中足骨(左)、 中手骨(右)の骨折で応急処置としてキャストを巻いて来院するのだが、ほとんどが、このように蹄を出したキャストを巻いて来る。
これでは、馬が蹄に体重をかければ、体重はもろに骨折部にかかってしまう。
それに球節は体重をかけると沈みこむので、種子骨の後にキャスト擦れができやすい。
キャストは固くて、締める作用はないので、腫れるのを抑える力もない。肢が圧迫されるほどきつく巻けばたちまち傷ができるだろう。
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骨折した肢にハーフリムキャスト(腕節あるいは飛節以下のキャスト)を応急処置として巻くなら、
・中手骨・中足骨と指骨・趾骨が直線状になるように巻いて、球節が沈み込まないようにする。
・蹄先まで巻いて、キャストで受けた体重を骨折部以外で支えられるようにする。(左下)
あるいは現役競走馬や育成馬を診療するなら Kimzy splint を用意しておいて応急処置に使うといいかもしれない(右)。
Kimzy splint も考え方は同じ。
蹄を覆う金属で受けさせた荷重を、つながっている金属のシャフトで中手骨・中足骨の近位につたえようとするものだ。
球節は進展して沈下することがないよう固定される。
発症した日や、翌日に手術できるならキャストを巻くより簡便で安上がりだろう。
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しかし対側肢の蹄葉炎がすでにあったりして、どうしても自然に肢をついた位置でキャストを巻きたいこともあるかもしれない。
その方法について昨年のAAEPで発表されているので、そのうち紹介しよう。
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外側関節面からの縦骨折の骨折線は、最悪でも近位外側へ抜けていくが、内側の縦骨折は螺旋状に近位へ伸びていき、斜骨折するか、もっと近位で横骨折する。
発症後できるだけ早く、骨折線が伸びていかないようにスクリューで止める必要がある。
(右写真の遠位から2番目のスクリューは4mm短いスクリューに、3番目のスクリューは2mm長いスクリューに差し替えた)
内側からの縦骨折は、掌(足底)側の骨折線が外へ向けて伸びていき、背側は近位へ真っ直ぐ伸びるか、あるいは内側へ伸びていくと思っている。
だからスクリューは近位側ほど掌(足底)側から少し背側へ向けて入れる。
内側からの縦骨折の骨折線がどのように伸びていくか理解しにくい?
本当にそうか信用できない?
どうして斜骨折や横骨折につながるかわからない?
そのうち骨標本をお見せします。
Hig先生述べておられる通りだと思うのですが、骨折部を絞めて固定という発想ですと時間経過とともに骨折部の炎症腫脹がその圧迫を増長し肢端の循環障害&浮腫という悪循環に陥る症例は少なからず存在するのではないでしょうか。
前腕部にまで及ぶ広範な接触面積による面重で骨折部位への応力を遮断するという観点からキャストを施せば下巻きの程度など理解しやすそうですがいかがでしょうか。
縦骨折の亀裂だけでも、骨折線が開いていても、同じようなキャストをして運ばれてくることがほとんどです。圧迫すらできない。という意味で書きました。たぶんバンデージででも締めた方が、保護するという点ではましです。