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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

R.equiの病原性関連タンパクAは酸化的殺菌を免れることで病原性を表す

2024-06-20 | 学問

病原性プラスミドを持ったR.equi強毒株だけが子馬に病巣を作る。

その病原性プラスミドによって作られているのは病原性関連タンパクA (Virulence-associated protein A)

では、そのVapA は、どういう働きをして病原性を発揮しているのか?

それを突き止めた、という報告も出ている。

            ー

Virulence-associated protein A from Rhodococcus equi is an intercompartmental pH-neutralising virulence factor

R.equiの毒力関連タンパクAはコンパートメント間のpHを中和する病原性因子である

Cell Microbiol. 2019, 21(1): e12958

    Abstract

    Professional phagocytic cells such as macrophages are a central part of innate immune defence. They ingest microorganisms into membrane-bound compartments (phagosomes), which acidify and eventually fuse with lysosomes, exposing their contents to a microbicidal environment. Gram-positive Rhodococcus equi can cause pneumonia in young foals and in immunocompromised humans. The possession of a virulence plasmid allows them to subvert host defence mechanisms and to multiply in macrophages. Here, we show that the plasmid-encoded and secreted virulence-associated protein A (VapA) participates in exclusion of the proton-pumping vacuolar-ATPase complex from phagosomes and causes membrane permeabilisation, thus contributing to a pH-neutral phagosome lumen. Using fluorescence and electron microscopy, we show that VapA is also transferred from phagosomes to lysosomes where it permeabilises the limiting membranes for small ions such as protons. This permeabilisation process is different from that of known membrane pore formers as revealed by experiments with artificial lipid bilayers. We demonstrate that, at 24 hr of infection, virulent R. equi is contained in a vacuole, which is enriched in lysosome material, yet possesses a pH of 7.2 whereas phagosomes containing a vapA deletion mutant have a pH of 5.8 and those with virulence plasmid-less sister strains have a pH of 5.2. Experimentally neutralising the macrophage endocytic system allows avirulent R. equi to multiply. This observation is mirrored in the fact that virulent and avirulent R. equi multiply well in extracts of purified lysosomes at pH 7.2 but not at pH 5.1. Together these data indicate that the major function of VapA is to generate a pH-neutral and hence growth-promoting intracellular niche. VapA represents a new type of Gram-positive virulence factor by trafficking from one subcellular compartment to another, affecting membrane permeability, excluding proton-pumping ATPase, and consequently disarming host defences.

    マクロファージなどの専門的な食細胞は、自然免を酸性化し最終的にリソソームと融合し、その内容物を殺菌環境に曝露する。グラム陽性のRhodococcus equiは、若い子馬や免疫不全のヒトに肺炎を引き起こす。病原性プラスミドを持つことで、宿主の防御機構を破壊し、マクロファージ内で増殖できる。本研究では、プラスミドにコードされ分泌される病原性関連プロテインA(VapA)が、プロトンポンプ液胞-ATPase複合体のファゴソームからの排除に関与し、膜透過化を引き起こし、pH中性のファゴソーム内腔に寄与することを示した。蛍光顕微鏡と電子顕微鏡を用いて、VapAがファゴソームからリソソームに移行し、そこでプロトンなどの小さなイオンの限界膜を透過化することを示した。この透過化プロセスは、人工脂質二重層を用いた実験で明らかになった既知の膜細孔形成剤の透過プロセスとは異なる。感染から24時間後、毒性の強いR.equiは、リソソーム物質を豊富に含む液胞に含まれており、pHは7.2であるのに対し、vapA欠失変異体を含むファゴソームのpHは5.8、病原性プラスミドを含まない姉妹株のpHは5.2であることを実証した。マクロファージのエンドサイトーシス系を実験的に中和することで、非病原性R.equiが増殖する。この観察結果は、病原性および病原性R.equiがpH 7.2で精製されたリソソームの抽出物でよく増殖するが、pH 5.1では増殖しないという事実に反映されている。これらのデータを総合すると、VapAの主な機能は、pH中性、したがって成長を促進する細胞内ニッチを生成することであることを示している。VapAは、ある細胞内区画から別の細胞内区画に輸送し、膜透過性に影響を与え、プロトンポンプATPアーゼを除外し、その結果、宿主の防御を武装解除することによる、新しいタイプのグラム陽性病原性因子である。

                  

    ロドコッカスの病原性プラスミドが何をしているのか当初は知られていなかった。

    病原性関連プロテインAというタンパクを作るのだとわかっても、そのタンパクがどう働いて病原性を発揮するのかわかっていなかった。

    それが、食細胞の中で酸化的殺菌に耐えることで病原性につながっていることが、わかった。

    なにせ、このプラスミドとそのプラスミドによるVapAを持たないR.equiはマウスの実験でも病原性を持たず、

    野外の子馬の病巣からも採れてこない(子馬に病気を起こしていない)のだ。

                  ー

    しかし、R.equi強毒株と言えども子馬以外は病気を起こさない。※

    (※;わかりやすくシンプルにこう書いてしまうけど、R.equi高度免疫血漿を作るために成馬にR.equi強毒株を接種したことがあるが、接種部位はドロドロに化膿するし、発熱もする。やはり化膿菌であり、「日和見感染菌」とか、成馬には病原性がない、という印象ではなかった)

    先に紹介した研究も示すように、子馬も日齢によってR.equi強毒株に対しても抵抗性を発達させる。

    酸化的殺菌力が向上して、VapAを持ったR.equi強毒株が相手でもかなり殺せるようになるのだろうか。

    あるいは免疫の別な側面が向上することでR.equi強毒株にも抵抗できるようになるのかもしれないが、

    新生子馬でさえR.equi無毒株には抵抗できることを考えると、やはりR.equi強毒株に対する日齢による抵抗性はVapAの機能・作用そのものに抵抗できることによるのではないかと私は推測するのだが、どうだろう?

    そして、馬生産牧場でのR.equi感染症を制御するヒントがそこにあるのではないだろうか。

                /////////////

    朝、出勤したら、きのう夕方に疝痛で来た繁殖牝馬は結腸捻転で開腹し、入院している、とのこと。

    さらに、夜中に子馬の小腸捻転も来院し、入院している、とのこと。

    そして、結腸捻転の手術中。

                  ー

    通勤路の左右で、馬牧場で牧草作業が始まっているのを見る。

    今年は、6月中に牧草作業を終える牧場が多そうだ。

                 ーーー

    エゴノキ

    ピンクチャイムというピンクの花が咲く苗のはずだったのが、どういうわけか白花。

    なんということだ。

     

     

     


    子馬のR.equi感染実験における日齢による感受性 

    2024-06-17 | 学問

    子馬は生まれて1ヶ月以内、それもおそらく生後第1週や第2週にR.equi強毒株に曝露され感染している。

    30-45日齢に発症する子馬が最も多いことを、かつて私たちが報告した。

    感染実験では10-13日間の潜伏期間があることも確認した。

    感染実験では、challenge した実験子馬の多くが感染する菌量を投与しないと試験にならない。

    そういう菌量を気管内投与しても、発症まで10-13日間の潜伏期間がある。

    野外感染が成立するときに、子馬が暴露されているであろう菌量は、感染実験で使われている菌量より少ないと推察され、潜伏期間はもっと長いことも想像される。

    そして、野外症例の初期症状は、感染実験での初発症状よりマイルドなのだろう。

               ー

    そして、感染実験に使う子馬の日齢も、実験感染が成立するかどうかの大きな要因であることを確かめた報告。

    The effect of bacterial dose and foal age at challenge on Rhodococcus equi infection

    R.equi感染実験での菌量と子馬の日齢の影響

        Vet Microbiol. 2013, 167(3-4):623-31.

    Abstract

    While Rhodococcus equi remains the most common cause of subacute or chronic granulomatous bronchopneumonia in foals, development of a relevant model to study R. equi infection has proven difficult. The objective of this study was to identify a challenge dose of R. equi that resulted in slow progressive disease, spontaneous regression of lung lesions and age-dependent susceptibility. Foals less than one-week of age were challenged intratracheally using either 10(6), 10(5), 10(4), 10(3) or 10(2) cfu of R. equi. Two doses (10(3) cfu and 10(5) cfu) were used to challenge 2 and 3-week-old, and 3 and 6-week-old foals, respectively. Physical examination, thoracic ultrasound and blood work were performed. Foals were euthanized at the end of the study or when clinical signs of pneumonia developed. All foals were necropsied and their lung lesions scored. Foals challenged with low concentrations of R. equi developed slow progressive pneumonia and approximately 50% of the foals recovered spontaneously. Likewise, macroscopic (>1cm diameter) pyogranulomatous lesions were only observed when low doses of R. equi were used. Clinical pneumonia was not seen after low dose challenge in the 3-week-old foals or in the 6-week-old foals. This study demonstrates that the use of low doses of R. equi to challenge neonatal foals provides an improved model for studying this disease. Furthermore, susceptibility to R. equi infection was shown to diminish early in the foal's life, as has been reported in the field.

     

    Rhodococcus equiは、子馬の亜急性または慢性肉芽腫性気管支肺炎の最も一般的な原因であり続けているが、R. equi感染を研究するための関連モデルの開発は困難であることが証明されている。この研究の目的は、ゆっくりとした進行性疾患、肺病変の自然退縮、および年齢依存性感受性をもたらす R. equi の接種量を特定することであった。生後1週間未満の子馬は、R.equiの10(6)、10(5)、10(4)、10(3)、または10(2)cfuのいずれかを使用して気管内に接種した。2回投与(10(3)cfuと10(5)cfu)を使用して、それぞれ2週齢と3週齢の子馬、3週齢と6週齢の子馬に接種した。身体検査、胸部超音波検査、血液検査が行われた。子馬は、研究の終了時または肺炎の臨床徴候が現れたときに安楽死させられた。すべての子馬は剖検され、肺病変が記録された。低濃度のR. equiに暴露した子馬は、進行性の肺炎が緩慢に進行し、約50%の子馬が自然に回復した。同様に、肉眼的(直径>1cm)の化膿肉芽腫性病変は、低用量のR.equiが使用された場合にのみ観察された。臨床的肺炎は、3週齢の子馬または6週齢の子馬の低用量接種後には見られなかった。この研究は、新生子馬に接種するのに低用量のR.equiを使用することが、この病気を研究するための改善されたモデルを提供することを示している。さらに、R. equi 感染に対する感受性は、野外で報告されているように、子馬の生涯の早い段階で消失することが示された。

                  ー

    生まれて6週間の中でも、1週齢未満と3週齢と6週齢では子馬のR.equi感染の感受性に差があった、とする結論。

    これはサラブレッド生産牧場にとって希望ではないだろうか。

    重点的に守ってやるのは、生後早い時期の子馬に集中して良い。

    分娩馬房、新生子馬を放す小パドック、そして厩舎内の衛生に神経を注げば良い。

                  ー

    発症するのはそれより数週間あとになるので、30日齢以降の子馬は健康状態のチェックには十分注意しなければならない。

    野外症例の初発症状は、遅く、軽度なのだろう。

                  ー

    R.equiのように化膿巣を作る細菌なのに、潜伏期間が10-13日間もあるというのはとても興味深い。

    傷をして、そこが腫れて、熱を持ち、膿が出てくるのはもっと速いでしょう?

    R.equi は一旦貪食細胞に食べられて取り込まれ、しかしR.equi強毒株は貪食細胞の酸化的殺菌に抵抗して生き残るらしい。

    そして、殺されないものだからその場所で小さい膿の塊を作り、それが集まると膿瘍になり、発熱する。

    それに2週間近くかかる。野外例ならもっと長く。

    その間に、貪食細胞に食べられたままリンパ節に運ばれ、リンパ節を化膿させる。

                   ー

    ただ、一旦感染して病巣を作られてしまうと、週齢ごとに抵抗性を発達させていく子馬も、なかなか全頭が自然治癒するとはいかない。

    数ヶ月経って、大きな膿瘍を作って予後不良になる子馬が居るのはご存じのとおり。

    治療しているにも関わらず、だ。

                  ////////////

    ゴジュウカラ

    脳震盪から回復中。

    あまり人が構っているとカラスに気づかれて襲われるかも。

    ちょっとまだ目がいっちゃってる。

     

     


    R.equi肺炎発症の子馬側の要因 QH生産牧場での2009~2011の回顧的調査

    2024-06-16 | 学問

    同じくCohen先生が関係したロド肺炎発症要因の調査だが、こちらの論文の方が新しい。2019年。

    Foal-Level Risk Factors Associated With Development of Rhodococcus equi Pneumonia at a Quarter Horse Breeding Farm

      クウォーターホース生産牧場でのロドコッカス肺炎発症に関連する子馬側の危険要因
      Journal of Equine Veterinary Science, 2019, 72, 89-96

    The occurrence of Rhodococcus equi at farms varies, with disease occurring endemically at some farms, but only sporadically, or not at all at other farms. Only some foals residing on endemic farms develop clinical signs of disease. Limited evidence is available regarding foal-level risk factors for the development of R. equi pneumonia. The purpose of this study was to identify foal-level risk factors associated with the development of R. equi pneumonia among foals at a large breeding farm in Texas with a recurrent problem of R. equi pneumonia. A retrospective cohort study was conducted using data from foals born at the farm from January 2009 through December 2011 that met the criteria for inclusion. Dam-level, foal-level, and health-related data were collected from all foals. Independent variables were analyzed with logistic regression, controlling for the effect of year. Data from 787 foals born at the farm were included, of which 209 (27%) developed R. equi pneumonia. The cumulative incidence of disease at the farm varied significantly by year. Foals that were diagnosed with a prior morbidity besides R. equi were less likely to develop R. equi pneumonia.

     

    牧場でのRhodococcus equiの発生はさまざまで、いくつかの牧場では多発するが、他の牧場では散発的にしか発生しないか、あるいは、まったく発生しない。多発牧場に飼養されている数頭の子馬だけが病気の臨床徴候を発現する。R. equi肺炎の発症に対する子馬側の危険要因に関するエビデンスは限られている。この研究の目的は、R. equi 肺炎の再発を抱えるテキサスの大規模生産牧場の子馬の R. equi 肺炎の発症に関連する子馬側の危険要因を特定することであった。2009年1月から2011年12月までに牧場で生まれた子馬のうち、組み入れ基準を満たした子馬のデータを用いて、回顧的コホート研究を実施した。すべての子馬から、母馬側、子馬側、および健康関連のデータを収集した。独立変数はロジスティック回帰で分析され、年の影響が制御された。牧場で生まれた787頭の子馬のデータが含まれ、そのうち209頭(27%)がR. equi肺炎を発症した。牧場での病気の累積発生率は、年によって大きく異なっていた。R. equi以外の病気に先に罹患したと診断された子馬は、R. equi肺炎を発症する可能性が低かった。

                ー

    3年間で787頭だから、年平均262頭。超大牧場だ。

    テキサス辺りではQHをフィードロット牛のように生産して飼養すると聞いたことがあるが、そのような牧場なのだろう。

    データは、ロジスティック回帰分析されている。

    こちらの牧場はロド発症率27%だから、先に紹介した2牧場の倍近く発症がある。

    先に他の病気に罹った子馬はロド肺炎を発症する率が低かった。というのは、別な病気、たとえば下痢、関節炎、臍帯炎、発熱などで、抗菌剤を投与したからではないだろうか。

    初期に、ロド感染していると診断しないままでも抗菌剤治療すれば、それが早期治療になってロド肺炎発症を抑えたのかもしれない。

    野外調査で、ロド肺炎発症の有意な危険要因を検出するのは相当難しいようだ。

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    ニセアカシア・カスクルージュ

    とても繁殖力が旺盛な樹だ。

    地下茎が伸びて離れたところにも現われてグングン伸びる。

    でも接ぎ木してあるので、現われるのはピンクの花は咲かない株みたい。

    増えるのが困る人は庭に地植えしない方が良い。


    R.equi肺炎の子馬側の発症要因 テキサスの2牧場のべ220頭での調査

    2024-06-14 | 学問

    同じ牧場に生まれて、R.equi肺炎を起こす子馬と起こさない子馬が居る。

    その差は何か?

    何が発症要因なのか?

    調べようとした学術報告がある。

    これもCohen先生が関係した研究。

             ー

    Foal-related risk factors associated with development of Rhodococcus equi pneumonia on farms with endemic infection

    感染多発牧場でのロドコッカス肺炎発症に関連する子馬側のリスク要因

    JAVMA, 2003, 223(12), 1791-9

      Abstract

    Objective: To identify foal-related risk factors associated with development of Rhodococcus equi pneumonia among foals on farms with endemic R. equi infection.

    Design: Prospective case-control study.

    Animals: 220 foals at 2 equine breeding farms in Texas during a 2-year period.

    Procedure: Information collected for each dam included age, time housed on the farm prior to parturition, whether there were any peripartum illnesses, parity, and health of previous foals. Information collected for each foal included breed, sex, gestational age, month and year of birth, location of birth, type of flooring and bedding in stall, postpartum management and preventive health care, passive immunity status, supplementation of immunoglobulins, exposure to other farms or foals affected with R. equi pneumonia, stall and pasture exposure, commingling with other mare-foal pairs, age at weaning, and whether the foal developed R. equi pneumonia.

    Results: 32 of the 220 (15%) foals developed R. equi pneumonia, of which 4 (13%) died. Foals at 1 of the 2 farms and foals born during the second year of the study were more likely to develop R. equi pneumonia. Foal-related factors that were examined were not significantly associated with risk of R. equi pneumonia in multivariate analyses.

    Conclusions and clinical relevance: Results suggest that there are farm- and year-related effects on the risk that foals will develop R. equi pneumonia. Other foal-related factors significantly associated with R. equi pneumonia were not identified.

     

    目的: R.equi感染症多発牧場の子馬におけるRhodococcus equi肺炎の発症に関連する子馬側の危険因子を特定すること。

    デザイン: 前向き症例対照研究。

    動物:テキサス州の2つの馬の生産牧場の2年間の220頭の子馬。

    方法: それぞれの母馬から収集された情報には、年齢、分娩前の農場での飼育時間、周産期の病気があったかどうか、出産、以前の子馬の健康状態などが含まれていた。各子馬について収集された情報には、品種、性別、在胎週数、出生年月、出生場所、馬房の床材と敷料の種類、産後の管理と予防管理、移行免疫の状態、免疫グロブリンの補給、他の牧場またはR.equi肺炎に罹患した子馬への曝露、馬房および牧草地への曝露、他の親子との混合、 離乳時の年齢、および子馬がR.equi肺炎を発症したかどうか。

    結果: 220頭の仔馬のうち32頭(15%)がR. equi肺炎を発症し、そのうち4頭(13%)が死亡した。2つの牧場のうち1つの牧場の子馬と、研究の2年目に生まれた子馬は、R.equi肺炎を発症する可能性が高かった。多変量解析では、検討した子馬関連因子はR. equi肺炎のリスクと有意な関連はなかった。

    結論と臨床的関連性: 結果は、子馬がR. equi肺炎を発症するリスクに、牧場および年に関連する影響があることを示唆した。R. equi肺炎に有意に関連する他の子馬関連因子は同定されなかった。

                  ー

    テキサスの牧場なので、日高のサラブレッド生産牧場とはかなり飼い方が違っているはず。

    個体管理というより、集団飼育的要素が強いかもしれない。

    2牧場で2年でのべ220頭だから、大牧場だが、日高でもそのくらいの頭数の牧場はある。

    テキサスは暖かい、あるいは暑くて、日高よりはるかに乾燥しているだろう。

    前向き研究なので、しっかり計画されて調査されている、はず。

    しかし、何が子馬側のロド肺炎発症要因なのか、わからなかった。

                 ーーー

    気温が上がって、周りに先にロド肺炎を起こしている子馬が居る中に生まれてくる遅生まれにロド肺炎が多い、という傾向もなかったというのはかえって興味をひかれる。

    15%がロド肺炎を発症し、その13%が死亡した、という率はそれほど高いわけではない。

    たしかにendemic ではある。

    調査対象牧場になっていても、関連要因はつかみきれないのだろう。

                  ー

     

    どの子馬が感染し、発症するかは、多要因事象なのだろう。

    何かひとつで問題が起きたり、何かひとつで問題解決するわけではない。

    これは、しばしば調査・研究や、実践でもまちがった解釈がされたり、誤解を引き起こす。

    そして、”偶然”の要因が大きいのかもしれない。

    「たまたま」というやつだ。

    ただ、ほとんど発症しない牧場もある。

    馬生産牧場を管理するなら、それを目指したい。

                ////////////////

    これもヤマボウシ

    今年の”花”はピンクが濃いけど、小さい。

    去年の夏が暑すぎた?

    剪定が負担になった?

    肥料の不足、あるいは過剰?

    水不足?

    これもまた多要因事象なのだろう。

                  


    子馬のR.equi感染症のワクチン PNAGワクチン?

    2024-06-10 | 学問

    期待されている?期待できるかもしれない?ロド・ワクチンについての情報。

    Serum Antibody Activity against Poly- N- Acetyl Glucosamine (PNAG), but Not PNAG Vaccination Status, Is Associated with Protecting Newborn Foals against Intrabronchial Infection with Rhodococcus equi

    PNAGワクチネーションによらない血清中抗PNAG抗体が、R.equi気管内感染試験から新生子馬を守ることに関連していた

    有名なCohen 先生の研究。

    Microbiol spectr. 2021 Sep 3; 9(1): e0063821

    Rhodococcus equi is a prevalent cause of pneumonia in foals worldwide. Our laboratory has demonstrated that vaccination against the surface polysaccharide β-1→6-poly-N-acetylglucosamine (PNAG) protects foals against intrabronchial infection with R. equi when challenged at age 28 days. However, it is important that the efficacy of this vaccine be evaluated in foals when they are infected at an earlier age, because foals are naturally exposed to virulent R. equi in their environment from birth and because susceptibility is inversely related to age in foals. Using a randomized, blind experimental design, we evaluated whether maternal vaccination against PNAG protected foals against intrabronchial infection with R. equi 6 days after birth. Vaccination of mares per se did not significantly reduce the incidence of pneumonia in foals; however, activities of antibody against PNAG or for deposition of complement component 1q onto PNAG was significantly (P < 0.05) higher among foals that did not develop pneumonia than among foals that developed pneumonia. Results differed between years, with evidence of protection during 2018 but not 2020. In the absence of a licensed vaccine, further evaluation of the PNAG vaccine is warranted, including efforts to optimize the formulation and dose of this vaccine. IMPORTANCE Pneumonia caused by R. equi is an important cause of disease and death in foals worldwide for which a licensed vaccine is lacking. Foals are exposed to R. equi in their environment from birth, and they appear to be infected soon after parturition at an age when innate and adaptive immune responses are diminished. Results of this study indicate that higher activity of antibodies recognizing PNAG was associated with protection against R. equi pneumonia, indicating the need for further optimization of maternal vaccination against PNAG to protect foals against R. equi pneumonia.

    Rhodococcus equiは、世界中の子馬の肺炎の一般的な原因である。われわれの研究室は、表面多糖類β-1→6-ポリ-N-アセチルグルコサミン(PNAG)に対するワクチン接種が、28日齢に行ったR.equiによる気管支内感染から子馬を防御することを示した。しかし、子馬は出生時から環境中のR.equi強毒株に自然に曝露されており、感受性は子馬の年齢に反比例するため、このワクチンの有効性は、子馬が感染するより早い日齢で評価することが重要である。無作為化盲検実験デザインを用いて、PNAGに対する母親へのワクチン接種が、生後6日目のR. equiの気管支内感染から子馬を守るかどうかを評価した。牝馬へのワクチン接種自体は、子馬の肺炎の発生率を有意に減少させなかった。しかし、PNAGに対する抗体またはPNAGへの補体成分1qの沈着に対する抗体の活性は、肺炎を発症した子馬よりも肺炎を発症しなかった子馬の方が有意に高かった(P < 0.05)。結果は年によって異なり、2018年は保護の証拠があったが、2020年は認められなかった。認可されたワクチンがない場状況では、このワクチンの投与方法と投与量を最適化するための努力を含め、PNAGワクチンのさらなる評価が必要である。重要性 R. equiによって引き起こされる肺炎は、認可されたワクチンが不足している世界中の子馬の病気と死亡の重要な原因である。子馬は出生後、環境中のR. equiに曝露され、分娩後すぐに感染し、その日齢では自然免疫応答と獲得免疫応答が減少している。本研究の結果、PNAGを認識する抗体の活性が高いことがR. equi肺炎に対する防御と関連していることが示され、R. equi肺炎から子馬を守るためには、PNAGに対する母親のワクチン接種をさらに最適化する必要があることが示唆された

                  ー

    う~ん、ちょっと眉唾;笑

    子馬はとても早い日齢でR.equi強毒株に暴露され感染が成立してしまう。

    それより早くワクチンで免疫を与えようにも、子馬の免疫能は低い、たぶん、かなり。

    母馬にワクチン接種して初乳を介して子馬に免疫を与える方法はある(ロタウィルスでは行われている)が、初乳で移行する成分では、子馬をR.equiから守るのに十分ではない、

    あるいは、ほとんど期待できるような成果はでそうにない。

                ー

    そもそも、強毒株と言えども新生子馬以外はまず病気を起こさないのに、新生子馬だけはどうして感染してしまうのか?

    もう少し、新しい文献を探しながら考えてみたい。

              ////////////////

    腸管手術後の馬に持続点滴の追加を準備する。

    ゼンヤクの補液ボトルの首をカットしているのはパイプカッターなのだそうだ。

    けっこう力が要る。

    そもそも、ヒト用の輸液剤のようなソフトパックの方が、

    開けやすい、

    ゴミの容積が少ない、

    と思うのだけど。

    置いて、立つ必要があるの??

             ー

    大動物の獣医さんは、家畜共済の保険給付の関係で人体薬をほとんど使わない人も多い。

    補液剤は、大動物用よりヒト用の方がずっと安い。

    ご存じか?