馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

R.equi肺炎発症の子馬側の要因 QH生産牧場での2009~2011の回顧的調査

2024-06-16 | 学問

同じくCohen先生が関係したロド肺炎発症要因の調査だが、こちらの論文の方が新しい。2019年。

Foal-Level Risk Factors Associated With Development of Rhodococcus equi Pneumonia at a Quarter Horse Breeding Farm

    クウォーターホース生産牧場でのロドコッカス肺炎発症に関連する子馬側の危険要因
    Journal of Equine Veterinary Science, 2019, 72, 89-96

The occurrence of Rhodococcus equi at farms varies, with disease occurring endemically at some farms, but only sporadically, or not at all at other farms. Only some foals residing on endemic farms develop clinical signs of disease. Limited evidence is available regarding foal-level risk factors for the development of R. equi pneumonia. The purpose of this study was to identify foal-level risk factors associated with the development of R. equi pneumonia among foals at a large breeding farm in Texas with a recurrent problem of R. equi pneumonia. A retrospective cohort study was conducted using data from foals born at the farm from January 2009 through December 2011 that met the criteria for inclusion. Dam-level, foal-level, and health-related data were collected from all foals. Independent variables were analyzed with logistic regression, controlling for the effect of year. Data from 787 foals born at the farm were included, of which 209 (27%) developed R. equi pneumonia. The cumulative incidence of disease at the farm varied significantly by year. Foals that were diagnosed with a prior morbidity besides R. equi were less likely to develop R. equi pneumonia.

 

牧場でのRhodococcus equiの発生はさまざまで、いくつかの牧場では多発するが、他の牧場では散発的にしか発生しないか、あるいは、まったく発生しない。多発牧場に飼養されている数頭の子馬だけが病気の臨床徴候を発現する。R. equi肺炎の発症に対する子馬側の危険要因に関するエビデンスは限られている。この研究の目的は、R. equi 肺炎の再発を抱えるテキサスの大規模生産牧場の子馬の R. equi 肺炎の発症に関連する子馬側の危険要因を特定することであった。2009年1月から2011年12月までに牧場で生まれた子馬のうち、組み入れ基準を満たした子馬のデータを用いて、回顧的コホート研究を実施した。すべての子馬から、母馬側、子馬側、および健康関連のデータを収集した。独立変数はロジスティック回帰で分析され、年の影響が制御された。牧場で生まれた787頭の子馬のデータが含まれ、そのうち209頭(27%)がR. equi肺炎を発症した。牧場での病気の累積発生率は、年によって大きく異なっていた。R. equi以外の病気に先に罹患したと診断された子馬は、R. equi肺炎を発症する可能性が低かった。

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3年間で787頭だから、年平均262頭。超大牧場だ。

テキサス辺りではQHをフィードロット牛のように生産して飼養すると聞いたことがあるが、そのような牧場なのだろう。

データは、ロジスティック回帰分析されている。

こちらの牧場はロド発症率27%だから、先に紹介した2牧場の倍近く発症がある。

先に他の病気に罹った子馬はロド肺炎を発症する率が低かった。というのは、別な病気、たとえば下痢、関節炎、臍帯炎、発熱などで、抗菌剤を投与したからではないだろうか。

初期に、ロド感染していると診断しないままでも抗菌剤治療すれば、それが早期治療になってロド肺炎発症を抑えたのかもしれない。

野外調査で、ロド肺炎発症の有意な危険要因を検出するのは相当難しいようだ。

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ニセアカシア・カスクルージュ

とても繁殖力が旺盛な樹だ。

地下茎が伸びて離れたところにも現われてグングン伸びる。

でも接ぎ木してあるので、現われるのはピンクの花は咲かない株みたい。

増えるのが困る人は庭に地植えしない方が良い。



2 コメント

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Unknown (はとぽっけ)
2024-06-16 06:56:27
 クオーターホースは人気で需要もあるのでしょうね。
 こういうのを見て、伝達を重ねるうちに、最前線では抗菌薬を予防投与するとか一度平熱になったからを単剤を使い続けるといったこともあるとか。
 R. equi以外の病気に先に罹患したということは培養検査の結果をみているのですね。真のリスクファクター見えてこないですね。
 人でも日和見感染した例があったり、耐性菌が確認されたりしていますが、関心は高くはない印象。

 ニセアカシアは平地では花が終わってしまいましたが、高原では真っ盛り。甘い香りに思わず深呼吸。
 植えっぱなしを目指す方には厄介なこともあるのですね。
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>はとぽっけさん (hig)
2024-06-17 07:38:20
多発牧場では、早期発見・早期治療より予防的投与、となるかもしれないと思われるかもしれませんが、それは違うことです。抗菌剤を予防的に使うと、耐性菌が出現し、増殖し、その牧場ではその抗菌剤の効果がなくなります。そして、耐性菌は他の牧場へも広がります。ケンタッキーではすでに7割の牧場で多剤耐性のR.equiが採取されています。今でさえ手こずっているのに、抗菌剤がR.equiに効かなくなったら・・・・
リファンピンの単独長期投与もするべきではありません。

ニセアカシアについて書き忘れました。花以外には毒性があり、馬では樹皮を囓っての中毒事例も報告されています。勝手に増えていく樹ですので、馬牧場には植えない方が良いでしょうね。外来種レッドリストにも上げられているようです。
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