馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

子馬のR.equi感染症のワクチン PNAGワクチン?

2024-06-10 | 学問

期待されている?期待できるかもしれない?ロド・ワクチンについての情報。

Serum Antibody Activity against Poly- N- Acetyl Glucosamine (PNAG), but Not PNAG Vaccination Status, Is Associated with Protecting Newborn Foals against Intrabronchial Infection with Rhodococcus equi

PNAGワクチネーションによらない血清中抗PNAG抗体が、R.equi気管内感染試験から新生子馬を守ることに関連していた

有名なCohen 先生の研究。

Microbiol spectr. 2021 Sep 3; 9(1): e0063821

Rhodococcus equi is a prevalent cause of pneumonia in foals worldwide. Our laboratory has demonstrated that vaccination against the surface polysaccharide β-1→6-poly-N-acetylglucosamine (PNAG) protects foals against intrabronchial infection with R. equi when challenged at age 28 days. However, it is important that the efficacy of this vaccine be evaluated in foals when they are infected at an earlier age, because foals are naturally exposed to virulent R. equi in their environment from birth and because susceptibility is inversely related to age in foals. Using a randomized, blind experimental design, we evaluated whether maternal vaccination against PNAG protected foals against intrabronchial infection with R. equi 6 days after birth. Vaccination of mares per se did not significantly reduce the incidence of pneumonia in foals; however, activities of antibody against PNAG or for deposition of complement component 1q onto PNAG was significantly (P < 0.05) higher among foals that did not develop pneumonia than among foals that developed pneumonia. Results differed between years, with evidence of protection during 2018 but not 2020. In the absence of a licensed vaccine, further evaluation of the PNAG vaccine is warranted, including efforts to optimize the formulation and dose of this vaccine. IMPORTANCE Pneumonia caused by R. equi is an important cause of disease and death in foals worldwide for which a licensed vaccine is lacking. Foals are exposed to R. equi in their environment from birth, and they appear to be infected soon after parturition at an age when innate and adaptive immune responses are diminished. Results of this study indicate that higher activity of antibodies recognizing PNAG was associated with protection against R. equi pneumonia, indicating the need for further optimization of maternal vaccination against PNAG to protect foals against R. equi pneumonia.

Rhodococcus equiは、世界中の子馬の肺炎の一般的な原因である。われわれの研究室は、表面多糖類β-1→6-ポリ-N-アセチルグルコサミン(PNAG)に対するワクチン接種が、28日齢に行ったR.equiによる気管支内感染から子馬を防御することを示した。しかし、子馬は出生時から環境中のR.equi強毒株に自然に曝露されており、感受性は子馬の年齢に反比例するため、このワクチンの有効性は、子馬が感染するより早い日齢で評価することが重要である。無作為化盲検実験デザインを用いて、PNAGに対する母親へのワクチン接種が、生後6日目のR. equiの気管支内感染から子馬を守るかどうかを評価した。牝馬へのワクチン接種自体は、子馬の肺炎の発生率を有意に減少させなかった。しかし、PNAGに対する抗体またはPNAGへの補体成分1qの沈着に対する抗体の活性は、肺炎を発症した子馬よりも肺炎を発症しなかった子馬の方が有意に高かった(P < 0.05)。結果は年によって異なり、2018年は保護の証拠があったが、2020年は認められなかった。認可されたワクチンがない場状況では、このワクチンの投与方法と投与量を最適化するための努力を含め、PNAGワクチンのさらなる評価が必要である。重要性 R. equiによって引き起こされる肺炎は、認可されたワクチンが不足している世界中の子馬の病気と死亡の重要な原因である。子馬は出生後、環境中のR. equiに曝露され、分娩後すぐに感染し、その日齢では自然免疫応答と獲得免疫応答が減少している。本研究の結果、PNAGを認識する抗体の活性が高いことがR. equi肺炎に対する防御と関連していることが示され、R. equi肺炎から子馬を守るためには、PNAGに対する母親のワクチン接種をさらに最適化する必要があることが示唆された

              ー

う~ん、ちょっと眉唾;笑

子馬はとても早い日齢でR.equi強毒株に暴露され感染が成立してしまう。

それより早くワクチンで免疫を与えようにも、子馬の免疫能は低い、たぶん、かなり。

母馬にワクチン接種して初乳を介して子馬に免疫を与える方法はある(ロタウィルスでは行われている)が、初乳で移行する成分では、子馬をR.equiから守るのに十分ではない、

あるいは、ほとんど期待できるような成果はでそうにない。

            ー

そもそも、強毒株と言えども新生子馬以外はまず病気を起こさないのに、新生子馬だけはどうして感染してしまうのか?

もう少し、新しい文献を探しながら考えてみたい。

          ////////////////

腸管手術後の馬に持続点滴の追加を準備する。

ゼンヤクの補液ボトルの首をカットしているのはパイプカッターなのだそうだ。

けっこう力が要る。

そもそも、ヒト用の輸液剤のようなソフトパックの方が、

開けやすい、

ゴミの容積が少ない、

と思うのだけど。

置いて、立つ必要があるの??

         ー

大動物の獣医さんは、家畜共済の保険給付の関係で人体薬をほとんど使わない人も多い。

補液剤は、大動物用よりヒト用の方がずっと安い。

ご存じか?

 

 



4 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2024-06-10 07:46:01
 バイオフィルムに対するもの?十分ではなくても効果が認められたのですね。
 これだともう、強毒株も、飼育環境にも、ひっくるめてやっつける方向でお願いしたい。くらいですよね。
 ターゲットを何にするかで、投与経路は決めやすいかとおもうのですが、副作用やできる限りの長期的な観察結果など、十分なデータを検討して世に出してほしいです。

 ワイルドですね。フィルターを通して投与するのですか?使いやすさも考慮してほしいですよね。
 需要が人より少ないからお高いのかな?
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>はとぽっけさん (hig)
2024-06-11 04:31:21
期待したいところですが、私は期待薄だと考えています。何にでも効くと言われるものは、何にも効かない、よくある話です。

動物用医薬品は、かつてはヒト用医薬品より安い物が多かったと思います。しかし、今は逆転している物がかなりあります。それでも動物には動物用医薬品を使わなければ共済保険給付されません。なぜ?動物用医薬品業者を守るため?農水の管轄だから?
動物用医薬品業者や動物用にしか市販されていない薬や器具機材は入手できなくなると困るのですが、同じ中身なのに高い物を使わないといけないのは困ったことです。

局所麻酔薬動物用塩酸プロカインは、ヒト用リドカインほどは効かないのに、動物用塩酸プロカインの方が高いのです。
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Unknown (zebra)
2024-06-18 05:51:19
牛が特殊なのかも知れませんが、馬は黄色ブドウ球菌や緑膿菌によく集られますよね。
フィルム形成に対する弱点があるのかも知れません。
PNAGワクチンが馬の皮膚病減らしたり、牛の乾乳挿入に使われて抗生物質の使用頻度減らせたりしないかな、と思います。
ロドに関しては子馬の体質を反映しているのかも知れませんね。

家畜共済アテにするよりは人体薬で点滴したほうが経済的メリット大きいかも知れませんね。
指示獣医療になれば尚更かと。
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>zebra (hig)
2024-06-24 05:55:26
牛もS.aureusやT.pyogenesには弱いです。T.pyogenesなんて子馬にも病気を数多くおこしても不思議じゃないのに、ほとんどありません。Strept.zooepidemicusなんて馬の常在菌なのに病気もしばしば起こしますし、しかし牛には行きません。なんなんでしょうね。

動物用医薬品の存在意義を考えないといけないところに来ているのではないでしょうか?選択と集中が必要だと思います。
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