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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

後膝の超音波検査の講義と実習

2019-11-29 | 講習会

木曜日はフランス人でカタール大学のFlorent David先生の講習会。

後膝の超音波検査がテーマで、午前は講義、午後はデモンストレーションだった。

とても詳細な講義と実習で、感心した。

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今年も海外の先生に生産地にも来てもらえてたいへん良かった。

馬の数と同じく、馬の獣医師は北海道にたくさん居る。

東京で講習会があっても、多くの馬獣医師が北海道から参加するのは難しい。

生産地は今や生産だけの知識や技術だけではなく、競走馬や育成馬についての知識や技術も必要としている。

繁殖学やら新生仔学ならなおのことだ。

講習会や実習には十勝からも複数の獣医師が参加していた。

有意義な講習と実習だった。

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私は講習中に、後膝が腫れた当歳馬の相談を受けた。

週明けに超音波検査することにした。

 


船橋競馬場初訪問

2019-11-23 | 講習会

午後の診療を終えてから空港へ向かい、夜の飛行機で羽田へ。

羽田近くのホテルの夜明け。

街は夜中も車が行き交って明るいし、コンビニの店員さんの名札はカタカナで、どこの国のヒトかもわからない。

関西育ちの北海道在住者には、東京周辺の乗り換えは理解不能。

京葉線と京急と都営地下鉄と、いったいどの電車が誰の線路を走ってるのさ?

「羽田についたらモノレール」っていうのは優秀なキャッチコピーだったんだね。

競馬組合事務局の2階で、馬の骨折の応急処置と手術について1時間半ほど話させていただいた。

船橋競馬場は初訪問だった。

生産地で生まれ育った多くのサラブレッドが船橋で働いていて、休養や故障で帰ってくる馬もいる。

考えてみれば面白いことだ。

翌日、関東は雨。

飛行機はまた満席だった。

 


馬の眼科 講義と実習

2019-11-15 | 講習会

きのうは地元獣医師会の産業動物講習会。

会場へ向かう途中、繁殖雌馬の疝痛の依頼があり、スタッフ半分はUターン。

今年は眼科の講義と実習をやってもらった。

午前中は講義。

午後は、まず実馬を使って、

眼の局所麻酔。

眼の超音波検査。

眼底検査。

のデモと体験。

初めての獣医さんも眼底を観れたようで、ヨカッタ。

会場を移って、解剖体で、

鼻涙管洗浄。開口部の確認。

眼球摘出、結膜フラップ、結膜下点眼システムの装着、etc.を体験。

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眼は特殊な器官で、病気や事故も、構造も、そして治療への反応も特殊。

そして、特に馬では重要な器官であることは間違いない。

講義を聴くだけでなく、針を刺したり、切ったりすることで、untachable な分野ではなくなったのではないだろうか。

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戻って来て、片づけをした頃、疝痛の依頼。

季節の変わり目、かね。

この1日2日、北海道は荒れるらしい。

 

 

 

 


やってみよう関節鏡!

2019-10-13 | 講習会

関節鏡手術は馬の二次診療施設で最も数多く行われる手術だが、一次診療をしている獣医さんたちはやってみる機会はないし、観にくることもほとんどない。

世界中の馬病院の経営を支えるようになっている関節鏡手術だが、一次診療をしている獣医さんたちが診断して送り込み、術後管理もしている。

しかし、手術手技がどのようなものか体験する機会はまずない。

関節鏡手術が普及することで、馬獣医師が関節を扱うことが飛躍的に増えた。

X線診断もそうだし、関節穿刺や関節洗浄や、関節の麻酔などもそうだ。

私たちも関節鏡手術をやるようになったことで、関節をいじることに抵抗がなくなり、関節鏡手術以外の技術や知識も増えた。

それで、一次診療の獣医さんたちに、「やってみよう関節鏡!」と題して、実技研修を企画した。

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予定の手術を入れないようにして、手術室で解剖体を使って実習してもらう。

まずは飛節(足根下腿関節)から。

ところが、昼に1歳馬の疝痛が来院。

手術室からX線室へ器材を移し、手術の途中まで手伝う。

午後は、X線検査室で、腕節(前腕手根関節と手根骨間関節)、球節、蹄関節の関節鏡手術の練習。

関節穿刺の練習になるし、

関節の解剖の知識を確認することになるし、

関節を構成する、関節包、滑膜、軟骨、関節構成骨を刺して、切って、器具で触って、実感として知ることができる。

それらの体験は、今後の臨床に役に立つだろうと思う。         

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旧町営畜産研修センターは、煙突を残すだけになった。

まさに瓦礫の山。

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台風19号の被害に遭われた方に心よりお見舞い申し上げます。

地球温暖化による異常気象のひとつなんだろうな・・・・

 

 

 

 


馬臨床高度化研修2019

2019-10-02 | 講習会

10月に入って、世間は消費税10%で騒がしい。

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この3日間、他の地域のNOSAIから馬臨床高度化研修の獣医師が4名見えている。

初日は2歳競走馬の喉頭片麻痺のTieback&Cordectomy 喉頭形成・声帯切除手術を観ていただいて、

そのあと、馬の麻酔の講義。

馬の診療をするなら全身麻酔できるようにしておかないと、外傷縫合や臍ヘルニアにも対応できない。

午後は1歳馬の臍ヘルニア。

プロポフォールを用いたTIVA 全静脈麻酔。

プロポの呼吸抑制が強く出て、気管挿管とデマンドバルブが必要になるところも観ていただけた。

覚醒が良好なところも。

そのあと、準急患で1歳馬の下顎骨折。

蹴られたのだろう。

下顎がずれてしまっている。

餌は食べられない。

水も飲んでいないのだろう。便もコロコロだった。

乳を飲んでいる子馬とちがって、草を食べなければならない育成馬や成馬は下顎が完全に割れて食べられなくなると痩せ衰えてしまう。

骨癒合が早ければ良いが、ずれてグラグラしているようだとなかなか骨癒合せず、口の中からも感染が進んで化膿する。

だから、固定して、骨折線をできるだけ閉じて感染の重篤化を抑え、骨癒合を進めて早く食べられるようにしてやった方が良い。

整復してDCPを当てて固定し、さらに骨折線の両側の臼歯をワイヤーで締結した。

牛や重種馬では、このような下顎骨折はまず起こらないのかもしれないが、プレート固定の適応が肢の骨折だけではないことを観ていただけた。

そのあいだに、肢軸異常の左右球節にscrewを入れていた当歳馬からのscrew抜去。

サラブレッドの当歳馬でも立位で鎮静と局所麻酔でscrew抜去できることを・・・・併行していたので観ていただく暇はなかった;笑

馬の生産地では二次診療のニーズが充分あり、多様な事故に対応していることを観ていただけたと思う。

洗浄・消毒、切開・縫合、麻酔・覚醒起立、といったわれわれにはルーティンワークも、牛地帯とはかなりやり方が異なっていると思う。

その差を観て、地元で生かせることは採用して普及させていただければ、このような研修も意義があるのかな、と思う。

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うちの会社や地元の馬獣医師は観ておかなくて良いのか?;笑