに、麻酔はなしだったそうです。痛ソ。
 お天気もよく、ほんとに爽やかで、楽しそう!
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Unknown (piebald)
2015-06-13 21:20:03
イチジクの葉や茎を切った時に出る、白い液体でイボが取れると聞きましたが・・・。

本当にきれいな川ですね。でも、ゴロゴロしたら痛そうです。
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>はとぽっけさん (hig)
2015-06-14 05:22:13
細い針がなかったのでしょうかね。今は外科医も歯医者さんも、痛くしないようにとても気を使ってくれます。でも、人が痛みを我慢できなくなっているのかも・・・
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>piebaldさん (hig)
2015-06-14 05:25:56
イチジクの汁ですか・・・私はイチジクが好きなのですが北海道では採れないようで、ほとんど売られていないし、食べる習慣がないようです。

ほんとうにきれいな川です。
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Unknown (はとぽっけ)
2015-06-14 08:39:39
 ハトムギは日ごろのお手入れには外用でも使用されるようですが、イボ取り効果は実感できないことが多いようです。
 「痛み」は原因の治療、繰り返す痛みには有効な予防、とつなげないと、痛い→痛みどめ の繰り返しで予防に痛みどめのんどく、毎日飲む、となってしまうのかもしれません。
 痛みそのものは、ストレスで良くない影響があらわれることもあるし、はやく治してあげたい症状なのだと思います。
 おんまさんの場合、暴れないように、という治療者んの護身の効果のもあるでしょうけど。痛くない治療はいいですね。
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>はとぽっけさん (hig)
2015-06-14 19:37:39
ウシもパピローマがあるのですが、はと麦はけっこう使われていて効果をあげていると、少なくとも信じられています。内服というか食べさせるのですが。

痛いことや苦しいこと辛いことはないほうが良いかというと、そうとも限らないのではと思ったりします。
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イボかと思ってました (chelsy)
2015-06-15 05:22:04
うちのクラブの27歳アパルーサが少なくとも2年前からこれにそっくりです。
白い馬は高齢になると皆こうなると思ってました。
クラブオーナーのご主人は獣医さんですし。
と言っても予防接種と避妊手術専門ですが。
それとなく尋ねてみます。
*最新記事の写真に写っているアーニーです。
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Unknown (まりおん)
2015-06-15 12:09:30
いぼとりにヨクイニン、っていいますね。美肌にもいいとか。

ワタシは関節リウマチと橋本病の患者ですが、とりわけリウマチにヨクイニンってのよく聞きます。水分代謝をよくして腫れと痛みをとる効果を期待してのことみたいですが、MTXで免疫抑制状態におくのとも関係あるのかなあと。そういえばMTX使いだしてからいぼ増えました^^
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>chelsyさん (hig)
2015-06-15 19:49:08
27歳になると免疫も落ちて、パピローマを自分で治せないのかもしれません。
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>まりおんさん (hig)
2015-06-15 19:51:02
ヨクイニンはリュウマチにも効くと考えられているのですね。
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