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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

全国公営競馬獣医師協会研修2024 part1 骨折内固定

2024-01-29 | 講習会

24日から日本海側、北海道は大荒れ。

25日の千歳-福島便は夕方には欠航が決まった。

スマホで26日以降の福島便への振り替えはできるが、それでは26日の研修に穴をあけることになる。

25日早朝に千歳空港へ行った。

空港カウンターでは、羽田便への振り替えができた。

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モノレールで浜松町、JRで東京駅、東北新幹線で那須塩原へ。

今は、ほとんどの人が切符って使わないんだね。

改札を通るのにも戸惑う。カードとかIC専用の改札機がほとんど。

キャッシュレス化、なんでもスマホの時代の変化についていけてない。

ついていきたくもないけど。

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26日は骨折内固定をテーマに研修していただいた。

ジョンソンアンドジョンソン Synthesさんの協力で器材を4セット使わせていただいた。

テーブルふたつは中手骨外顆骨折のscrew固定。

業者さんの協力のおかげでDRを4台も使えたので、X線撮影しながら位置決めができたのだが、

良い位置に、良い角度でscrewを入れるのが難しい。

ドリル、デプスゲージ、タップ、を正しく操作し、しっかりlag screw を効かせるのもなかなか難しい。

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テーブルひとつは子牛の脛骨骨折のプレート固定を練習してもらった。

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テーブルのひとつは内固定の基本手技の知識があるJRAの獣医さん達。

PIPjoint の関節固定

下顎骨骨折のプレート固定

尺骨固定のプレート固定を体験していただき、それにまつわる実践的な要点を説明した。

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骨折内固定は、特殊な機材を使う特別な外科手技だが、骨折した馬や牛を救うためには獣医外科医のがんばりが必要。

その入り口を体験していただけたと思う。

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今年も泊めていただいた寮。

やっぱりホテル泊まりより便利で快適。

夜の部(飲み会・意見交換会)もできる。

朝夕、源泉掛け流しの温泉に入れる。熱っいんだけど、目が覚める、疲れが取れる。

 

 

 


Bovine Osteosynthesis 研修

2023-02-10 | 講習会

江別の研修所で開かれた麻酔外科研修の中の1日、プレート固定のインストラクターを頼まれて行って来た。

以前は、10年目研修の1日としてやっていたが、今回から希望者?選抜者?の集まりになった。

全道から8名。

今回もJohnson & Johnson Depuy Synthes の全面協力で、内固定器材を4セット使わせてもらえる。

まずはプラスチックボーンで、器具の使い方を体験。

本当はこれももっと時間をかけてやりたい。

プラスチックボーンで、ドリルやスクリューを扱い慣れておきたいところだ。

そして、今はリアルな骨のモデルもあるので、骨折を作ってプレート固定までスーツ姿でも練習できるようになっている。

AOのcourse ではそうやってホテルやconvention center や大学の1室で行われている。

1日当たりで5万くらい、3-4日間で20万近く取られるけどね;笑

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私たちは解剖肢でより実践的に練習。

この脛骨骨折モデルは長斜骨折になっていて、まずlag screw 3本で固定した。

長斜骨折は整復が難しいのだが、そこは死体肢なので筋緊張がなく、肢をぶら下げて牽引しなくても整復できた。

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午前は4チームがそれぞれに脛骨骨折をプレート固定した。

2時間ほどでできることを体験していただけたと思う。

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午後は、橈骨、上腕骨、大腿骨のうち2箇所か3箇所をプレート固定していただいた。

上腕骨はなかなかアプローチが深く、上腕骨が短く、くびれていて、遠位が内外に分かれていて難しい。

解剖体が3ヶ月齢だったので、新生子牛の解剖体より大きく、重く、骨も少しは固く、時間がかかる要因だったかもしれない。

育成牛で100kgを超えていると、整復も固定ももう少したいへんかもしれない。

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やってみて、X線撮影するとちょっとした失敗も見つかる。

遠位から2本目のscrewは、対側皮質のドリル孔に入らなかったように見える。

地元へ帰って、チームを造って、練習し、そして実践してもらいたい。

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岩手NOSAIには外科高度医療チームがあって、症例があると手術室がある診療所へ集まって実践しているそうだ。

宮崎NOSAIにも高度医療チームがあって、骨折内固定もやっていて、今度の家畜診療の全国大会で発表されるようだ。

北海道では年間500頭近い子牛の骨折が起きている。

治せるものは治していきたいものだ。

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これはうちの庭のニシキギ。

江別は、こんな小潅木は埋まってしまうほどの積雪だった。

(写真撮ってくるの忘れた;笑)

あの雪山の上に雪を積むのは誰がやってるの?

と訊いたことであった。

 

 


那須研修2023

2023-02-01 | 講習会

3年ぶりに開かれた全国公営競馬獣医師協会の那須研修。

ひどく寒い北海道から行ってきた。

行きも帰りもプロペラ機だった。

ボンバルディア、って大丈夫なの

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今年は、コロナ対策で温泉付きの那須寮には泊めてもらえない。

宿泊は近所のビジネスホテル。

工場労働者、ガテン系作業員、外国人労働者が多く泊まっているようだった。

きれいで快適だったよ。

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私が担当した初日は「やってみよう関節鏡」

関節鏡手術は、体験しておくことで、馬に多い関節の障害に対する理解が深まり、

アンタッチャブルになりがちな関節への診断、処置がし易くなるんじゃない?

という主旨で、腕節、飛節、球節、蹄関節の関節鏡を体験していただいた。

約30名なので、ちょっと多すぎる。

解剖肢で解剖を確認するのも自主学習でやっていただいた。

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翌日は、開腹手術実習。

結腸骨盤曲切開、空腸盲腸吻合をやっていただいた。

これは数名しか実習してもらえないが、馬の腸管手術がどのように行われ、どのような手術なのか観て知っておくことはだいじなことだ。

日常的に腸管手術をやっている高度医療センターのようにはいかないのはしかたがない。

それでも、すでにあちこちで開腹手術で助かる馬も出ている。

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午後は併行して直腸検査、超音波診断も実習してもらった。

これも機会がないとできない獣医さんも多い。

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地方競馬の獣医師、中央競馬の獣医師、乗馬の獣医師、獣医科大学の獣医師、転職中の獣医師、牧場勤務の獣医師、NOSAI獣医師、etc.

そして、馬の獣医師になりたい獣医科学生。

学びの場であり、交流の場であり、情報交換の場であり、親睦の場でもある。

当たり前のようになっているが、2000年以前はそのような場所はなかったのだし、

続いてきたが、コロナで中断されていたのだし、

いつまで続けられるのかわからない。

しかし、必要だし、続いていってもらいたい。

会津の山を見下ろしながら、帰ってきた。

 

 

 


胆振獣医師会馬講習会2022

2022-12-11 | 講習会

12/7は胆振獣医師会主催の講習会だった。

コロナ禍のせいで、2年間は開催されていなかった。

今年は参加者50名に制限されて、オンラインとのハイブリッド開催。

関係者の努力と英断に感謝したい。

              ー

テーマは「疝痛」。

生存率のアップデートから、超音波診断、子馬の回虫症、帯広畜産大学でのサラブレッド以外の馬の開腹手術。

私も、結腸捻転の大結腸亜全摘とcolopexyについて話させていただいた。

さらに、小腸切除の成績や、腸管手術での術創感染について。

たいへん勉強になった。

              ー

二次診療施設からの話ばかりだったので、「疫学」や「予防」の話がなかったのは残念だった。

一次診療にたずさわっている獣医さんたちには、おこっちまったことにどう対処するかだけではなく、

どうしたら起こさずに済むか、減らせるか、という取り組みをしてもらいたい。

それは一次診療以前の問題なのかもしれないが、診療している獣医師にこそできることだから。

飼養管理指導とか、コンサル、と言っても、競走成績とか受胎率とかの話にしかならないのではないだろうか。

その馬群の疝痛の発生状況と、それにまつわる要因を把握できるのは臨床獣医師なのだろうと思う。

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2021年、家畜高度医療センターへ来院した結腸捻転・変位の症例は80頭を超えていた。

開腹手術して1頭助けるより、予防して1頭減らすことの方が価値がある。

この11月12月、結腸捻転はほとんどない。

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ワールドカップで熱戦が続いている。

努力や準備や才能や、それらを含めた実力が必ずしも勝敗を決めるとは限らない。

しかし、弱いチームが運だけで勝ち残っていくことは有り得ない。

かえって負けて消えていくチームを記憶にとどめようとする見方の方が多くのチームを記憶に留められるかも。

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消えていった馬。

「馬形埴輪は古墳時代中期(4世紀後半)以後の騎馬文化の到来で出現した新しい埴輪である。

ウマは豪族の所有物として飾り立てられ、埴輪にもいろいろな装飾品が表現された。」

と解説文にあった。

馬着か鎧を着ているのかね?

抽象的でありながら、馬の特徴がとてもよく捉えられ表現されていると思う。

九州国立博物館にて。

 

 

 


酪農学園大で講義 馬の呼吸器疾患、消化器疾患

2022-07-05 | 講習会

江別までドライブして、酪農学園大学で5年生対象の講義。

はじまりの90分は呼吸器疾患。

その前に、私がどういう仕事をしている者か紹介しておく必要がある。

それと、北海道の牛・馬の分布についても知っておいてもらいたいし、

北海道の各地の特徴についても興味を持って考えてもらいたい。

江別も、もうすっかり札幌圏でかつてのようなのどかな地域ではなくなっている。

周辺に酪農場が散在していたりはしない。

学生も女子学生が多く、大学の雰囲気も変わったのではないだろうか。

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スライドの枚数は少なくしたつもりだったのだが、のんびり話していたら時間配分を失敗した。

呼吸器疾患は尻切れトンボになってしまったが、まあ国家試験には出ない。

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後半は、消化器疾患。

主に馬の疝痛の話をした。

それを通じて、臨床獣医師の責任とやりがいを感じてもらいたかった。

暑い日で、眠たい午後の講義。

寝ているのは1割まではいなかったかな。

2コマの講義を終わって質問タイムだったが、質問はなし。

個別に尋ねに来る学生もいなかった。

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北海道の大動物臨床獣医師は、酪農学園大卒が圧倒的に多い。

しかし、これからもそれが続いていくと思わないほうが良いのかもしれない。

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3時間立ちっ放しでしゃべり続けたら疲れた。

どうやら本職の大学の先生もそうらしい。

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昨夜の雷で、牧柵を突き破った母子の外傷処置。

別な牧場では1歳馬が2頭死んで焼却に持ってこられた。

雷雨になりそうなときは昼夜放牧は中止しなければならない。

日が暮れてから、雷が鳴り出してからでは危なくて馬を入れられない。

予報は当たるとは限らないので難しいことなのだが。

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2歳馬の腕節骨折の関節鏡手術。

2歳馬の去勢。出血が多くて止血のために再度全身麻酔した。

1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。

当歳馬の跛行診断。

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ロド肺炎で死んだ子馬の剖検。

空腸回腸盲腸重積の手術後の当歳馬の剖検。POI。