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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

馬臨床実習2020 その2

2020-10-19 | 講習会

地区NOSAI内部の若い獣医さんを集めての馬臨床実習第二段。

この日は、生産地の獣医さんがやるべき蹄の診断、治療をテーマにした。

まず簡単な講義。

馬臨床獣医師として働く以上、蹄についての知識を増やさなければいけないし、正確な知識を持たなければならないし、

自分で興味を持って考えなければならない。

そのあと、実習馬を使って、

まず、蹄の視診、触診。

蹄鉗子(検蹄器)での鉗圧の練習するの忘れた;笑

蹄の痛みだと確定診断するためのPDN Palmar Digital Nerve のブロックをおこなった。

初めての獣医さんがやったが、ちゃんと効いた。

お昼にみんなでお弁当を食べて、午後は、

解剖体で削蹄の実習。

獣医さんは健康な馬を削蹄して回るわけではないが、蹄膿瘍(”砂のぼり”)の治療にも、蹄葉炎馬の管理にも、削蹄の知識と技術は必要だ。

X線を撮ってから考えると、外見から蹄骨の位置を推察する練習にもなる。

そのあと、実習馬を削蹄。

みなさん良い削蹄器具を持っているのにも感心した。使っていなくて新品同様なのも;笑

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削蹄師・装蹄師さんは正常な馬を削蹄・装蹄するのが仕事で、異常がある馬を診療するのは獣医師の仕事だ。

しかし、蹄の跛行だと”思ったら(ろくに診断もせず)”、「装蹄師さんに見てもらって」と逃げてしまう獣医師も多い。

装蹄師さんは、蹄鉗子で見当をつけて、X線画像もないまま蹄を掘ってみるしかない。

獣医師は薬(鎮静剤、麻酔薬、抗生物質、etc.)も使えるし、X線撮影もできる権限を与えられている。

しかし、1年間の教育を受けてきて、毎日馬の蹄を仕事の対象にしている装蹄師さんに比べて、知識も技術も腕力も不足している。

私は馬医者がもっと蹄についての知識と技術を増やさなければならないと思う。

No hoof, no horse.

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秋色の 中で死ぬのか ヒメマユガ

馬医者として30年働いて、5年で残すこと伝えることをやって、引退だと思ってきた。

国の財政事情と国民の健康事情で逃げ水のように5年延ばされた;笑

しかし、もう伝えること残すことだけを考えている。

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デアリングタクト!おめでとう!!

 

 

 

 


馬臨床実習2020 その1

2020-10-13 | 講習会

日曜日、診療予定を空けておいて若い獣医さんたちの馬臨床実習。

眼結膜をうまく開けて観るのも、

馬の肢を持ち上げておくのも、

内科診断学的直腸検査も、

腹部超音波検査も、

四肢X線撮影も、

やってみなければできるようにならないし、基本を教わって経験を重ねないとうまくならない。

牧場の方々にもお願いしたい。

どうか育てる意識も持って若い獣医師とつきあっていただきたい。

獣医師を募集しても募集人数ギリギリしか応募がないのが現状で、辞めていく獣医師も少なくない。

獣医科大学での教育も努力はされているものの、時代の進歩と変化はもっと速い。

国の財政逼迫や少子化や労働力不足とも関係していて、獣医師集団や農業団体の努力だけではどうにもならない面もある。

結果的に育たないと、残るのは不毛の地だ。

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苗を植えて今年で4年目の秋。

いくつか食べられそうな栗がなった。

「桃栗三年柿八年」とはよく言ったものだ。

この言葉には続きと教えがあるのを知っていますか?

ウシ、ブタ3年、ウマ8年、〇〇の大馬鹿18年・・・・・

 

 

 


馬臨床技術向上研修 3日目

2020-10-02 | 講習会

研修3日目。

準急患で第一指骨が粉砕しかけた3歳競走馬のscrew固定手術。

X線撮影を繰り返しながら、適切な位置と角度でlag screwを入れていく。

そのことで、骨折線が圧迫されていく様子を観ていただけた。

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昼、疝痛の診断、手術の決断の方法の講義。

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足根関節のDJDが進行した2歳馬の遠位足根間関節のアルコール注入療法。

まず造影剤を入れて、近位足根間関節とつながっていないことを確認しておいてアルコールを注入する。

これもDRを使う。

日常的というより運動器の障害ではほとんどの症例でX線撮影する馬の診療は牛の診療の刺激にもなるだろうか。

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この日は実習馬を借りることができたので、

馬の診察。

馬の望診、視診、触診。

馬の保定。

馬の内科的直腸検査。を実習していただいた。

馬も牛も膝蓋骨上方固定を起こすことがある。

内側膝蓋靭帯の触診の仕方を練習しているところ。

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膝を刺傷して膝蓋骨を損傷し、跛行が続いている黒毛和牛。

膝蓋骨の破片を取り出すドレナージ手術した。

気管挿管して静脈維持麻酔で行ったが、研修の先生に気管挿管していただいているところ。

牛の気管挿管が普及することで、牛も”麻酔”できるようになるだろう。

なんでもキシラジンの鎮静だけ、では衛生的な上質な手術はできない。

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皆さん200~400km離れた地元へ帰らなければならない。

北海道はひとつになるには広すぎる。

2名の先生は残ったが、また馬の疝痛が来院して・・・・

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私たちは、馬でも牛でも全身麻酔するような手術を365日24時間引き受けている。

全国で唯一かもしれない。

日々診療をこなすだけでなく、研修や講習を通じて大動物臨床の進展にも貢献したいと考えている。

 

 


馬臨床技術高度化研修 2日目

2020-10-01 | 講習会

2日目は子牛の骨折プレート固定の研修にあてた。

前日、小腸根部捻転で手術した子馬はダメになった。

手術後もなかなか起きなかったし、活力もなかったし、外部から観た以上に膨満と虚血によるダメージがあったのだろう。

小さな胃穿孔が早くにあったのかもしれない。

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剖検のあと、馬の小腸の生存性判定のためのグレーディングと症例について講習。

そのあと、牛の骨折プレート固定の講義。

それから死体肢を使って実習。

脛骨からはじめて橈骨へ取りかかるあたりで昼。

私は午後は会議。

午後は馬の跛行診断が2頭。

そのあと骨折プレート固定の実習の続き。

あちこちでバラバラとプレート固定は行われていて、治った症例もあるようだ。

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骨はしっかり固定しなければなりませぬ。

 

 


馬臨床技術向上研修2020 1日目

2020-09-30 | 講習会

おととしからやっている馬臨床技術向上研修。

北海道の5地域のNOSAIから一人ずつ、そして引率の高度医療センターOBがいらっしゃった。

朝、脛骨骨折をdouble LCP固定した当歳馬の傷が開いて再縫合するのを見学。

そのあと、サラブレッド生産地の馬の診療の概要を講義。

午前中は競走馬の腕節骨折の関節鏡手術の見学。

そのあと、馬の麻酔の講義。

その最中、当歳馬の疝痛の依頼。

小腸閉塞で、開腹手術。

ひとりの獣医さんには助手をしていただいた。

続いてカケスの矯正手術の後の当歳馬の診察。

そのあと、牛の麻酔の講義。

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それなりに密度の濃い1日になったのではないだろうか。

みなさん牛の診療に追われる毎日の中で馬の診療の研修に来られている。

馬臨床の知識や技術を観ていかれるのも良いが、牛の診療に役立つ何かを見つける機会にもなればと思う。

私たちも他の地域の様子を聞いて刺激を受けたい。