獣医師になった年、診療所長が休養馬のx線撮影を頼まれたので手伝いに行った。
「おい、第三なんとか骨が傷んでるんだと。」
と言われてもどこを撮って良いのか私もわからなかった。
第三なんとか骨は・・・・・
第三頚椎、第三胸椎、第三腰椎、第三尾椎、第三肋骨、第三手根骨、第三中手骨、第三指骨、第三足根骨、第三中足骨、第三趾骨・・・・・こんだけかな?
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まあ、今なら見当はつく。
競走馬の骨折で多いのは、前肢の腕節か球節。
第三中手骨が骨折していたらキャスト(ギプス)も付けずにいることはないので、おそらく腕節の第三手根骨の骨折だと競馬場で言われて帰ってきた競走馬だったのだろう。
腕節を触診すれば腫脹、熱感、関節液の増量などがわかったかもしれない。
速歩させてみれば、跛行の程度もわかっただろう。
生産地の獣医師としての1年目、私にはそんな知識もなかった。
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もっとも25年前だ。
レントゲンは自動現像機のスイッチを入れて現像液を温めてから暗室に入って現像しなければならず、うまく写っているかどうかはドキドキものだった。
関節鏡手術はUSAで始まったばかりで、関節切開しての骨片摘出術の予後は良いとは言えなかった。
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自分がどういう順序で、どうやって臨床解剖学の知識を増やしてきたか、もう忘れてしまっているが、
思い出せるなら書き留めておこうと思う。
(下図はGoodyの「Horse Anatomy」より)