2021/1/15から血清アミロイドA(SAA)の測定試薬を変えた。
と言っても、メーカーは同じ栄研化学で、それまでのヒト用試薬から動物用に開発されたVETーSAAにした。
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・馬の測定値はどういうわけか8割くらいの値になる。
・今までも500あまりで頭打ちになっていたのだが、希釈測定することで数千とか万を超える値まで測定するようにした。
・動物用なので牛、イヌ、ネコのSAAも測れるようになった。
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SAAは炎症マーカーとして利用されている。
馬では、たいへん依頼が多い人気項目になっている。
子馬をはじめ、感染症や炎症疾患が多いからだ。
フィブリノーゲンやαグロブリンより上昇が早く、数値も激しく上昇する。
正常値はほとんど0か一桁。
そのため急性炎症を鋭敏にとらえることができる。
減少も速やかで、治療が効果を上げるとフィブリノーゲンやαグロブリンや白血球より早くに減少する。
そのため、細菌感染を抗生物質が抑えているかどうかの判断にも使える。
ただ、あまり速やかに下がるので、SAAが下がったからと治療を止めると感染が再燃することがある。
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ヒトのSAAはあまり広くは利用されていないのだそうだ。
臨床検査センターへの依頼も多くないとのこと。
ヒトではCRPが炎症マーカーとして普及していて、保険点数の給付の点でもSAAは優遇されていないことも理由らしい。
もっともこれは馬、牛でも同じ。
家畜共済の給付点数の対象にはならないので、保険点数外の負担が発生する。
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サラブレッド生産地の獣医さんはSAAの特性をよく理解している。
馬の感染症・炎症性疾患でSAAを診断や経過判断に使ってきたからだ。
他の地域の獣医さんに馬の診療相談を受け、「SAAは測りましたか?」と訊くことがある。
「何それ?」という回答だと、「臨床検査センターでヒト用として測ってもらってもいいですから」と説明する。
ヒト用は、ヒト・アミロイドAに対する免疫的な方法で測っていたので、馬SAAは交差反応があり測定できていた。
しかし、牛SAAは測定できなかった。
導入初期の頃、牛は測れない、とお知らせしているのに、牛のSAAも依頼されて困った。
今回、牛のSAAも測定できるようになった。
牛も感染症や炎症性疾患が多い。
診断や経過の評価や、治療の効果判定にも使ってみてもらえればと思う。
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数値が激しく上昇するのは、SAAや逸脱酵素(おなじみASTやCPKなど)の特徴で、診断上は都合がよい。
微妙な上昇のしかたに首を傾げることが少ない。
しかし、SAAはあまりに激しく上昇するし、混濁を測定しているので測定範囲が狭い。
希釈測定する方はたいへん。
それでも数千、数万という値まで追ってみたい。
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12月から正月過ぎまで記録的に寒かった。
そのあとは、寒さがゆるみ、しかし雪が繰り返し降った。
除雪しておかないと、凍ってしまって融けなくなる。
馬が歩けなくなると、診療できない。
3月のような暖かさになり、雪が融けた日もあった。
水たまりもなんとかしておかないと凍ればスケートリンクのようになる。
大寒も過ぎた。
日も少しずつ長くなっている。
急性期の検査や治療が迅速に、的確に行われるようになっていますが、気付いて診療してもらわないことには。
人も馬も足元が危ない季節ですね。
SAAはとても役に立つ急性炎症マーカーです。今回の試薬変更で、馬のSAAも今まで以上に有効活用してもらいたいですし、牛にも使ってもらいたいと思います。
厳寒の中で、骨盤骨折でダメになった馬を少なくとも2頭みました。2頭とも出血で死んでしまった馬でした。
冬は安定して寒いのが馬には好いようなんですが・・・
千葉ニアンがどう掲載されているかも楽しみです。
理科年表、大好物なんです。
明朝の路面はツルツルになっていそうです。
また寒さが戻るようです。
いつも測定依頼している動物用検査会社は昨年から猫専用と馬専用に分けられました。
牛は馬ほどあがらないようです。今回の試薬では、なのかもしれません。
ネコも馬ほどあがらないのですね。あるいは馬の上昇の仕方が特異的なのかも。
「高コレステロール血症における血清アミロイドAと頚動脈硬化症」や関連項目の復習。楽しぃ~。
https://equimanagement.com/products/zoetis-stablelab-detects-and-monitors-equine-inflammation
まだ消耗品が高いですが・・・
でもその場で測れるのは助かります
都会(馬過疎地;笑)の臨床検査センターでもSAAは測ってくれるはずです。馬は何もVetSAAで測らなくても、ヒトSAAで良いのです。