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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

エイプリル・フールは千”患”万来

2020-04-03 | 日常

朝4時半、目覚めていたが電話で連絡。

子馬が肩まで出たが、そこから出せない難産が来るという。

「行くわ」

                -

「後ろ肢が産道に入ってきているんでしょうね。帝王切開する気もありますか?」と尋ねたが返事はない。

すぐ全身麻酔して、もう死んでいる子馬を胸椎で切胎して、産道に入ってきていた後肢にチェーンをかけて、下半身は反転させて尾位で引っ張り出す。

私は切胎しただけで、あとは指示して若い先生にやってもらった。

30分ほどで娩出させられた。

                -

ところがこの繁殖雌馬は、何度か立ち上がったものの、後肢がしっかりせず倒れてしまう。

陰部もひどく腫れてきた。

昼間で起立介助しながら様子を観たが、やはり立てない。

トラクターで入院厩舎へ運び込んで、経過を観ることにした。

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その間に、

朝は3日間食欲不振が続く繁殖雌馬の診察。

午後、2歳馬喉頭内視鏡検査。

1歳馬の喉頭内視鏡検査と後膝OCDのXray。

2歳馬の去勢。

現役競走馬の浅屈腱炎のPRP療法とキャスト固定の経過超音波検査。2頭。

3歳休養馬の疝痛。結腸便秘。

17歳繁殖雌馬の妊娠末期の疝痛。結腸捻転歴あり。盲腸便秘。

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難産後に起立不能だった初産馬は、夜中に入院厩舎で死んでしまった。

解剖したが、子宮穿孔や動脈破裂はなく、

どちらかと言えば産道の左寄りに出血があるだけ。

臀筋は深部が褪色しているのかもしれない。

子馬が産道に入っていた時間が長かったので、閉鎖神経が圧迫され、後肢への血行が阻害され、

そのことで、起立不能になり、

立てずに苦悶している間に筋変性も起こり、

産道損傷も重なって、外傷性ショックで死亡したのだろう。

 

 


1日何をしていたか思い出せない春

2020-04-02 | 日常

夜中に妊娠末期の結腸捻転の開腹手術。

朝は、繁殖雌馬の外傷から。

”あがり馬”で敏感でなかなかたいへんだった。

              -

別な上がり馬は、疝痛で来院。

来院したら落ち着いていて、大丈夫そうだった。

              -

ちょっと時間が空いたので診療室を掃除。

              -

昼、ホルスタインの子宮捻転の難産。

すぐあと予定の頚椎症の腰痿のX線撮影。

次いで、予定の3歳馬の腕節骨折の関節鏡手術。

そのあと、浅屈腱炎の経過治療の予定だったが、1歳馬の疝痛が来院するので予定変更。

1歳馬は大結腸左背側変位だった。

              -

合間に、硬膜下血腫と脊髄腔内出血の当歳馬の剖検。

入院馬(小結腸壊死)の浣腸と下剤投与。

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2019年度が終了。

2020年度になる。

2020年はすでに歴史に残る年になってしまった。

奮闘されている医療関係者に敬意と感謝を。

そして、自分と他人を守るための決断と行動と自制を。

               -

いつかこの災厄が終息したら、生活や価値感や社会が変わるだろう。

そのために、この災厄の中で考えたい。

 

 


オートクレーヴ・ダウン  診療実績2018 吸入麻酔のその他の手術

2020-01-12 | 日常

高圧蒸気滅菌機 オートクレーヴ がダウンした。

温度センサーがいかれたらしい。まだ更新して2年も経っていない。

次から次へと冷める暇もなく使うから・・・・と言うけど、

雇い主(われわれ)も1頭終わったらすぐ次の手術するんだゾ!

いちいち休ませてくれとは何ごとだ!

でもお前の先代も短命だったな・・・・

ゴメン、少しは休憩させるようにする・・たぶん・・手術が混んでないときは・・

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2018診療実績の続き、

吸入麻酔してやったその他の手術としては、

角舌骨摘出手術 8  この年、とても多かった。

肢軸異常 7 吸入麻酔してやったのは両肢とか、中足骨の全長にわたる骨膜剥離との併用とかか?

陰睾去勢 5 これは手だけ腹腔へ入れる準開腹手術。

Bone Flap 5 これは最近は立位で、大きな円鋸しているのが多いかも。

眼科手術 3  そのうち眼球摘出が2

鼠径ヘルニア 2 これは新生子馬

喉嚢真菌症のマイクロコイル塞栓術 1 これはずいぶん減った。理由はわからない。

喉嚢真菌症動脈結紮 1

副鼻腔腫瘍摘出 1

臍整形 1

骨感染搔爬 1

            -

吸入麻酔するのに抵抗はなくなった。

手術時間を気にしないで良い手術をした方が好い。

手術台に乗せてやるので、術者のポジションも楽。

手術室でやるので衛生的。無影灯の下でやるので明るい。

血ガス、心電図、血圧、呼吸などをモニターしながらやるし、点滴しながらなので、状態の変化に対応しやすい。

ただし覚醒はプロポフォール麻酔の方が良質だ。

                -

1/29 恒例の那須の研修で、今年も骨折内固定をやります。

牛の長骨骨折プレート固定のテーブルもひとつセットします。

牛や動物園の先生方もどうぞご参加して、骨折プレート固定の練習してください。

先日の雪の朝。

 

             

 

 

 


執刀はじめはTiebackから

2020-01-08 | 日常

私は6日が仕事はじめだった。

Tieback&cordectomyでスタート。

翌日も、午前中Tieback&Cordectomy、午後はTieforward と喉鳴りの手術で今年はスタートした。

今日は、関節鏡手術初め。飛節のOCDだった。

                  -

2018年は

飛節の関節鏡手術が 122件、で最多。

次いで 腕節 78件、これは育成馬、競走馬のchip fractutre だ。

球節が 24件。

後膝が 6件。これは骨嚢胞 bone cyst をscrew固定するようになったので減った。

種子骨 4件。

腱鞘鏡 8件。

細菌性関節炎の関節鏡手術が1件。

                   -

一時、飛節より腕節の累計手術数が多くなった時期があった。

しかし、2018年のペースで行くと、圧倒的に飛節が多くなるだろう。

腕節の手根間関節の手術が相対的には減ったように思う。

競走馬としての予後が思わしくないのかもしれない。

                //////////////

こんなに雪が少ない年は初めてじゃないだろうか?

除雪は楽だが、馬の蹄には良くないだろう。

蹄が磨り減る。痛くなる。”砂のぼり”も増えるだろう。

成長期の骨にも良くないと思う。

どうなってんの?

 

 


楽勝にはならない年末の一日

2019-12-28 | 日常

その日は午前と午後にscrewを1本ずつ入れるだけで、楽勝の予定だった・・・・

午前中はP2の底側突起の関節軟骨下嚢胞状病変。

こんなところに狙ってscrewを入れるのは簡単じゃない。

昼近くまでかかった。

          ー

午後はやり慣れた大腿骨内顆。

Cystの位置が好発部位よりわずかに軸側に寄っている。

角度が難しい。

その手術開始前、黒毛和種の難産・帝王切開の依頼。

馬の麻酔覚醒起立に1人、手術の片付けとあと1頭の予定の診療に1人、そして・・・

しょうがない、私1人で牛の帝王切開をする。

          ー

初産の黒毛。分娩予定日より5日遅れている。そのせいではなく胎仔が大きすぎるとのこと。

そのまま帝王切開する。

牛の帝王切開を手術するのは私は数年ぶりだったが30分ほどで終わらせる。

繁殖雌馬の疝痛も来るのだ。

          ー

帝王切開の片付けもそこそこに、繁殖雌馬の開腹手術の始まりを手伝う。

しかし、ひどいチアノーゼ。

気管チューブや麻酔器を確認するが問題ない。

なぜだ?

このチアノーゼでは生命活動は続かない。

心停止した。

フラット。

朝から疝痛症状を示していて、朝も心拍が100以上だったとのこと。

来院してもチアノーゼがあった。しかし、PCVは50、乳酸値7mmol/l。

超音波画像で結腸壁に肥厚があり、開腹手術することになったのだが・・・

あ~心疾患か?

          ー

剖検で、心臓の横幅が正常の倍以上になっていた。

肝臓は黒く鬱血しひどく大きい。結腸、盲腸ほかも水腫性に肥厚し、腎臓の周りにも膠様浸潤がある。

鬱血性心不全とでも呼ぶべき状態。

とても治療できるような病態ではなかったのだが、前々から複数の獣医師が診ていながら診断できなかったのは残念なことだ。

          ー

というような年の暮れ。

距骨骨折の馬はダメになった。

フルリムキャストを巻く、さらには脛骨遠位にTransvers Pin Cast を付けるかが方法だったかもしれないが、

それはそれでリスクがある。

というような年の暮れ。