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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

鼻が鳴る馬の鼻翼ヒダ切除

2014-08-21 | 呼吸器外科

運動したときに、喉鳴りではなく、鼻が鳴る馬が居る。

馬の外鼻孔は、筋肉で大きく広がるのだが、内側にある鼻翼ヒダには筋肉がないので、受動的に広げられるだけだ。

それで、鼻翼ヒダを切除することで鼻が鳴らなくなり、呼吸が楽になる馬が居る。らしい。P8206562

Equine Surgery には第一版から第四版の最新版まで鼻翼ヒダ切除手技が書かれている。

(右図)

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鼻が鳴ると相談されたので、鼻翼ヒダを仮縫合してみることを勧めた。

仮縫合したら音も小さくなり楽そうだったとのこと。

それで手術することになった。

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P8206557けっこう出血がある手術なのだが、

laserでやってみた。

とても良い感じに切除できた。

laserで順調に切開切除できたし、出血もほとんどない。P8206560

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P8186544くんくんくんくんくん

よくこんなものに入って寝てるナ

この暑いのに

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「アンタみたいに毛皮着てませんから!」

 


右側の喉頭片麻痺

2014-08-01 | 呼吸器外科

喉頭片麻痺は99%以上、左側にしか起こらない。

どうしてかはわかっていない。

迷走神経の枝である反回神経は脳を出て胸腔へ到り、 そこで反転して喉頭へ戻って、喉頭の動きを司っている。

そして、右と左はそれぞれの反回神経喉頭枝で支配されている。

左の反回神経は大動脈弓をくぐって反転するので、強い調教・競走をさせられるようになると、大動脈弓の振動や拍動で神経が損傷を受けるのではないかとも考えられていたが、

現在ではその説は否定されつつあるようだ。

獣医さんが左側ばかりから注射を打つから・・・・というのは素人考え。

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P7206434しかし、ごくまれに右側が麻痺している馬を診ることがある。

今まで診たのは数例だが、

ほとんどは右側の喉頭軟骨の奇形だった。

Tieback手術をやろうとしたが牽引するための軟骨がなくてできなかったこともある。

術前に超音波で形状がおかしいことが把握できてTiebackをあきらめたこともある。

首の付け根辺りの右よりを大怪我した育成馬があとになって、右側喉頭麻痺になっていたこともあった。

そのような場合はTiebackしようと思えばできただろうと思う。

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P7316488ただし、右利きの術者が右側のTiebackをするのはなかなか難しい。

馬の尾側、つまり左から右へ軟骨を正確に貫かなければならないので、右手だと把針器を逆手に操作するか、あるいは左手で扱うか・・・・

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この症例は、10回以上出走していて勝鞍もあるので、軟骨のひどい奇形だとは思えない。

術前の超音波検査でも軟骨の形状に異常はなかった。

右側の背側輪状披裂筋は、左側よりわずかに萎縮しているようだった。

安静時の内視鏡検査では、右がゆるんで左右不対称で、右側小角突起はほとんど外転しなかった。

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手術してみると輪状軟骨の尾側の辺縁が妙に柔らかく感じた。

ひょっとすると神経にも筋肉にも異常はなくて、収縮して牽引するのに、その支点である軟骨が柔らかいために小角突起を外転させられなくなったのかもしれない・・・・などと想像するが、真偽のほどはわからない。

できるだけしっかりした部分に針を刺して糸を通した。左手で。

手術後の内視鏡検査では右側披裂軟骨小角突起は良い感じで外転固定されていた。

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もちろん、

右側も毛むくじゃら・・・・・


重輓馬のTieback

2014-07-26 | 呼吸器外科

きのうは、午前中、日本装蹄師会の教育生16名が見学研修。

18歳から32歳だそうだ。

1年間とは言え、その密度の濃い教育期間をうらやましく思う。

獣医学教育は6年間だが、とてもその密度はないだろう。

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P7256471
午後は重輓馬の喉頭形成術 Tieback 。

手術台には載らないので、倒馬室で手術した。

5m×5mで設計した倒馬室が狭く感じる。

軽種馬とは別な動物だと思っていたほうが良いかもしれない。

大きさは倍ちがう。

手術もかなりやりにくい。

皮膚は分厚いし、

脂肪は多いし、

大きい分、手術部位も深くて遠いし、

軟骨の形状や厚さや硬さも軽種馬とは違う。

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なにせ重いので、圧迫による筋障害にも気をつけなければならない。

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P7256469とうちゃん、おつかれ~

オラがナメテやるよ


繁殖雌馬の披裂軟骨炎の永続的気管開創術

2014-05-26 | 呼吸器外科

P5256245去年、披裂軟骨にできた肉芽腫を切除した繁殖雌馬。

順調だったが、1年経って分娩したら異常な呼吸音がするようになり、苦しくなった。

喉頭内視鏡検査をしたら、去年は右の披裂軟骨小角突起に付いた肉芽だったのに、今年は左の小角突起に肉芽が付いていて、左の小角突起自体も肥厚し、動かなくなっていた。

もう喉頭の機能は回復しないだろうと予測されるので、永続的気管開窓術を行った。

この手術は立位でも行えるが、馬の首の下での上を向いての手術になるし、丁寧にやらないと肉芽が出て再手術を繰り返すことになるので、全身麻酔でやりたい。

初めてやった頃は、気管から呼吸していて、冬の北海道の寒さに耐えられるか心配だったが、今までやった馬でそういうトラブルは聞いたことがない。

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全身麻酔は最近よく使っているプロポフォール。

覚醒が良いのが利点だが、呼吸抑制があるので油断できない。

去勢などの決まった時間で終わる手技だと良いが、外傷縫合やその他の手術のように手術時間の予測ができないと麻酔の深さや長さの調節がしづらいかもしれない。

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その他に、1歳馬の前肢の腫れの超音波検査とX線撮影。

2歳馬の骨盤のX線撮影。

入院厩舎に入院2頭。

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そして夜に結腸捻転。

UEFAチャンピオンズリーグもアジア杯なでしこも観ている余裕はない(涙)。

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P5256247P5256253

 


春は盛りだくさん

2014-04-21 | 呼吸器外科

きのう、日曜日は、午前中、子馬の肢軸異常の矯正手術。

午後、1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。

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夕方、水様性下痢と疝痛を示す3日齢の当歳馬。

PCVは38%だが皮膚テントは延長し、口粘膜は粘りがある。

片側の下瞼は内反してしまっている。

前日から5リットル補液されている。

補液後は哺乳するらしいが、しばらくすると乳も飲めなくなるとのこと。

 ロタウィルスをチェックして陰性。それなら隔離厩舎でなくていいだろう。

静脈カテーテルを留置、持続点滴を開始する。

酢酸リンゲルとブドウ糖液。

下痢が止まるまで乳を切ることにする。

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今日は、朝一で結腸捻転の手術後6日目の疝痛馬。

手術翌日に退院したが、その翌日の午後から疝痛が続いているという。

開腹したら盲腸便秘だった。

結腸捻転の手術のときには盲腸はガスだけで空虚だったので・・・・・

退院後に食いすぎたに違いない。

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午後、競走馬の喉頭形成・声帯切除手術。

左披裂軟骨も外転するのだが、右に比べると開きが悪い。

つまり完全には外転しない。

こうなるとGradeⅢbだ。

超音波検査で左披裂背側輪状披裂筋は変性し、薄い。

P4166084 実は先にGround Laryngoscopeで高速運動中に左披裂軟骨と左右声帯が虚脱することを確認してもらっていた。

(右)

確信を持って手術することができた。

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夕方、子馬の肢軸異常のスクリュー抜去。

開腹手術して退院したのちに急死した馬の剖検。

腸炎の子馬が退院したあとの馬房消毒。

で、さらに繁殖雌馬の結腸左背側変位の開腹手術。

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P4206102とうちゃん

ゆうがたは

ちゃんと

オラを

まっさーじしに

オラと

あそびに

かえってこいよ