馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

Vet-SAA

2021-01-22 | labo work

2021/1/15から血清アミロイドA(SAA)の測定試薬を変えた。

と言っても、メーカーは同じ栄研化学で、それまでのヒト用試薬から動物用に開発されたVETーSAAにした。

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・馬の測定値はどういうわけか8割くらいの値になる。

・今までも500あまりで頭打ちになっていたのだが、希釈測定することで数千とか万を超える値まで測定するようにした。

・動物用なので牛、イヌ、ネコのSAAも測れるようになった。

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SAAは炎症マーカーとして利用されている。

では、たいへん依頼が多い人気項目になっている。

子馬をはじめ、感染症や炎症疾患が多いからだ。

フィブリノーゲンやαグロブリンより上昇が早く、数値も激しく上昇する。

正常値はほとんど0か一桁。

そのため急性炎症を鋭敏にとらえることができる。

減少も速やかで、治療が効果を上げるとフィブリノーゲンやαグロブリンや白血球より早くに減少する。

そのため、細菌感染を抗生物質が抑えているかどうかの判断にも使える。

ただ、あまり速やかに下がるので、SAAが下がったからと治療を止めると感染が再燃することがある。

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ヒトのSAAはあまり広くは利用されていないのだそうだ。

臨床検査センターへの依頼も多くないとのこと。

ヒトではCRPが炎症マーカーとして普及していて、保険点数の給付の点でもSAAは優遇されていないことも理由らしい。

もっともこれは馬、牛でも同じ。

家畜共済の給付点数の対象にはならないので、保険点数外の負担が発生する。

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サラブレッド生産地の獣医さんはSAAの特性をよく理解している。

馬の感染症・炎症性疾患でSAAを診断や経過判断に使ってきたからだ。

他の地域の獣医さんに馬の診療相談を受け、「SAAは測りましたか?」と訊くことがある。

「何それ?」という回答だと、「臨床検査センターでヒト用として測ってもらってもいいですから」と説明する。

ヒト用は、ヒト・アミロイドAに対する免疫的な方法で測っていたので、馬SAAは交差反応があり測定できていた。

しかし、牛SAAは測定できなかった。

導入初期の頃、牛は測れない、とお知らせしているのに、牛のSAAも依頼されて困った。

今回、牛のSAAも測定できるようになった。

牛も感染症や炎症性疾患が多い。

診断や経過の評価や、治療の効果判定にも使ってみてもらえればと思う。

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数値が激しく上昇するのは、SAAや逸脱酵素(おなじみASTやCPKなど)の特徴で、診断上は都合がよい。

微妙な上昇のしかたに首を傾げることが少ない。

しかし、SAAはあまりに激しく上昇するし、混濁を測定しているので測定範囲が狭い。

希釈測定する方はたいへん。

それでも数千、数万という値まで追ってみたい。

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12月から正月過ぎまで記録的に寒かった。

そのあとは、寒さがゆるみ、しかし雪が繰り返し降った。

除雪しておかないと、凍ってしまって融けなくなる。

馬が歩けなくなると、診療できない。

3月のような暖かさになり、雪が融けた日もあった。

水たまりもなんとかしておかないと凍ればスケートリンクのようになる。

大寒も過ぎた。

日も少しずつ長くなっている。

 

 

    



17 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
>ゆめさん (hig)
2021-02-05 17:56:44
コマーシャルラボも含めてかなりのシェアを栄研化学が占めているのだろうと思います。ヒト用の話です。
今回もVetSAAは栄研製です。馬、牛、イヌ、ネコが測れるようです。
ELISAで測定する方法もあるようです。その場合が動物種特異的な測定なのかもしれません。
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Unknown (ゆめ)
2021-02-05 16:35:39
すみません、私の話はあくまでもコマーシャルラボの話です。
全く反応しないわけではないので、それぞれの試薬でそれ相応の値は出ると思いますので、その変化を見るのは有用と思います。
が、ラボ的にはやはりそれぞれの検体の感度、特異度をあげていきたいという事なんだろうと思います。
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Unknown (ゆめ)
2021-02-05 16:27:40
犬と牛のSAAは人のと交差性があまりよくないという事で、ただ、犬はSAAも臨床的には使えるのだけどCRPが既にあるから今さら人と交差性を持たない試薬を作っても営業的にしょうがないという事みたいです。

猫用、馬用といっているのは動物種が違うから変えていると言うより、高い数値まで測れるとか微妙な変化を数値か出来ると言うだけの違いみたいです。
馬でも微妙な変化を知りたいときはそれ用の試薬があると生化の先生から聞きました。
試薬もどんどん感度と特異性が上がっていって、動物種を越えると使いづらくなっていきます(>_<)
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>ゆめさん (hig)
2021-02-01 04:43:53
ネコも、高くても200-300でも使えるわけですよね。馬が鋭敏に、はでに動きすぎるので、期待しすぎますが、牛も何かを示しているのでしょうから、使えるはずです。

免疫的な方法で測られていて、ヒトSAAとその動物のSAAと抗原としてどれだけ交差があるか、ということなのだと思います。
そんなに何社も試薬を作っていないと思うのですが・・・・
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Unknown (ゆめ)
2021-01-31 08:38:42
hig先生
猫では高いもので200-300程度です。個人的感想では馬の1/5程度です。某大の教授は馬の数値を聞いて驚かれてました。馬は相対的に肝臓も体に対して小さそうですが。
動物種差なんでしょうねぇ。
心臓バイオマーカーもたまに、ヒトや犬猫だと死んじゃうねって値が出ます、が、馬はその後も生きています。(使役には明らかに不向きかと思います)心臓が大きいからかなぁと言う話もしていたので、そうなのかなぁ…と思ってました笑。

ヒト、猫、馬は同じ系列のSAAの試薬でいいそうですが、牛と犬は系列の異なる試薬が必要だそうです。
最近、某社が猫と馬を分けたのは、多くが200以下の猫のために鋭敏な試薬に変えたからで、そうすると馬は皆300以上か何度も希釈することになるので信頼性が失われるためやりたくない!という事で馬は従来の試薬になったと聞いています。
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>風来坊さん (hig)
2021-01-28 19:02:43
馬へき地は困ったものですね;笑

モノリスの対応は許容範囲でしょう。
SAAが高いか、そうでないかで、まったく診断と治療がかわることがありますよね。
抗生物質を投与するか、別な部位などのX線検査を進めるか・・・・
馬のそばですぐに結果が欲しい事情はよく理解できます。
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Unknown (風来坊)
2021-01-28 10:32:25
hig先生

富士フィルムモノリスが午前中依頼でその日の夕方まで
午後からの依頼で次の日の夕方まで
に、検査結果が出ます

ちなみに人でなくウマSAAで、猫とはやはり検査キットが違うようになりました

東京だと何故か遅れて3日後になります

中国地方はさらに遅れて4〜5日後だそうです・・・

そんな本州事情で、何人かの馬獣医?で、調べて買ってみました

明らかにモノリスの方が安いです♪
もう少し早く結果が出るようになるととても嬉しいのですが・・・
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>風来坊さん (hig)
2021-01-28 05:19:08
馬インフルエンザに、というこの例はどうなんでしょうね。エスプラインなどの抗原検査の方が確実でしょう。馬のそばでできますし。

都会(馬過疎地;笑)の臨床検査センターでもSAAは測ってくれるはずです。馬は何もVetSAAで測らなくても、ヒトSAAで良いのです。
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>Unknownさん (hig)
2021-01-28 05:15:56
急性炎症マーカーとして使うだけでなく、アミロイドとは何か?まで考え出すと、眠れなくなりそうです;笑
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Unknown (風来坊)
2021-01-27 23:34:11
本州の片隅でも、その場で測れるようになりました♪

https://equimanagement.com/products/zoetis-stablelab-detects-and-monitors-equine-inflammation

まだ消耗品が高いですが・・・

でもその場で測れるのは助かります
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Unknown (Unknown)
2021-01-27 19:26:44
血中ではHDLと血清アミロイドAは結合しているということで、
「高コレステロール血症における血清アミロイドAと頚動脈硬化症」や関連項目の復習。楽しぃ~。
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>ゆめさん (hig)
2021-01-25 04:42:46
総量ではなく濃度を測っているので、体が大きいから値が高くなるかどうか・・・

牛は馬ほどあがらないようです。今回の試薬では、なのかもしれません。

ネコも馬ほどあがらないのですね。あるいは馬の上昇の仕方が特異的なのかも。
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Unknown (ゆめ)
2021-01-24 13:49:10
猫と比べて馬のSAAが桁違いなのは、体の大きさの違いかも知れないと東京ど真ん中の国立大学の内科の先生が仰ってましたが、牛も馬と同じ位の値まで上がるのでしょうか?

いつも測定依頼している動物用検査会社は昨年から猫専用と馬専用に分けられました。
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>はとぽっけさん (hig)
2021-01-23 03:56:18
なるほど博識はそのあたりから来ているわけですね。

また寒さが戻るようです。
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Unknown (はとぽっけ)
2021-01-22 20:16:04
 理科年表には人の血液データは出ています。種差を扱った項目としては、酸素消費量、赤血球、神経伝達速度、血圧など。体重700kgの馬の呼吸や熱量というのもありました。以前のものには。
 千葉ニアンがどう掲載されているかも楽しみです。
 理科年表、大好物なんです。

 明朝の路面はツルツルになっていそうです。
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>はとぽっけさん (hig)
2021-01-22 15:47:59
理科年表に、動物種ごとの正常値が出ているのですか?
SAAはとても役に立つ急性炎症マーカーです。今回の試薬変更で、馬のSAAも今まで以上に有効活用してもらいたいですし、牛にも使ってもらいたいと思います。

厳寒の中で、骨盤骨折でダメになった馬を少なくとも2頭みました。2頭とも出血で死んでしまった馬でした。
冬は安定して寒いのが馬には好いようなんですが・・・
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Unknown (はとぽっけ)
2021-01-22 07:16:39
 理科年表を買いました。検査データを種差で比較するために使っていた時期もありました。
 急性期の検査や治療が迅速に、的確に行われるようになっていますが、気付いて診療してもらわないことには。

 人も馬も足元が危ない季節ですね。
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