日曜日、家に戻ってから牛の帝王切開の依頼。
黒毛で、尾位で、過大仔なので、とのこと。
尾位だと頭位よりは早く出さないと子牛が死んでしまう。
過大仔だということはひっぱってみたのだろう。
第二当番も呼んで準備をして待つ。
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2産目で、午後3時過ぎに分娩が始まった。
かなり引っ張ったが出なかった。
後肢は押し込んで来院した、とのこと。
しかし、後肢は産道から出てきた。
もう帝王切開した方が良い。
左腹部を毛刈りして、消毒して、局所麻酔する。
左腰角から頭側斜め30度下へ切るのが私のやり方。
もう分娩が始まって時間が経っているし、牽引しているので子宮はかなり収縮している。
あまり下まで術創を伸ばさない方が良い。
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皮膚切開して、外腹斜筋は斜めに筋繊維を分け、内腹斜筋は直切開した。
内腹斜筋も筋繊維を分けるでも良かったかも。
子宮弛緩剤;塩酸リトドリンを静脈投与してもらう。
術創から両腕を入れて、子宮の上から肢をつかんで引っ張ってきて、助手に切開してもらう。
ここを手早くやって、腕が萎えないうちに終わらせないと帝王切開はたいへんになる。
前肢だろうと思ったら後肢だった。
産道から後肢が突き出していたが、塩酸リトドリン投与で子宮が弛緩し、子宮内へ戻ったのだろう。
しかし、飛節が伸びているので、頭位の帝王切開と勝手がちがった。
両後肢に産科チェーンをかけて引っ張り出してもらう。
子牛は生きていた。
助手に子宮を持っておいてもらって子宮を閉じた。
先の方から縫ったのだが、子宮が収縮気味で奥が縫いづらくなった。
ウトレヒト縫合も逆手になるのでやりにくい。
先の方から閉じようとしたのは、その方が後産を子宮に入れやすく、羊水を腹腔へこぼさずに済むかと考えたから。
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腹壁は連続縫合で閉じた。
皮下織も連続縫合した。
皮膚は非吸収糸と三稜針でかがり縫合。
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手術そのものは3-40分かな。
大人しい牛で助かった。
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夕方、外に出て、ぼんやり眺めて過ごす。
呼吸が速く、身動きもしづらいときもある。
それでも行儀よく離れたところへウンコ・シッコしに行くがへたり込んでしまう。
>前肢だろうと思ったら後肢だった。
>子牛は生きていた。
また助けちゃいましたね。
ウトレヒト縫合をググったら、オラ君の4歳のお誕生日も拾ったよ。
今夜も穏やかな夜になりますように。おやすみなさい、また明日ね。
ウトレヒト縫合で相棒が出てきますか;笑
ほかの獣医外科用語や病名でも相棒の写真が出てきたりするようです。
文章も、読みやすく引き込まれてしまいます。
難しい専門的なお話の中に、オラ君との日常や写真がそっと挟み込まれていて、素敵なブログだと思います。
この度はオラ君の身に、とても悲しい事が起きてしまい、思わずコメントさせて頂きました。
私も(人間の)医療に関わるものとして、また犬を飼っている身として、先生とオラくんに、自分を重ねてしまう事があります。これからも、見守らせて下さい。
お二人とも十分ご自愛ください。
相棒はこの10年ブログの人気者でした。私の生活のひとつの中心でもありました。
最期まで悔いのないようにすごしたいと思います。