ヒト医療でパニック値というのがあるらしい。
私は知らなかった。
生命に関わる状態を示す値、ということで、
検査室から急いで担当医師に連絡する、連絡した方がいいかも、
ということで設定されているのだそうだ。
しかし、急いで連絡したら、
「わかってる!」と医師に怒鳴られる、なんてこともあるようで、実践には難しい点もあるようだ。
検査技師やナース向けには、
パニック値が出たら、まず前回値を確認しましょう、などと書かれている。
そもそも医師は怒鳴ったりしないで、「はい、ありがとう。注視してモニター中です」と答えればいいだけの話だと思う;笑
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私も、検査していて担当獣医師に直接電話することがある。
それは、まさにパニック値による報告だ。
例えば、馬「分娩後発熱つづく」と書かれている検査カルテで、
WBC 4,000/μl, PCV 47%
だったら、
子宮穿孔なんじゃない?
超音波当てて診た?
腹水ないかい?
と連絡してきた。(必ずじゃない)
子宮穿孔の開腹手術による裂孔閉鎖と腹腔洗浄はそうやって普及してきた。
そして、昼間に来院をうながさないと、担当獣医師が午後もう一度診察して、夕方に急患として来院することになりがちだから;笑
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一方、同じ分娩後の馬でも、
WBC 2,300 /μl, PCV 57%
だったら、
あら~消化管破裂だろうな、
と連絡しない。
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溶血性黄疸の血液検査で、PCVが20%未満だったら連絡してきた。
今は、連絡しなくてもユニバーサルドナーを探しているのだろうけど。
かつては、洗浄赤血球液を作っていたこともあったし、
ユニバーサルドナーを紹介してあげなければいけない時代もあった。
即時的には、PCV13%が緊急輸血の必要の規準だと思っている。
ビリルビンは20mg/dl近くなると危ない。
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「子牛下痢」で、
K 8.0 mEq/l , Crn 2.5 mg/dl, BUN 35 mg/dl
だったら、
生きてるかな~、しっかり輸液した方が良いんだけどな~
と思いながら、連絡しない。
担当獣医師は、高カリウム血症や腎不全をすでに警戒して測定を依頼しているからだ。
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馬「水下痢」で、
PCV 65%
だったら、
「輸液セット貸そうか?」
と電話するかも。
うちの持続点滴 How to が役に立つかも知れない。
ただ、Clostridium difficile 腸炎が生産地でも懸念されるようになってきているので、
腸炎の馬は入院させたくない。
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うちは馬の二次診療施設だが、検査室も併設されているので、たいへん助かっている。
疝痛馬が来院したらまず血液検査して、PCV、WBC、乳酸値を確認する。
子馬の膀胱破裂では、麻酔前に電解質を確認したい。
母馬の膀胱破裂では、血清と腹水のクレアチニン値の差が確定診断として使える。
自分たちで急いで検査するので、パニック値による報告、という感じではないが、
それぞれに critical value であるわけだ。
欧米では、「パニック値」ではなく”critical value” と呼ぶようになってきているようだ。
別に、パニックを引き起こしたいわけではないからね。
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結腸捻転馬の周りに、人がいっぱい。
うちではこんなことは珍しい。
2人で結腸捻転をこなすこともやって来たのに比べると、
やっぱり楽かな;笑
急患場合、検査データはどんどん変わると思うのですが、検査のオーダーや、結果をその後の治療にどうつなげるかのガイドラインのようなものがあるといいのかな?施設ごとに標準化してみるとか。先生方の経験を活かすためにも。
獣医さんまた増えるのですか?研修中の先生がたですか?華やかさもマシマシですね。
2016年にクロストリジウムからクロス. トリジオイデスに名称が変更だそうですが、知りませんでした。
この春は臨時雇用の獣医さんがいます。この写真の人々は学生たちです。
くろすとりじおいです、ですか。なんで変えなきゃいけないのか、どうしてそう変わるのか、このDNA分析、タンパク分析、質量分析の時代にまだ変更があるんですね。