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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

dynamic respiratory scope

2009-10-20 | 呼吸器外科

育成馬、競走馬ののど鳴り、つまり上部気道の障害で、強い運動中にのどがどうなっているかは、トレッドミル上で高速運動させながら内視鏡で喉の様子を観察するしかない。

しかし、トレッドミルで運動させることには、

馬が暴れてトレッドミルから飛び出してしまう危険、

硬いベルトの上で高速走行させるので、球節などが腫れる危険、

トレッドミルへの馴致の手間、

人手の問題、などが付きまとう。

Pa200013 こちらは騎乗者がヴィデオスコープの光源を背負って馬に乗り、喉の内視鏡所見は録画されるというセット。

光源は電池式で、1時間もつそうだ。

録画はMP4に記録される。

今は無線送信の方式も開発されているようだ。

これなら、いつものコースを走らせながら運動中の喉の動きを観察できる。

トレッドミル運動に伴う危険も、運動器障害のPa200011可能性も、人手の問題もなくなる。

馬が暴れて乗り役が落ちたら、光源もスコープも壊れるかもしれないけど・・・・

すでにイギリスの獣医学雑誌に広告も出ている。

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もうひとつの可能性はカプセル内視鏡の応用だ。

馬の喉を観るためにはカプセルではかえって固定しにくいので、チューブの先にカプセル内視鏡をつける。

そしてチューブごと鼻に固定して、騎乗運動させる。

あとはカプセル内視鏡の画像を取り出せば運動中の喉の様子がわかる。

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カプセル内視鏡は使い捨てで、けっこうな値段がするはずだ。

上のDRS(dynamic respiratory scope)はいくらするんだろうか・・・・・?

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Pa190005 Pa200008                         


laserによる声嚢声帯切除

2009-09-09 | 呼吸器外科

P9110827 朝は喉頭片麻痺の Tieback & Ventriculocordectomy.

Ventriculocordectomy (声嚢声帯切除)はレーザーメスで行った。

あとで縫合する皮膚切開は、レーザーでやると癒合が悪いとされているが、馬の喉頭切開は古典的にも開放創にするので、皮膚切開もレーザーで行った。

当たり前ながら、出血は少ない。というより出血しない。P9110828

筋肉は正中を鋏で分けるようにして開く。

喉頭切開もレーザーで行った。

ほとんど出血しない。

声嚢声帯切除もレーザーで行った(右下)。

これも出血が少なく良い感じ。P9110829

起立後の出血も少なかった。

レーザーも熱で切って行くので、切った部分が縮んでいく。

その感じに慣れる必要はありそうだ。

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つづいて疝痛を繰り返す繁殖雌馬の診察。

午後は1歳馬の膝跛行。

黒毛和牛の近位趾骨間関節の外傷性細菌性関節炎と、骨髄炎。

1歳馬の放牧事故の剖検。

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P9110832_2 わ~い、リンゴがなった!

無農薬。

食べてうまかったらどうしよう?!


Tieback re-check

2009-09-05 | 呼吸器外科

P9040798 喉頭形成術 Tieback をやったら、1ヶ月後に連れて来てもらって再検査することにしている。

牽引状態を確認しておくことは、その後の状態を判断するために大切だと考えている。

牽引されすぎていても、外転状態が弱くても、

再手術の必要性も考慮しておかなければいけない。

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この馬は左披裂軟骨は右の安静時より外転されて固定できている。

左右の声帯も切除したのでU字型になっている。

声嚢もほぼ埋まっているので、声帯の虚脱も起こらないだろう。

P9040800 1ヶ月前の手術前の様子は左。

左右不対称。

左の披裂軟骨はほとんど動かない。

触診すると披裂軟骨筋突起が突出しているように触れ、

輪状軟骨の背側には披裂輪状筋がなくなっているのも感じた。

強い運動中には左披裂軟骨は虚脱を起こして気道を塞いでいたはずだ。

今回の手術で改善されるはずだ。

ヨッシ!(笑)

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出張明けの土曜日だったが忙しかった。

子馬の疝痛の診断、全身麻酔しての食道異物除去、血液検査、子馬の開腹手術、育成馬の疝痛の診断、全身麻酔しての食道膿瘍切開。

学会帰りでモチベーションが高いのが救いだったナ(笑)。


Tie forward for DDSP

2009-08-31 | 呼吸器外科

P8310788_2 調教すると咳き込んで、ゲロゲロ喉鳴りして止まってしまう2歳馬。

内視鏡検査すると、喉頭蓋が薄く弱く見える。

軟口蓋も盛り上がって見える。

高速運動中に喉頭がどうなっているかはトレッドミル検査をしてみないとわからないのだが、症状と安静時の内視鏡所見がP8310789 一致すればDDSPだと判断していいだろう。

鼻を手で塞ぐと、軟口蓋はさらに盛り上がり、ついには軟口蓋が喉頭蓋の上に覆いかぶさる。

すると、ブルブルゲロゲロ音がする。

(写真はDDSPを起こす寸前)

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P8310791 Tie forward手術をした。

あわせて胸骨甲状筋付着部切断。

軟口蓋の焼烙も行った。

軟口蓋の焼烙はレーザーで。

麻酔覚醒後、また内視鏡で観ると、

喉頭蓋は強く反って、正常な形状になっている。

ヨッシ!

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民主党大勝。

若い人たちは選挙に行ったのだろうか?

大衆迎合、ばら撒きじゃなく、オレ達に借金ばかり残さないでくれ。とハッキリ言わないと、

この国は破産する。


レポジトリー内視鏡検査のための馴致

2009-06-18 | 呼吸器外科

セリのレポジトリーのための喉頭内視鏡検査とx線撮影を数日にわたって行っている。

つくづく思うのは馴致の重要性。

Photo検査を、馬にも人にも安全に行うためもあるが、喉の内視鏡検査では馬がリラックスしているのと、無理やり押さえつけて行うのでは喉の所見が変ってくる。

気管の入り口(喉頭)の下にある喉頭蓋は左の写真のようにしっかりと反っていて欲しいのだが、Dsc_0119

DDSP(軟口蓋背方変位)を起こし易い馬では、喉頭蓋は薄 く、短く、弱く見える(右)。

しかし、その馬の喉頭蓋がいつもその状態かというとそうではなく、

無理やり押さえつけたり、首や頭をひっぱたりすると、喉頭蓋Dsc_0123 が薄く短く見える。

そして、しばしばDDSP(左下)を起こす。

DDSPを起こしてしばらくは喉頭蓋は薄く弱く見えるが、

しばらく安静にして待つことができれば、反り返って力強さを取り戻すこともある。

しかし、落ち着いてない馬ではそれができない。

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Dsc_0122 ケンタッキーの獣医師も言っていたが、

DDSPを起こさせようとすれば無理に顎を伸ばしたり、顎をひっぱたりすれば起こさせることができる。

逆に、DDSPを起こさせず、しっかりした喉頭蓋であることを示す動画を録画したければ、馬をしっかり馴致しておいて、馬がリラックスした状態で自然な頚と頭の位置で内視して録画した方がいい。

しかし、しっかり馴致されていない馬ではそれができない。

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鎮静剤はできるだけ投与せずに内視鏡検査するよう求められているし、

鎮静剤を投与すれば喉の動きが悪くなるし、DDSPも起こし易くなる。

今年から、喉頭内視鏡検査がレポジトリーに含まれるセリもある。

馬を充分に馴致しておかないと売れ行きにも影響するだろう。