馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

第三中手骨外顆完全骨折のスクリュー固定

2018-06-11 | 整形外科

3歳競走馬が第三中手骨外顆を完全骨折して競馬場から帰って来た。

外側関節面から外側皮質へと完全に割れている。

ふつうは、種子骨と関節面が重ならないような角度で撮影する。

しかし、掌側関節面に骨折線の中に破片がないか、角度を変えて撮影してみる必要がある。

折れた部分は近位方向へ少しずれ上がり、関節面にギャップができている。

4.5mmドリルで骨折線まで穿孔し、その孔に3.2mmのドリルガイドを挿入し、

グリグリと折れた部分を遠位方向へ押し上げた。

その状態で、球節に関節鏡を入れて、関節面のギャップを観察する。

良さそうなので、順次スクリューを3本入れて固定した。

関節近くはしっかり固定できた。

ギャップもかなり良くなった。

骨折線はきれいに割れておらず、粉砕しかけている。

中手骨本体から割れた部分がさらに粉砕しかけている。

こういう割れ方をしているときは深追いしない方が良い。

近位部までしっかり密着させようと皮膚を切ってアプローチすると、さらにバラバラになってしまいかねない。

キャストを数週間巻いておいて骨癒合が進むのを期待する。

                   ////////////

ササや雑草を刈ってしまいたいのだけど、エゾカンゾウは残したいので、まあ・・・・ササだけが残る初冬まで待つか・・・

 

 

 

 



10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (piebald)
2018-06-11 20:59:24
画像では骨だけですが、実際は、筋や皮があるわけなのに、それを、元に戻せるのが、不思議です。

エゾカンゾウは、自生しているのですか?綺麗ですね。
返信する
Unknown (はとぽっけ)
2018-06-12 06:29:51
 日本津々浦々、競馬場と日高や他の場産地を結ぶ交通路線では競走馬の輸送車を見かけるわけですが、こういう馬が乗っていることもあるんですね。
 牛の画像たくさん見たら、「なんか長いねぇ」と思った。お里で治してまた走るんだろね。
 エゾカンゾウ、香りもいいですね。隣にユリ科の、、、、なんでしょね?お花さくでしょか、楽しみですね。
返信する
>piebaldさん (hig)
2018-06-12 21:21:13
30年くらい前は、こういう骨折は大きく切り開いて骨の端を観ながら整復・固定していたようです。しかし、それでは関節を切り開くダメージが大きすぎます。そして、今回のように粉砕しかけていると、バラバラになって固定どころではなくなります。

エゾカンゾウはあちこちに自生しています。減らないで欲しいと願っています、が・・・
返信する
>はとぽっけさん (hig)
2018-06-12 21:23:19
1頭だけ、貸切で帰って来ました。VIP待遇ですね。
牛に比べると、馬は骨折し易く、治りにくいです。

香りは知りませんでした。今度嗅いでみます。
返信する
Unknown (はとぽっけ)
2018-06-13 21:35:56
第三中手・足骨の顆へ入れるスクリューの長さと先端 2014-03-10
とか、いろいろ過去記事読んでみました。
 よくある外傷だけど、難しいなぁ、とつくずく。
返信する
>はとぽっけさん (hig)
2018-06-14 04:14:41
少しでも競走復帰率をあげるための努力ですね。30年前よりずっと良い治療ができるようになり、可能性は高まっていると思います。
返信する
Unknown (maron)
2018-06-14 21:46:13
いつもブログを拝見しています。
この記事ではなく前の記事を読んでいて質問なのですが、通常馬は年に何度くらいどの様な駆虫を行うのがベストでしょうか?
返信する
>maronさん (hig)
2018-06-15 04:29:12
通常といっても放牧してるかどうか、年齢などによって異なります。また以前は定期的に全頭いっせいに駆虫することが推奨されていましたが、薬剤耐性の問題があり、今は虫卵検査でモニターしながら、寄生虫が増えやすい個体を中心に駆虫することが勧められています。

経験的に、生産地で放牧されている繁殖雌馬は、少なくとも年に4回は葉状条虫を駆虫しないと条虫の被害が出かねないと思っています。
子馬は耐性がない薬で1.5ヶ月間隔くらいで回虫を駆虫しないと腸閉塞を起こす可能性が出てきます。
まったく駆虫をしないと最も被害が多発するのは普通円虫なのですが、これは小型円虫と虫卵検査では区別できないので、判断が難しいです。牧場によっても異なりますが、繁殖雌馬で年に数度は必要でしょう。
返信する
Unknown (zebra)
2018-06-17 08:10:17
職人技ですね。
ドリルガイドで抉って骨鉗子で抑えてX線像確認してOKならドリル進める流れですか。
関節側はラグスクリューにしてもその後の骨幹側のスクリューはポシジョンにするというのはどんなものでしょうか。
骨片全体にかかる圧迫ストレスは減るでしょうから粉砕は逃れそうですが。
返信する
>zebraさん (hig)
2018-06-17 17:36:11
こういう完全骨折は、関節切開して、骨折部を観ながら整復固定する、とテキストに書かれていた時代もありました。その方法では競走復帰はほとんどあきらめだったでしょう。

しかし、今は関節鏡の併用もできます。間接を切開せずに整復・仮固定できますし、スクリュー固定の手技もかつてより洗練されました。

ポジションスクリューとして入れることも考える、というのは優れたアイデアです。たしかに粉砕しかけていて、そうすべき症例があるかもしれません。
返信する

コメントを投稿