goo blog サービス終了のお知らせ 

馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

Caslick's vulvoplasty

2013-06-02 | 繁殖学・産科学

  Pa253188 繁殖雌馬の陰唇縫合。

「ケツ縫い」などと呼ばれているようだが、そんな呼び方は感心しない。

気膣の治療として行われている。

分娩で裂けたり、加齢で陰部がへこんで膣に空気が入るようになると子宮内膜炎を起こし易く、さらには尿膣になったりもするので、陰部が小さくなるように陰唇を切除したあと縫合する。

生産地の馬獣医師は外科を専門にしていなくても把針器の扱いが上手だ。

外傷縫合がそんなにあるわけではないのに・・・と思っていたが、現実にはこの陰唇再建術が縫合の練習機会になっている。

                         -

この馬で行われるvulavoplasty 陰唇再建術(陰唇形成術?)は、Caslick's operation と呼ばれている。

P6024374どうやらUSAの馬獣医師が考案したらしく、Edward Caslick の名はStedman医学英和辞典にも出ていた。

(右)

残念ながらStedmanが収録された電子辞書では出てこなかった。

割愛されてしまったのかな・・・・・・

だとしたら残念なことだ。

                          /////////////////

ロードカナロア!!

強かったね~

おめでとう!!

                            -

P6014373

オラ、まだ泳ぐのは苦手だ・・・・

漕げないし・・・・

波も怖い・・・・

でも川は好きサ

命の洗濯ってやつだナ


pass away

2013-04-14 | 繁殖学・産科学

Michelle LeBlanc先生が亡くなられたそうだ。Pc011676

2011年に招聘に応えて、日本へ来てくださった

生産地でも大きなテーマである繁殖学について実習と講義と講演をしていただいた。

言葉を交わした獣医師も多かったと思うので、お知らせしておく。

                      -

私は20年前にフロリダ大学へ研修に出してもらったときにLeBlanc先生にお会いした。

若く、元気で、明るい先生で、私も親切にしていただいた。

2011年に来日されたときには、前年大病をされたとのことで、こんな小さい方だったかなと思った。

そして・・・

まだ、逝くには早すぎたように思う。

心よりご冥福をお祈りする。

                      /////////

フロリダ大学で研修していたとき、子宮穿孔を疑う繁殖雌馬が入院していた。

繁殖のチームが担当していて、LeBlanc先生が

「子宮穿孔を疑っているのだけれど確証が得られない」

とおっしゃっていた。

私は、あれほど積極的な治療を行うUSAの大学病院でどうして開腹手術をしないのか不思議に思いながら、様子を眺めていた。

P4124095        -

あれから20年。

うちでは、子宮穿孔の馬は、私が手を出さないでも、

腹腔穿刺で腹膜炎が確定診断され、

子宮内診で穿孔創が確認され、

腹膜炎の原因を修復し、

腹膜炎を積極的に治療するために開腹手術されるようになっている。


第三度会陰裂創

2012-11-13 | 繁殖学・産科学

Pb133271_2 分娩で、子馬の鼻っ面や肢が直腸を突き破り、そのまま押し出されるように娩出してしまうと、肛門括約筋も切れて、直腸と膣がつながってしまう。

種付けできなくなる。

(このまま種付けしようとしても、種馬のぺ〇スが直腸に入ってしまうだろうし、

膣が便で汚れるので子宮内膜炎をおこしやすい)

            -

なんとか縫合してもとのように直腸と膣を分けたいのだが、馬は排便時に直腸にかなりのテンションがかかる。

それで、外科的に修復して癒合させるためには絶食と下剤投与が必要になる。

そのため、秋になって離乳してから手術することにしている。

Pb133273           -

縫い方には、まあいろいろコツがあるのだが、それはまた次の機会に。

癒合させるためには、絶食と下剤投与がたいせつ。

一度でも、あの排便をしたら、縫合糸で縫ってあるだけの直腸壁と膣壁は簡単に裂けてしまう。

糞汁が漏れる孔が開いたら、もう癒合することは望めない。

                               -

かつて、乳牛でも何頭か手術したのだが、酪農地帯の獣医さんはどうしているのだろうか?

牛では馬より珍しいようなので症例報告しようかと思っていたら、

「牛はそのままでも人工授精できるし、受胎します」と言われて、止めた記憶がある。

                        /////////

Pb133270 まよい込んだミソサザイ。

出られなくなってへばっていたので、手でつかんで逃がしてやった。

きれいな声でさえずるらしいが、見た目は小さくて丸っこくて目立たない。

小さな虫をついばむのに適しているのだろうか、とても細くて小さいくちばしが印象的だった。            


仰臥位でのGTCT

2012-06-09 | 繁殖学・産科学

顆粒膜細胞腫GTCTとなった病的卵巣の摘出手術。

仰臥で、乳房と膝ヒダを結ぶ線上を20cmほど交差切開した。

(写真は別症例)

径15cm以上ある卵巣は簡単には術創から出せない。P4021921

最近は遠慮しないで指を突き刺したり、鉗子を突き刺して術創から引っ張り出している。

止血にはたいへん気を使う。

結紮した糸が滑脱したら出血で死んでしまう。

私は腸管手術よりたいへんな手術だと思う。

                         ///////////

馬を見て吠えたり、追いかけたりするようだと、このあたりじゃ犬やってられんゼ。

P6082283


真菌性子宮内膜炎

2012-05-27 | 繁殖学・産科学

P5242166 子宮洗浄したら毛糸玉みたいなものが出てきた。とのことで子宮洗浄液が検体として送られてきた。

毛糸玉みたいなものを、スライドグラスに乗せ、カヴァーグラスで押しつぶすようにして、顕微鏡で観察する。

(右)

カビの菌糸と胞子の塊であることがわかる。

しかし、カビの種類まではわからない。

                          -

P5262179 培養すると細菌のコロニー以外に、毛カビ状の真菌のコロニーが生えてきた。

真菌の発育は細菌より遅いことが多いが、臨床検査ではゆっくり培養して、時間をかけて同定して、というわけにはいかない。

さっさと治療方針を立てて治療を始める必要がある。

        -

コロニーの形態だけでは真菌の種類までは判別できないことが多い。

とくに真菌のコロニーの発育初期にはわかりにくい。P5262178

細菌のコロニーだとコロニーをスライドグラスに塗って、グラム染色して形態と染色性を観察するが、真菌はそうはいかない。

それで、セロファンテープをコロニーに接触させて、そのセロテープをスライドグラスに貼ったものを顕微鏡で観察する。

(右)

これはセロファンテープ法という正式な検査方法だ。

                          -

P5262177 拡大すると、頂嚢と呼ばれる、胞子をくっつける頭が形成されている。

Aspergillus属の特徴だ。

培養を続ければコロニーの中央が緑色を帯びてくるはずだ。

もっともポピュラーなAspergillusであるfumigatusだろう。

                                                                      /////////

今日は、競走馬の腕節の関節鏡手術。

2歳馬の腸炎が入院。

1歳馬の外傷。

Darby !!

まあ、こういうもんだろう。

手術した馬が2頭も出走するなんて、それだけでも光栄だ。

                           -

言うの忘れてた。

ハリーさん、おめでとう!!!!