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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

治療の遅れがすべて手遅れになるわけではないが・・

2020-07-20 | 日常

朝、子牛の焼却の受け入れの依頼。

腸捻転だと思われるが、手遅れで、診察している間に死んでしまったのだそうだ。

                   -

朝の手術は3歳競走馬の腕節骨折の関節鏡手術。

橈骨遠位外側と中間手根骨近位の骨折だったが、すでにDJD変形性関節症を起こしている。

道営競馬で勝っていて、冬の間岩手競馬で走り、今は道営に戻ってきたが成績はぱっとしなくなっている。

岩手で骨折していたのだろう、と調教師さんの弁。

さもありなん。

橈骨遠位の骨片はひどく大きかった。

折れたときにはひどく腫れただろうに。

                   -

続いて、13歳繁殖雌馬の慢性蹄葉炎の深屈腱切断手術。

2年前に右前の深屈腱を切っている。

右前の蹄骨は良い角度で維持されている。

左前はひどくローテーションしてしまい、蹄骨の先は磨り減っている。

深屈腱切断は蹄骨の形状が維持されているうちにやった方が良いのだが・・・

                   -

午後、生後3ヶ月弱の子馬の球節内反の肢軸矯正single screw 手術。

右前と左後。

球節の肢軸矯正は生後2ヶ月までには判断して手術した方が良い。

2ヶ月過ぎると効果がないわけではないが、効果が弱く、矯正されるのに時間がかかる。

                   -

2歳競走馬の上腕二頭筋滑液嚢炎。

左前の球節に細菌性関節炎を起こして長期間治療していた馬。

球節が落ち着いて治療をやめて放牧していたら、今度は肢が前に出なくなった。

超音波で観たら、上腕二頭筋の滑液嚢にフィブリンがあるが液の増量はひどくない。

しかし、上腕二頭筋の腱自体が変形し、内部に液が溜まっているように見える箇所がある。

とてもneedle to needle で洗浄して効果があるとは思えない。

全身麻酔して、関節鏡を入れて内部を観察し、フィブリン塊をつかみ出して、洗浄することにする。

関節鏡を滑液嚢bursa に入れると滑液嚢鏡手術 bursoscopy ということになる。

やはり、上腕二頭筋腱は裂けており、滑液嚢内にはフィブリンが張り付いていた。

おそらく、球節の細菌性関節炎を治療していた時期から上腕二頭筋滑液嚢にも感染があり、

症状は球節の痛みにマスクされていたのだ。

球節の感染が落ち着いて抗生物質治療を中止したら、上腕二頭筋滑液嚢炎が悪化した、のだろう。

                       -

夕方、6時半。

離れた地域から電話。

重種馬の子馬が午前10時から疝痛をしている、とのこと。

5月初めの生まれで、今月にはいって3回目の疝痛。

2回はイベルメクチンで駆虫している、とのこと。

連れて来るなら診ますけど、

子馬は腸管手術しても癒着しやすいし、

まだ家畜共済に加入していない子馬の手術は治療費が高くなるし、

腸捻転を手術するには時間が経ちすぎているし、

子馬が何度も疝痛を起こすというのはおかしくて、何か病気を抱えている可能性がある、

と説明する。

もう疝痛を見つけてから8時間だ。

その間に獣医師も診察、治療している。

来院するのに4時間はかかる地域だ。

遅いよ。遅すぎる。

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朝、来客。

以前こちらで働いていたこともある獣医さん。

器用で機転が利いて、判断が早くて熱心で優秀な獣医さんだったが、もう辞めて転職すると言う。

多頭数、大規模化している酪農・畜産の中ではもう個体診療させてもらえないとのこと。

                     -

異常を見つけた初期に、「治して欲しい」と言われないと私たちの”仕事”は成り立たない。

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巣にいたりもするけど、

電線で休んでいたりもする。

もちろん撮れない速さと軌跡で飛びまわっている。

アブ出てきたよ。

頑張ってくれ。

 

 

 

 


繁殖シーズンはお終いだと勝手に宣言してしまおう

2020-06-13 | 日常

1st

朝、鼻のとおりが悪く、呼吸が苦しい当歳馬の診察。

内視鏡検査して、触診して、X線撮影して。

鼻中隔が変形している。

手術を検討することにした。

              -

2nd

上腕骨粉砕骨折していた子牛が、腕節が拘縮しうまく患肢を使えない。

副手根骨につながっている尺側手根伸筋と尺側手根屈筋を切断し、

腕節と球節を思いっきり伸展させながらキャストを巻いた。

子牛は肢を前へ振り出しながら、歩いて帰っていった。

                 -

3rd

眼が黄色く濁って、前眼房にフィブリン塊があるミニチュアポニーの眼の診察。

超音波で硝子体部が血液で埋まっているのが見えた。

眼を温存するのは難しいだろう。

                 -

4th

右側の喉頭麻痺の2歳の診察。

超音波で軟骨の形状を診て、4BAD(第4鰓弓欠損)ではなさそうだった。

右側のTiebackをやってみることになる。

                 -

5th

午後、10歳になる乗馬の去勢。

すっかり雄化して扱いがたいへんになったようだ。

麻酔から覚めたら抑えが利かないで、勝手に出て行った;笑

                 -

6th

続いて乗馬になるアングロアラブとクォーターホースの中間種の去勢。

陰睾とのことだったで手術台に乗せて吸入麻酔するが、片側が鼠径部陰睾だっただけだった。

                 -

7th

1週間前に結腸捻転をした繁殖雌馬が疝痛で来院。

黄疸があり、膀胱炎も起こしていて・・・・疝痛は治まっていて食欲もある。

帰って治療を続けてもらうことにした。

                 -

8th

生まれてから肘の関節炎が良くなったと思ったら、後膝が腫れてきた当歳馬。

大腿膝蓋関節の関節洗浄をする。

超音波で臍動脈が径2cmほどになっているが見えた。

この当歳、放牧地で生まれていた、らしい。

臍帯は自然に切れたのだろうが、それでも、臍から感染したのかもしれない。

                 -

分娩前後の急患はほぼなくなった。

初夏の爽やかな天気が続くようになった。

牧草刈りも始まっているようだ。

繁殖シーズンもおしまいだ・・・たぶん・・ようやっと・・・

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巣は完成したらしい。

 

 


忙中閑なし

2020-05-28 | 日常

朝、3歳馬のTieback&cordectomy 

580kgの大型雄馬で、うるさくてOGEできなかったそうだ。

その馬が、寝ているうちに別室(X線撮影室)で2歳馬の腰痿のX線撮影。突然、ヨタヨタになった。

午後、1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術を始めておいて、別な部屋(覚醒室)でF1子牛の尿膜管破裂?を開腹。

しかし、尿膜管破裂ではなく、尿道破裂だった。

5日齢で会陰尿道切開しても肥育牛にはなれないだろう。あきらめる。

それから2頭続けて2歳馬の去勢

1頭は覚醒室で。それが寝ている間に、もう1頭は倒馬室で。

夕方から1歳馬の下顎骨折。覚醒室で倒馬して麻酔導入。

切歯骨骨折ということだったが、反対側の下顎骨体がバッキリ横骨折していた。

それぞれLCPで固定したが・・・・食べられるようになるか・・・・

夜になって繁殖雌馬の結腸捻転

8頭目の患者さん。

馬は7頭目。

全身麻酔も7頭目。

手術が終わって夜9時半。

さらに繁殖雌馬の疝痛の依頼。

麻酔から立ち上がって10時半。

来院した繁殖雌馬はなんとなく疝痛は落ち着いていた。

薄緑のあわ立ったような泥状便の排泄もあった。

直腸検査でも超音波検査でも怪しいところがあるが、馬を外へ出してみると食欲もある。

帰って様子を観てもらうことにした。

「まだ安心できないからね!」

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 野や林は野鳥でにぎわっている。

餌台にはほとんどスズメしか来なくなった。ときにカラス;笑

 

 

 

 

 


Ganbaro Wareware メッケル憩室小腸捻転ほか

2020-04-30 | 日常

朝、難産の依頼。

産道に肢が3本入って来ている、とのこと。

来院してすぐ全身麻酔した。

頭が来ているが、両前肢は腕節が屈曲していて、後肢は2本とも産道へ入って来ている。

前肢を直し、牽引するが、肩以上は出ない。

胸部で切胎し、後肢に産科チェーンをかけて、下半身は反転させて娩出させる。

この場合も、下半身は尾位上胎向と同じように出した方が良い。

そのためには、180°回転させなければならない。

わかる?

             -

そのあと、予定の子馬の肢軸異常のsingle screw 。

             -

そのあと、予定の競走馬の第四中足骨骨折の摘出手術。

             -

子馬の疝痛が飛び入り。

超音波で膨満した小腸いっぱい。

開腹したらメッケル憩室に空腸が巻きついたことによる小腸捻転だった。

このタコの頭のような憩室を切り取って、腸壁を縫って閉じて終了

                 -

その手術が終わるのを繁殖雌馬のひどい疝痛が待っていた。

子馬を運び出してすぐ始める。

PCV55%だ。

間に合うかどうかわからない。

結腸はひどい色だったが、内容を捨てることで回復した。

結腸骨盤曲の粘膜も完全には壊死していない。

あっちで骨盤曲を閉じているあいだに、こっちで大網切除 omentectomy 。

向こうで先の子馬が寝ている。

                  -

次の喉頭片麻痺 Tieback&Cordectomy をやったら1日に全身麻酔6頭目、と思っていたら延期になった。

この時季、急患のために延期になるのは覚悟しておいてもらわないとしかたがない。

それが2回続くかもしれないし、へたすると3回目になることだってあるかもしれない。

                  -

前の晩?

獣医師全員で真夜中まで5時間以上にわたる骨折手術をした翌日がこれだ。

Ganbaro Wareware !!

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コブシ咲く~ ♪

春なのに~ ♪

 

 


no rest, no lunch, no corona

2020-04-12 | 日常

朝、出勤したら、当番チームは難産が来てたいへんだったらしい。

そして、また疝痛馬が来るという。

当歳のときに、他の馬病院で腸管手術を受けているという2歳馬。

細身で健康な2歳馬の体形ではない。

ときどき疝痛を起こしていたそうだ。

癒着があるのだろう。

血液検査所見もひどく悪い。

直腸検査でも膨満した小腸ループに触れる。

超音波でも、完全に膨満した小腸が見えた。

開腹手術しても助けられない可能性大だし、万一助かってもまた同じことを繰り返すだろう。

諦める。

剖検したら、腸間膜が癒着し、完全な閉塞を起こしていた。

もう腸間膜が短くて、術創から出せそうにない。

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朝、予定の腕節骨折の関節鏡手術。

続いて、分娩予定日の繁殖雌馬の疝痛。

「子宮捻転みたいです。確認してください。」と手術室から呼び出される。

子宮広間膜がしっかりクロスしている。時計回り。

開腹して反時計回りに回転させようとすると、子宮には出血している部位もあり、反対側の子宮角は浮腫を起こしている。

直せないので、帝王切開して胎仔を取り出す。

が、すぐ心停止して死んでしまった。

子宮捻転で酸素が供給されず、すでに胎仔の状態も悪かったのだ。

親馬の子宮も損傷が激しい。

諦める。

                -

乳を飲むと腹囲膨満する子牛を診てほしいとの依頼。

状態が悪いので今日診て欲しい、幽門狭窄を疑う、腸管かも、とのこと。

12時半めがけて来院してもらって、即開腹。

しかし、第四胃穿孔で腹膜炎がひどく、すでに1-2日経っているようでどうしようもない。

諦める。  

                -

血液検査業務を終わらせて、午後2時半から予定の関節鏡手術。

2歳馬の後肢外側種子骨の頂部骨折。

入院している腸管手術馬は1日疝痛。

術後調子が良くて、制限給餌を始めたのに食べさせすぎたらしい。

諦めるか?

最後にリドカインの点滴治療をやってみることになった。

やれやれたいへんな1日だった、と思ったら、分娩後の繁殖雌馬の不調を診てほしいという。

子宮穿孔だとしても、夜中にやる手術ではない・・・・・が状態が悪いので今晩診てもらいたいとのこと。

                -

日が暮れてから開腹手術。

子宮角の穿孔で、腹膜炎はひどい。白血球数2000/μl。

子宮角の穿孔創を0 monocryl で閉じて、生理食塩液25ℓを数リットルずつ入れて吸引することを繰り返して洗浄した。

腹腔にドレインを残す。

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睡眠不足で、働きすぎで、まともに食事していなくても、

満員電車に乗るわけではないし、人ごみに入るわけでもないので、

covid-19 に感染するリスクは低いのが救いかな;笑

              /////////////////

研修宿泊棟は立ち上がった。

これもコロナ騒動が落ち着かないと運営開始できない。