1時50分に起こされた。
繁殖雌馬がひどい疝痛で、まっすぐセンターに向いたい、とのこと。
「いいよ」と応えるが、近くの牧場なので、準備をする間もなく到着する。
うちのように急患対応の態勢ができていても、
暖房をつけて、血液検査装置をONして(室温が低いと暖まるまで使えない)、輸液を温める高温槽をONして、鎮痛剤・鎮静剤・採血道具を用意して、
麻酔の準備をして、手術台にマットを乗せて、バリカン・消毒器具・掃除機を用意するのに、1-20分かかる。
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やはり痛みがひどく、そのまま開腹手術する。
小腸のほとんどがどこかに入り込んでいた。
おそらく網嚢孔だ。
かなり抜けたが、そのあと抜けてこなくなった。
右手で引いても抜けてこない。
左手で引こうとすると角度に無理があり、腕が攣りそうになる。
この馬の網嚢孔は大きく、拳を入れて中の小腸を掴んで引き抜こうとするが出てこない。
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A 引いても抜けなくなったら、嵌頓している小腸の内容を搾り出してみる。
B それでもだめなら、正常な部分を押し込むことで締め付けを弱くして、内容を搾り出すことをやってみる。
C それでもだめなら、はまり込んでいる腸管を切開して内容を捨てて減圧することでA・Bをやってみる。
(私が今回やったのは、切開はせず、補液管を刺して嵌入部より上位を減圧すること。結局それで抜けた。)
D それでもダメなら、上位で腸管を切断して、引き抜けないかやってみる。
E それで内容を送り出して腸管がぬけたら・・・・・
F 傷んだ腸管の切除と吻合を行う。
David Freeman先生による資料。今は、Equine Acute Abdome で見ることができる。
![]() |
Equine Acute Abdomen |
クリエーター情報なし | |
Teton NewMedia |
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苦労の末になんとか引き抜けた。
小腸の生存性は大丈夫だと判断して、あとは閉腹した。
4時27分に麻酔終了。
しかし、馬はへばっているのか6時すぎまで立ち上がれなかった。
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実際には引張る強さや指の使い方は経験して覚えるしかないのかもしれませんが。
サスマタみたいなもので嵌頓奥に腸管を引っ張るという手もありそうですが、とても奥まっていてそんなことはできないのでしょう。
下位が嵌頓奥で捩れるとかして通貨障害を起こしているのであれば、Bとは逆に下位を押し込んで上位にスペースを作ってあげれば内容を逃がすことができそうですが。
嵌頓手前の上位消化管内容をあらかじめ流入しないように腸鉗子で押さえておくというのも仕事の効率を上げそうです。
まあ、いずれにせよこういうところで名人とかゴッドハンドいわれるかたが居られるのでしょうね笑
その物音で真夜中に気づいたそうです。
この冬、相棒はほとんど毎晩、風除室へ入れてもらっています。そのせいで冬毛モフモフ度が足りないようです。
血検は、PCV、乳酸値、白血球数を参考にします。
引いてもダメなら押してみな。
押してもダメなら揉んでみな。
揉んでもダメなら抜いてみな。
抜いてもダメなら切ってみな。
というところでしょうか・・・・
オラ君、良い所に寝てるんですね。玄関先の防寒ルームですか?
hig先生のように機転のきいたシャープな対応はやはり場数と日頃のおべんきょのたまものでしょか。お近くのおまさんはこういうとき助かる確率高めでいいですね。
血液検査の項目はどういうものなのでしょ。