喉頭片麻痺は99%以上、左側にしか起こらない。
どうしてかはわかっていない。
迷走神経の枝である反回神経は脳を出て胸腔へ到り、
そこで反転して喉頭へ戻って、喉頭の動きを司っている。
そして、右と左はそれぞれの反回神経喉頭枝で支配されている。
左の反回神経は大動脈弓をくぐって反転するので、強い調教・競走をさせられるようになると、大動脈弓の振動や拍動で神経が損傷を受けるのではないかとも考えられていたが、
現在ではその説は否定されつつあるようだ。
獣医さんが左側ばかりから注射を打つから・・・・というのは素人考え。
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しかし、ごくまれに右側が麻痺している馬を診ることがある。
今まで診たのは数例だが、
ほとんどは右側の喉頭軟骨の奇形だった。
Tieback手術をやろうとしたが牽引するための軟骨がなくてできなかったこともある。
術前に超音波で形状がおかしいことが把握できてTiebackをあきらめたこともある。
首の付け根辺りの右よりを大怪我した育成馬があとになって、右側喉頭麻痺になっていたこともあった。
そのような場合はTiebackしようと思えばできただろうと思う。
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ただし、右利きの術者が右側のTiebackをするのはなかなか難しい。
馬の尾側、つまり左から右へ軟骨を正確に貫かなければならないので、右手だと把針器を逆手に操作するか、あるいは左手で扱うか・・・・
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この症例は、10回以上出走していて勝鞍もあるので、軟骨のひどい奇形だとは思えない。
術前の超音波検査でも軟骨の形状に異常はなかった。
右側の背側輪状披裂筋は、左側よりわずかに萎縮しているようだった。
安静時の内視鏡検査では、右がゆるんで左右不対称で、右側小角突起はほとんど外転しなかった。
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手術してみると輪状軟骨の尾側の辺縁が妙に柔らかく感じた。
ひょっとすると神経にも筋肉にも異常はなくて、収縮して牽引するのに、その支点である軟骨が柔らかいために小角突起を外転させられなくなったのかもしれない・・・・などと想像するが、真偽のほどはわからない。
できるだけしっかりした部分に針を刺して糸を通した。左手で。
手術後の内視鏡検査では右側披裂軟骨小角突起は良い感じで外転固定されていた。
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もちろん、
右側も毛むくじゃら・・・・・