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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

仔馬をR.equi肺炎から守るには高度免疫血漿は1㍑より2㍑の方が優れていた

2024-07-15 | 学問

高度免疫血漿を新生仔馬に投与してR.equi肺炎から守るには、血漿は2㍑必要か?

1㍑ではダメか?

これはCohen先生たちのグループの調査研究。

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Transfusion With 2 L of Hyperimmune Plasma is Superior to Transfusion of 1 L or Less for Protecting Foals Against Subclinical Pneumonia Attributed to Rhodococcus equi

J Equi Vet Sci. 2019 Aug:79:54-58.

Transfusing foals with Rhodococcus equi hyperimmune plasma (REHIP) is a standard practice at many horse-breeding farms to help prevent R. equi pneumonia. At many large breeding farms, pneumonia is most commonly recognized as subclinical based on thoracic ultrasonography findings. The efficacy of REHIP transfusion and the impact of the volume of plasma transfused for reducing the cumulative incidence of subclinical R. equi pneumonia are unknown. A retrospective cohort study was conducted among foals born and residing through weaning at a large breeding farm. Foals were transfused with either 0 L (n = 2 foals), 1 L (n = 85 foals), or 2 L (n = 62 foals) of REHIP within 36 hours of birth. Volume transfused was principally based on intended use of the foals. All foals at the ranch were routinely screened using thoracic ultrasonography at 5, 7, and 9 weeks of age to detect subclinical pneumonia attributed to R. equi based on farm history. The proportion of the foals receiving < 1 L REHIP that developed subclinical pneumonia (32%; 26/82) was significantly (P = .0068; chi-squared test) greater than that among foals transfused with 2 L of REHIP (12%; 8/68). Despite the important limitations of this observational study, it provides evidence supporting the need for well-designed clinical trials to evaluate the impact of the use and dose of REHIP for preventing subclinical pneumonia. Reducing the incidence of subclinical pneumonia is important because reducing antibiotic treatment of subclinical cases will decrease selection pressure for antimicrobial resistance in R. equi.

Rhodococcus equi hyperimmune plasma(REHIP)を子馬に輸血することは、R. equi肺炎を予防するために、多くの馬の生産牧場で標準的な方法である。多くの大規模生産牧場では、胸部超音波検査所見に基づいて、肺炎が最も一般的に無症候性ながら認知される。REHIP輸血の有効性と、無症候性R.equi肺炎の累積発生率を低下させるための輸血量の影響は不明である。回顧的コホート研究が、大規模生産牧場で生まれ離乳まで飼養される子馬を対象に実施された。子馬は、生後36時間以内に0 L(n = 2頭の子馬)、1 L(n = 85頭の子馬)、または2 L(n = 62頭の子馬)のREHIPのいずれかを輸血した。輸血量は、主に子馬の使用目的に基づいていた。牧場のすべての子馬は、生後5週、7週、9週齢で胸部超音波検査を使用して定期的にスクリーニングされ、牧場の病歴に基づいてR.equiに起因する無症候性肺炎が検出された。無症候性肺炎を発症した1LのREHIP<投与された子馬の割合(32%;26/82)は、2LのREHIPを輸血された子馬の割合(12%;8/68)よりも有意に高かった(P = 0.0068;カイ二乗検定)。この観察研究には重要な限界があるが、無症候性肺炎を予防するためのREHIPの使用と用量の影響を評価するための適切にデザインされた臨床試験の必要性を裏付けるエビデンスを提供している。無症候性肺炎の発生率を減らすことは、無症候性症例の抗生物質治療を減らすことで、R. equiの抗菌薬耐性の選択圧が低下するため、重要である。

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高度免疫血漿を投与しない仔馬を2頭しか設定できなかったのは残念。

野外試験ではしばしばこういう残念が起こる。

高度免疫血漿を自作して仔馬1頭に2㍑を割り当てるのはとてもたいへん。

血漿を2㍑作るなら、供血馬から4㍑近く採血しなければならない。

USAでは高度免疫血漿が市販されているので、費用さえかければ購入できるけど。

しかし、1㍑で効果があるならそうしたい、というのは理解できる。

新生仔馬の体重は50-60kgほど。血液量は4㍑~6㍑ほど。

そこへ2㍑入れるのは、入れられる方にも負担になる。

この牧場では、1㍑、2㍑投与した仔馬たちのR.equi肺炎発症率はそれぞれ32%、12%。

ひどい発症率だ。

こういう牧場でこそ高度免疫血漿が予防効果を示してもらいたいが、

こういう牧場では、高度免疫血漿だけでは仔馬を守り切れないのかもしれない。

             ー

そして投与時期はできるだけ早く。この試験では生後36時間以内に投与している。

R.equi感染多発牧場では、仔馬は生後かなり早い時期にR.equi強毒株に曝露されている。

今、世界の研究者たちはそう考えているということだ。

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人を怖れないエゾシカ、の若い個体。

誰かがシカせんべい与えたわけではないと思う。

たまにこういう大胆な個体が現われる。

それがヒグマだと悲劇が起こりかねない。

 


市販のR.equi高度免疫血漿製剤は仔馬をR.equi肺炎から守らなかった

2024-07-13 | 学問

R.equi高度免疫血漿の予防効果については懐疑的、あるいは否定的な研究結果も報告されている。

Evaluation of a commercially available hyperimmune plasma product for prevention of naturally acquired pneumonia caused by Rhodococcus equi in foals

J Am Vet Med Assoc 2002 Jan 1;220(1):59-63

Objective: To determine efficacy of a commercially available hyperimmune plasma product for prevention of naturally acquired pneumonia caused by Rhodococcus equi in foals.

Design: Randomized clinical trial.

Animals: 165 foals.

Procedure: Foals were randomly assigned to 1 of 2 groups (hyperimmune plasma or nontreated controls). Foals with failure of passive transfer (FPT) of immunity were treated with hyperimmune plasma and evaluated as a third group. Foals that received plasma were given 950 ml between 1 and 10 days of age and between 30 and 50 days of age. A tracheobronchial aspirate was obtained from foals with clinical signs of respiratory tract disease for bacteriologic culture.

Results: A significant difference in incidence of pneumonia caused by R equi in foals with adequate passive transfer was not detected between foals that received plasma (19.1%) and nontreated foals (30%). Of 13 foals without FPT that received plasma and developed pneumonia caused by R equi, 12 developed disease prior to administration of the second dose of hyperimmune plasma. Incidence of undifferentiated pneumonia of all causes was not different between groups.

Conclusion and clinical relevance: Intravenous administration of the commercially available hyperimmune plasma was safe, and the product contained high concentrations of anti-R equi antibodies. However, within this limited foal population, the difference in incidence of pneumonia caused by R equi observed between foals that received plasma and control foals was not significant.

 

目的: 子馬のRhodococcus equiによって引き起こされる自然獲得性肺炎の予防に対する市販の高免疫血漿製品の有効性を調べること。

設計: 無作為化臨床試験。

動物: 165頭の子馬。

方法: 仔馬は2つのグループのうちの1つ(高免疫血漿または未治療の対照)にランダムに割り付けられた。免疫の受動的伝達(FPT)に失敗した子馬は、高免疫血漿で治療され、第3のグループとして評価された。血漿を投与された子馬には、1〜10日齢と30〜50日齢の間に950mlが与えられた。気道疾患の臨床徴候を有する子馬からは、気管支吸引液を細菌培養のために採取した。

結果: 血漿を投与された子馬(19.1%)と未治療の子馬(30%)の間で、適切な受動的移行を伴う子馬におけるR equi肺炎の発生率の有意差は検出されなかった。血漿を投与され、R equi肺炎を発症したFPTのない13頭の子馬のうち、12頭は2回目の高免疫血漿投与前に疾患を発症した。あらゆる原因による未同定肺炎の発生率は、グループ間で差がなかった。

結論と臨床的関連性: 市販の高度免疫血漿の静脈内投与は安全であり、製品には高濃度の抗R.equi抗体が含まれていた。しかし、今回の限られた子馬集団内では、血漿を投与された子馬と対照の子馬の間で観察されたR equi肺炎の発生率に有意差はなかった。

            ー

衝撃的否定的成績。

165頭の仔馬が試験期間である2000年にこの牧場で生まれた。

3頭はR.equiと無関係な問題で死亡したので除外した。

14頭はFPTがあり、別なグループとした。

148頭のFPTがない仔馬のうち、68頭は高度免疫血漿投与を受け、

80頭は非投与対照とした。

高度免疫血漿投与群68頭のR.equi肺炎は19.1%、その他の肺炎は33.8%

非投与群80頭のR.equi肺炎は30%、その他肺炎は40%

FPT群14頭のR.equi肺炎は35.7%、その他肺炎は50%

(ずいぶんその他の肺炎が多い。Florida州Ocalaのサラブレッド牧場で、劣悪な衛生状態とは思えないのだが・・・・・)

165頭のサラブレッドを生産する大牧場なのだが、R.equi肺炎の発症率、そしてR.equi肺炎が診断された中央値が36日齢であったことからも、相当な多発牧場であり、仔馬たちは早期に高濃度の曝露を受けているのだろう。

これほどの曝露を受けると、高度免疫血漿でR.equiに対する免疫を与えても予防効果は出ない、のかも知れない。

            ー

考察の最後に書かれている。

” 多発牧場でR.equiの抑制のために用いるのであれば、

高度免疫血漿の投与は抑制のための他の手法、感染曝露を減らすこと、

そして感染仔馬の早期発見と治療などと組み合わせるべきだ ”

私も異論はない。

高度免疫血漿を投与すればR.equiの問題が解決する、とはいかないだろう。

そして、感染仔馬を早期に発見し治療することで、多発牧場から散発牧場へ、そして非発生牧場へ牧場環境を清浄化することが重要なのだと思う。

            ー

この野外調査での投与量は950ml。

この量は十分ではなかったのか・・・・・?

500mlくらいで成果をあげるなら、作るのも、投与するのも楽なのだけど。

            ー

それと使っているのは市販の高度免疫血漿だ。死菌ワクチンで免疫しているのだったか・・・・

生菌で免疫しているより免疫応答に乏しい部分があるかもしれない。

高度免疫血漿で仔馬に与えられるのはIgGだけではなく、免疫を活性化させる炎症性サイトカイン、フィブリノーゲン、補体、その他もろもろの、成馬がR.equiの攻撃を受けたら反応して体内に創り出す成分が大量に含まれている、はず。

そこに、死菌ワクチンと生菌による刺激では違いがあるかもしれない。

          /////////////

大雪高原温泉を訪ねた。

周囲のトレッキングは、ヒグマ情報センターでクマに関するレクチャーを受けてからでないと行けないことになっている。

ここのヒグマとの付き合い方は特有だ。

「ヒグマは居ますよ。

きのうは6頭いました。

でも、人が注意していればクマは悪さはしません。

事故があったこともありません。」

           ー

林道を10kmほど入って行かないと行けない山奥。

一般の観光客はまず来ない。

ゴミを捨てるヤツや、クマに餌を与えるバカもまず来ないから成り立つ管理方法かもしれない。

仲良くしたいとも、仲良くできるとも思わないけどね;笑

 

 

 

 


R.equi耐性株は生産牧場の環境に保存される

2024-07-09 | 学問

先に紹介したR.equi耐性株がケンタッキー中心部で増えているという1995から2017年の調査成績。

同じグループが2018年には前向き調査研究(実験を計画しておいてから採材・調査を進める)を行っている。

            ー

Identification of macrolide- and rifampicin-resistant Rhodococcus equi in environmental samples from equine breeding farms in central Kentucky during 2018

Vet Microbio (2019) 232; 74-78

Rhodococcus equi causes severe pneumonia in foals and is most often recognized in people as an opportunistic pathogen. Longitudinal studies examining antimicrobial-resistant R. equi from environmental samples are lacking. We hypothesized that antimicrobial-resistant R. equi would be detectable in the ground (pasture soil or stall bedding) and air at breeding farms with previous documentation of foals infected with resistant isolates, and that concentrations of resistant isolates would increase over time during the foaling season. In this prospective cohort study, ground and air samples were collected from stalls and paddocks in January, March, May and July of 2018 at 10 horse-breeding farms with history of foal pneumonia attributed to macrolide- or Rifampicin-resistant R. equi. Environmental samples were cultured in the presence and absence of macrolides and Rifampicin to select for resistant organisms. Data were analyzed with linear mixed-effects and Hurdle models. Concentrations of total R. equi in bedding or air of stalls were significantly (P < 0.05) higher in January than other months. The proportion of resistant R. equi in soil samples from paddocks was significantly (P < 0.05) higher than stall bedding during all months. For each month, air samples from paddocks had a significantly (P < 0.05) higher proportion of resistant isolates than those from stalls. Fifty-five percent of resistant soil isolates and 34% of resistant air isolates were considered virulent by identification of the vapA gene. Concentrations of resistant R. equi isolates did not increase over time during the foaling season. Antimicrobial-resistant R. equi can persist in the environment at farms with a history of pneumonia caused by resistant R. equi infections, and exposure to resistant isolates in paddocks and stalls appears stable during the foaling season. Resistant isolates in the environment not only pose a risk for disease but also can serve as a repository for dissemination of resistance genes.

Rhodococcus equiは子馬に重度の肺炎を引き起こし、ヒトでも日和見病原体として最も頻繁に検出される。環境サンプルから抗菌薬耐性R.equiを縦断検出した縦断的研究は不足している。われわれは、耐性菌に感染した子馬についての以前の文献から、抗菌薬耐性R.equiは、生産牧場の地面(牧草地の土壌または馬房の敷料)と空気中で検出可能であり、耐性分離株の濃度は子馬の季節に時間の経過とともに増加するという仮説を立てた。この前向きコホート研究では、2018年1月、3月、5月、7月に、マクロライドまたはリファンピシン耐性R.equiに起因する子馬肺炎の病歴のある10の馬生産牧場で、馬房とパドックから地上および空気のサンプルが収集された。環境サンプルをマクロライドおよびリファンピシンの存在下および非存在下で培養し、耐性菌を選別した。データは線形混合効果モデルとハードルモデルで分析した。敷料あるいは馬房の空気中の総R.equiの濃度は、1月に他の月よりも有意に高かった(P < 0.05)。パドックの土壌サンプル中の耐性R.equiの割合は、すべての月で馬房の敷料よりも有意に高かった(P < 0.05)。各月について、パドックからの空気サンプルは、馬房からのものよりも耐性分離株の割合が有意に高かった(P < 0.05)。耐性土壌分離株の55%および耐性空気分離株の34%は、vapA遺伝子の同定により病原性があると考えられた。耐性R.equi分離株の濃度は、子馬の出産期に経時的に増加しなかった。抗菌薬耐性R.equiは、耐性R.equi感染による肺炎の病歴のある牧場の環境中に残留する可能性があり、パドックや馬房での耐性分離株への曝露は、子馬のシーズン中に安定していると思われた。環境中の耐性分離株は、病気のリスクをもたらすだけでなく、耐性遺伝子の播種の保存場所としても機能している。

              ー

1月2月などの早生まれはR.equiに罹りにくいのではないか?と考えられている。

気温の上昇とともに牧場の土壌中でR.equiが増殖することは知られている。

先に生まれた仔馬たちがR.equiに感染していたら、その中に新たに生まれてくる弱い新生仔馬が容易に感染して発症、あるいは重症化することも考えられる。

それで、抗菌剤耐性R.equiについて生産牧場で調査を行ってみたけれど・・・・

              ー

1月が衛生的だとはいう証拠は得られなかった。

              ー

仔馬が感染するのは、馬房の中なのか、パドックなのか、というのもぜひ知りたいポイントだ。

どの月も、パドックからの空気サンプルが、馬房からの空気サンプルより耐性分離株の率が高かった、というのも衝撃。

やはりR.equiは本来土壌菌であり、牧場の土壌を感染仔馬の糞便が汚し、そこから仔馬が感染するのだろうか?

              ー

牧場環境は、耐性遺伝子だけでなく、強毒株の保存場所 repository として働く、と言える。

牧場のR.equi感染仔馬が居なくなったら、パドックの土を入れ替え(深さ20cmが推奨されている)

厩舎を掃除し、洗浄し、消毒しましょう。

来年の仔馬を守るために。

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会議と総会の(あと3次会まで連れて行っていただいた)翌日。

雨だったが、前から行ってみたかった浜離宮を訪ねた。

羽田へ着陸するとき、眼下に大きな庭園が見えるので興味があった。

将軍さまのお庭であり、保養所であり、迎賓の場であった。

東京を歩いて、外人観光客が多いのに驚いた。

円安、なんだね。

馬の獣医さんが海外研修に出にくくなった、というのも会議で出ていた。

こう円安じゃね。

 

 


R.equiに対してmRNAワクチンは有効か?

2024-06-25 | 学問

2019年に始まり、その後、世界中を席巻したCOVID19。

当初の病原性の強いウィルス株から世界中の人を救ったのはmRNAワクチンだった。

子馬のR.equi感染症でもmRNAワクチンは研究されている。

Intramuscular but not nebulized administration of a mRNA vaccine against Rhodococcus equi stimulated humoral immune responses in neonatal foals

R.equiに対するmRNAワクチンの気管内噴霧ではなく筋肉内接種は、新生子馬に液性免疫応答を引き起こした

これもCohen先生が名を連ねている研究。

Am J Vet Res 2023, 85(2):ajvr.23.09.0208.

Abstract

Objective: Design and evaluate immune responses of neonatal foals to a mRNA vaccine expressing the virulence-associated protein A (VapA) of Rhodococcus equi.

Animals: Cultured primary equine respiratory tract cells; Serum, bronchoalveolar lavage fluid (BALF), and peripheral blood mononuclear cells (PBMCs) from 30 healthy Quarter Horse foals.

Methods: VapA expression was evaluated by western immunoblot in cultured equine bronchial cells transfected with 4 mRNA constructs encoding VapA. The mRNA construct with greatest expression was used to immunize foals at ages 2 and 21 days in 5 groups: (1) 300 μg nebulized mRNA (n = 6); (2) 600 μg nebulized mRNA (n = 4); (3) 300 μg mRNA administered intramuscularly (IM) (n = 5); (4) 300 μg VapA IM (positive controls; n = 6); or (5) nebulized water (negative controls; n = 6). Serum, BALF, and PBMCs were collected at ages 3, 22, and 35 days and tested for relative anti-VapA IgG1, IgG4/7, and IgA activities using ELISA and cell-mediated immunity by ELISpot.

Results: As formulated, nebulized mRNA was not immunogenic. However, a significant increase in anti-VapA IgG4/7 activity (P < .05) was noted exclusively in foals immunized IM with VapA mRNA by age 35 days. The proportion of foals with anti-VapA IgG1 activity > 30% of positive control differed significantly (P = .0441) between negative controls (50%; 3/6), IM mRNA foals (100%; 5/5), and IM VapA (100%; 6/6) groups. Natural exposure to virulent R equi was immunogenic in some negative control foals.

Clinical relevance: Further evaluation of the immunogenicity and efficacy of IM mRNA encoding VapA in foals is warranted.

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VapAをコードしたmRNAワクチンは、気管内噴霧ではダメだったけど、筋肉内接種したら、VapAに対する免疫系応答を誘発した。

このワクチンの免疫原性と効果を子馬でさらに評価することが必要だ。と述べている。

期待したいところだが、R.equi肺炎発症牧場の子馬が感染するのはとても早い日齢だろうと考えられている。

それより前に、子馬にVapAに対する免疫をつけさせるのは、このmRNAワクチンでも難しいのではないだろうか・・・・・

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COVID19から人々を守ったのはmRNAワクチンだけではなかった。

当初WHOも推奨しなかったマスク装着がとても予防効果を上げた。

手洗いと手指の消毒も有効だった。

街中を消毒して回っている光景がworld news で写っていたが、あれは無意味だっただろう。

隔離や人の行動制限をほとんどしなかった国では初期の死亡者が多かった。

やがて、流行するウィルス株の病原性が弱くなっていった。

そして、もう5年。

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SDGsへの転換とか、CO2削減にとっては大きなチャンスだったかもしれないのに、CO2排出量はほとんど減らなかった。

それより経済の持続性が優先されたためだ。

命に関わらない産業の保護にも莫大な費用が使われた。

           ー

話がそれた;笑

新生子馬に直接ワクチンを投与してR.equi強毒株に対する免疫を賦活して子馬を守ろう、というのはmRNAワクチンを使っても厳しいのではないか、と私は思う。

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シャクナゲ

痙攣毒がある有毒植物だそうだ。


子馬のR.equi感染を早期発見するためにSAAは有効か?

2024-06-21 | 学問

私たちは、1990年代に子馬のR.equi感染症の血清診断としてELISAが使えることを報告した。

その中で、30日齢から45日齢で発症する子馬が最も多く、子馬が生後1ヶ月以内に感染しているのであろうことを指摘した。

血清診断でR.equi感染を疑った子馬の多くからR.equi強毒株が採れてくることも報告した。

R.equi感染多発牧場で、30-45日齢の子馬の血液検査がR.equi感染の早期発見に役立つことを示した。

R.equi高度免疫血漿を作り、多発牧場の子馬に投与することでR.equi感染の予防に役立つことも示した。

気管洗浄液からのR.equiの分離が、R.equi肺炎の確定診断として使える可能性も示した。

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それから30年。

日齢を決めた血液検査によるR.equi肺炎の早期発見は「ロドチェック」と呼ばれ、R.equi感染の抑制に役立ってきたと思っている。

急性炎症マーカーとしてSAAが使えるようになってからは、さらに検出感度が増したと思っているが、臨床のデータと突き合わせることができず、まとまった評価はしないままだ。

海外では、いくつか早期診断方法、スクリーング方法としてSAAを使った報告が行われている。

その環境とか、研究の目的とか動機とか、研究者がやるか臨床家がやるかとか、かなり異なった評価になっている・・・・・

           ー

Serum amyloid A (SAA) as an aid in the management of infectious disease in the foal: comparison with total leucocyte count, neutrophil count and fibrinogen

Equine Vet J. 2002, 34(7),693-698

権威あるEVJに載った報告で、入院した子馬のSAAを測ったら、感染症の子馬ではSAAが高かったよ。というだけの報告。

全体で25例だし、肺炎は6頭。

早期発見に使えるか、という話ではない。

ロド肺炎でSAAがよく動き、鋭敏な炎症マーカーのは今は生産地の獣医さんはよく知っている。

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Rhodococcus equi pneumonia in foals: an assessment of the early diagnostic value of serum amyloid A and plasma fibrinogen concentrations in equine clinical practice

Vet J. 2015 203(2), 211-208

こちらは2015年になってのイタリアからの報告。

馬の臨床実践における、子馬のロドコッカス肺炎についての、SAAと血漿フィブリノーゲン濃度の早期診断法としての評価

毎週検査してもSAAはR.equi肺炎の早期診断のためのマーカーにならなかった。

しかし、R.equi肺炎の臨床徴候があったときには、SAAにより感染の進行と治療効果のリアルタイムの指標を臨床家は得ることができる。

併行して行ったのは胸部超音波検査。

静かに、(SAAが上昇するような)炎症も起こさずに肺膿瘍を作っている子馬がいる、ということだろうか。

1週齢から毎週SAAを測定しても肺膿瘍形成を検出できない、ということか・・・

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Evaluation of serum concentration of acute-phase proteins (haptoglobin and serum amyloid A) in the affected Arabian foals with rhodococcosis

Vet Med Sci. 2023, 9(1) 144-149

ロドコッカス症のアラビア子馬の急性相タンパク(ハプトグロブリンとSAA)の血清中濃度の評価

これは2023年のイランからの報告。

感染子馬のSAAは2715。これは良いとして、健康な子馬のSAAは1640。

気管洗浄もしていて、菌の検出はPCRも使っている。SAAの測定はELISA。

”健康”とされている子馬の状態が心配になる;笑

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SAAは感染している子馬を”早期”に発見するためには役立たない、ということか・・・

”早期” early の定義が重要。

周囲に気管支肺炎がない小さい肺膿瘍、あるいは肉芽腫、それも生後3-4週目あたりで見つけられれば良いのだが。

長くなるので、続く、たぶん。

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地元の住宅地の周りに出没していたクマは捕獲された。

箱ワナにかかったのかな。

”殺”処分されたのだろう。

去年生まれて親離れしたクマではないだろうか。

縄張りも持たず、自分より大きなクマに追われ、餌もない里に迷い込んだのだろう。

痩せていた、そうだ。

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変わり葉ヤマボウシの”花”は大きく白くなった。

ホントは花じゃないんで、咲いてからも成長し色が変わるんだな。