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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

JRA調査研究発表会

2008-12-03 | 学会

Ca360174 JRA競走馬に関する調査研究発表会は今年が50周年だったそうで、それを記念してウマ科学会学術集会と日程を続けて、12月1日から3日まで「品川きゅりあん」に馬の関係者が集うことになった。

 日曜日は移動日。

ジャパンカップは遅い昼食を食べながら、ワンセグ携帯で観ることになった。

勝った馬は、社台ホースクリニックで腕節の関節鏡手術を受けたことがあるそうだ。

日本の馬医者の一人として嬉しい気もするし、賛辞もお贈りしたい。

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Ca360178 遠くに富士山が見えていた。Ca360181

富士は世界でも稀有な美しい山だと思うが、もし沖縄や北海道にあったら日本のシンボルにはならなかっただろう。

東京から見えるところに値打ちがあるのだろう。

Ca360180 品川周辺は江戸のはずれとして歴史のあるところ。

赤穂浪士で有名な泉岳寺を散歩がてら訪ねた。

武士の論理で世の平和を乱したテロリストたちを、江戸の庶民達がどうして愛し、なぜ英雄視したのか、と考えた私はひねくれているのか、

あるいは現代が赤穂浪士の時代より平和ではないのか・・・・

 子供達と観てきた大河ドラマ「篤姫」も勝海舟と西郷隆盛の会見でクライマックス。

その会見場所はJR田町駅付近だったらしいが、正確にはどこだったのか諸説あるらしい。

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Ca360184_2  競馬ファンにとってはJRAはあくまで競馬主催者なのだろう。

しかし、もっと広く馬関係者として見ると、JRAは日本の馬文化のスポンサーであり、日本の馬研究にとってもスポンサーであると同時に研究主体でもある。

日本の馬の防疫(感染症・伝染病の予防・治療)を担ってもいる。

 JRA調査研究発表会は、近年、企業内部の発表会の色を濃くしているが、

かねてから馬に関する日本の最高・最大の学会でもある。

月曜日は、理事長直々の挨拶で始まった。

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Ca360186 調査研究発表会の内容についてはまた今度。

明日から仕事だし。


第59回北海道獣医師大会

2008-09-14 | 学会

11日、朝9時20分x線室にいたら揺ら揺らと・・・・・

「まずい。眩暈してるヨ~」と一瞬思ったが、地震だった。

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午後から北海道獣医師会・産業動物獣医学会で洞爺湖温泉へ。

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12日。Ca360159

朝から学会。

私は6題目に発表。

午後まで19題の馬の演題と1題の鹿の演題を真面目に聴いた。

その後、北海道獣医師大会。

来賓祝辞は多すぎないか?

代議士先生は挨拶したいのだろうけど、各省庁官僚の皆さんからまで祝辞をもらう必要があるんだろうか?

「皆さんお疲れでしょうが、この挨拶のために東京から来ている私の身にもなってください」

山根日本獣医師会会長の冗談交じりの本音は面白かった。

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特別講演では刀匠の講演を聴き、パーティ-では試し切りを見せてもらった。

日本刀は世界の刀の中でも機能的に優れている。切る、刺す、受ける、抜く、持ち歩くことができる。

しかし、日本人は刀を道具として扱うだけでなく、武士道の精神的なシンボルにもしてきた。

日本全国、獣医師も含め、不祥事が続く昨今、精神修養が必要とされているのかもしれない。

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13日。

朝から学会。

牛の演題ばかり26題。

う~ん、外科、産科はともかく、牛の繁殖についての発表についていくのは私には辛い。

それでも、第一会場に張り付いていたのは、各賞の審査員になっていたからだ。

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学会が終わって審査会。

産業動物学会第一会場で発表された演題では、

「一産業動物獣医師が難産として往診依頼された500症例」が表を集めた。

この発表は素晴らしいと私も思う。

獣医師として初めて難産に呼ばれて「なんだかわからなかった」経験から、500症例目まで。

学術的にも産科学の教科書のデータとして使える成績なのではないだろうか。

そして、500症例から得た牛の難産のコツは

・ブロサポなどの潤滑剤を充分使うこと。

・後肢は子牛の尻尾で確認すること。

・押し戻すこと。

だそうだ。

臨床獣医師としての原点の重要性をあらためて考えさせられる素晴らしい研究であり、発表だった。

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馬の演題の中では、

「馬における腹腔鏡視下診断ならびに鏡視下手術」

を選んだ。

日本の馬では腹腔鏡手術の適応症は決して多くはないが、低侵襲の手術手技として画期的なものだ。

日本獣医師大会で発表してもらうことで、全国にも披露してもらいたい。

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実は、私自身が発表した

「馬の結腸捻転症例における超音波ドプラ法による結腸の虚血性損傷の評価」

も高く評価していただいたのだが・・・受賞は辞退した。

それが、私の「武士道」かな(笑)。

武士は食わねど高楊枝・・・・(涙)。

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さあ!若い先生達も、自分自身の500症例を集めようじゃないか。

良い診療をして、カルテを書くだけじゃなく、自身の感想や反省を記録し、そして整理する。

壁に当たったら、教科書や文献と照らし合わせ、先人に尋ね、また進もう。

それが、動物を診療することで社会に貢献する臨床獣医師の原点じゃないか。

Ca360161_2


SHCカンファレンス

2008-08-20 | 学会

Dsc_0048 ゆうべは7時からSHC(社台ホースクリニック)カンファレンス(症例検討会)に参加させてもらった。

抄録の「はじめに」にある

臨床獣医師に要求される能力のなかで、重要なのは「学ぶ力」「学び続ける力」ではないか。

そのとおり。

最も重要な「学び」の対象は「症例」である。

まったく、同感だ。

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 提出されたのは21題。

SHCのT先生が6題。Dsc_0049

SHCのK先生が5題。

SHCのS先生が6題。

ノーザンファームのT先生が2題。

ノーザンファームのT.S先生が1題。

不肖わたくしが1題(笑)。

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たいへん勉強になったし、たいへん刺激を受けたし、たいへん楽しい時間だった。

忙しい中、この症例検討会を開催され、グループ外の者にまで門戸を広げていただいたことに感謝したい。

症例報告とは言え学会発表と同じように準備されていて、複数題提出された先生はその準備もたいへんだったろう。

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内容や知見もたいへん学ぶことが多いのだが、結果が思わしくなかった例、事故例、失敗例も含まれていることにも感銘を受けた。

爪の垢でも煎じて飲みたい。

今度、削蹄した切りくずでも下さい(笑)。

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  来年はこの時季の土曜か日曜の日中に開催されるらしい。

良い診療をして、きちんと記録を残して、文献と照らし合わせて、「症例検討」できるようにしようじゃないか! 

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 今日は、競走馬のTieback & Ventriculocordectomy (喉頭形成・声嚢声帯切除手術)。

午後は1歳馬の飛節のOCD(離断性骨軟骨症)の関節鏡手術。

直腸・小結腸便秘で開腹手術した繁殖雌馬は、夕方退院していった。


ユーティリティ(産休・病欠代用)獣医師制度

2008-08-03 | 学会

はまなす会は北海道の産業動物女性獣医師の会ということらしい。

昨年が第一回の集会で、今年が第二回だったそうだ。

昨年は女性限定だったようだが、今年は男性でもどうぞ。ということだったようだ。

しかし、会場の参加者は8割がた女性だった。

講演の内容は興味深かった。

学術的な内容はまた今度にして・・・・・

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日本獣医師会のHPに元国会議員北村直人さんの講演の記録が載っている。

以下、意見交換会で出たという意見の部分を抜粋引用。

意見交換会で交わされた女性獣医師ならではの意見を幾つか載せて見たい.

そ の 1

  • 牛舎に女性用トイレが無い,診療先農家で困った.
  • 公務員女性獣医師が外勤時,車での移動や出先でのトイレ使用が上司や男性獣医師と間が合わない.
  • 朝から水分調整は辛かった.
    今では,往診地区内に数カ所,トイレ使用可能農家を指定,外勤時は一定時間ごとに,休憩時間を設定などなど,配慮されたとの事.

そ の 2
 女性獣医師が結婚適齢期をむかえても,勤務地が地方の町や村の場合,適齢期の男性がほとんどいないし出会う機会が無い.
町長・村長・組合長・上司は花婿確保に責任を! との声もチラホラ.

そ の 3

 職場には,複数の女性獣医師を確保,一人だけの女性獣医師勤務は避けてほしい

トイレの問題は大きいようだ。

結婚の問題は・・・・これは男性獣医師も同じだろう。花嫁・花婿確保に責任なんて持てないよね。

複数の女性獣医師を一度に勤務させて欲しいという要望は・・・甘えんな!

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 女性獣医師を雇用するときに、一番懸念するのは、寿退職や産休問題だろう。

事情が事情だけに、数年先の予測がつかないし、しょっちゅう聞きただすこともしにくい。

一人抜けても周りが頑張って支えようというには、産業動物診療の現状は余裕がない。

 早くから女性の職業進出があった教職では、産休代用教員「産休先生」制度があった。

女性獣医師も増えてきているので、産業動物獣医師の分野でも産休獣医師制度が必要だと思う。

女性獣医師を雇っている団体が共同で負担して、ピンチヒッターができる獣医師を雇用しておくのだ。

産休だけでなく病欠にも対応できるだろう。

 どうせなら、なんでもこなせる目茶目茶レベルの高い獣医師を用意しておいてはどうだろうか。

慣れない地域で、慣れない人の中で仕事をするにはただでさえ相当なスキルが必要だろう。

ピンチを助けてもらうのだから、準備期間にも、そして派遣してもらうときにもそれなりの費用負担も仕方ないだろう。

ユーティリティプレイヤーは、サッカーでも野球でも評価が高いのだ。

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 シルバー人材派遣というのも自治体で運営されている。

電気工事や植木職人などの専門職も登録されているのだが、

自治体の枠を超えて、定年退職したが、ピンチヒッターとして働いても良いよという獣医師の登録制度を作ってはどうだろうか。

ベテランの先生達だ。

ピンチをいろいろ教わるチャンスに変えてくれるかもしれない。

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Ca360122 まあ、なんにせよ、パイオニアとして時代を切り開いていくのは自分自身だ。

パイオニアとして評価も受けられる代わりに、

パイオニアの悲哀もあれば、

パイオニアとして犠牲にしなければならないものもあるだろう。


北海道産業動物獣医学会

2008-07-06 | 学会

 今年の北海道産業動物獣医学会の演題数は91!題。馬がたしか19題。

盛況だ。

2日間とも2会場に分かれて進行されるし、2日目の午後も発表がある。

しかし、これ以上増えると困るのかもしれない。

3会場に分けるわけのは良くないだろう。会場が分かれてしまうと聞きたい演題を聞けなくなることが増える。

会場を移る人が増えて会場が雑然とする。

会場を確保する上でも無理がある。

AAEPの年次学会は、申し込まれた演題のうち4題に1題ほどしか発表されない。選抜があるのだ。

AAEPの年次学会は毎年12月だが、発表申し込み締め切りは4月だ。選抜するためにはそれなりの時間も必要だ。

北海道獣医師会の学会で申し込まれた中から選抜するのは現実には難しいだろう。

誰が、何を基準に選ぶかも難しい。

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北海道獣医師会の産業動物獣医学会と小動物獣医学会は盛況だからか、他の府県からの参加者、発表者もいる。

これは嬉しいような話なのだが、演題数が多すぎるとなると無制限に受け入れるわけには行かないのかもしれない。

北里大学は青森では発表してないのか? 

90題も発表があるので、聴きに来るだけでも価値があるとは思う。

しかし、会場はたいてい満杯状態だ。

馬の臨床についても日本で一番演題数の多い学会かもしれない。

馬の会場はいつも席が空いているので、本州の方もどうぞ(笑)。

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発表演題の中から地区学会長賞と北海道獣医師会長賞が選ばれるのだが、この選考方法についても議論があった。

大学からの発表も一般からの発表と同様に選考の対象とするということになっているらしい。しかし・・・

研究費をかけて、大学の人手をかけて、動物実験を含めた研究で・・・・学術的価値が高い成果がでたら・・・・

日本獣医学会で発表すればいいんじゃないの?

私は、獣医師会の学会は、獣医「」学会、産業動物獣医学会は、産業動物「獣医師」学会だと思っている。

研究費もない、人手もない、時間もない中で研究発表する努力を評価し、奨励するべきだろう。

我田引水ですか?

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学生の発表や、卒論でやった研究の発表もあるようだ。

多くの人が聞きたい発表なら良いが・・・・・

獣医師会の学会は会員のものだろう。

学生の練習の場ではないし、卒論発表会でもない。

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症例報告はどうかという声もあるが・・・小動物獣医学会では一例報告がかなりを占めている。

症例報告が学術価値が低いとは言えないだろう。

Eqine Veterinary Journal は世界の獣医学術誌のなかで Veterinary Pathology についでインパクトファクターが高い雑誌だが、4頭以上の症例報告は受け付けている。

Veterinary Surgery は American College of Veterinary Surgeon の機関誌だが、1例報告も掲載される。

症例をおろそかにしては、臨床獣医学はなりたたない。

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さきの北大や酪農大での獣医学会は、北海道獣医師会と日程を続けて開かれた。

しかし、私を含めた臨床獣医師が獣医学会を聴いた印象は、「関係ないナ」だろう。

日本獣医学会は臨床分科会でさえ臨床獣医師が興味をもてない演題ばかりだ。

それが臨床獣医学なのか?

今になって、獣医学会は会員数、学会への参加者、発表演題数の減少に悩んでいるようだが、単に日程をつなげて開いてもそうそう盛り上がりはしないだろう。

症例報告は学術レベルが低いと扱うような獣医学会なら、臨床獣医師は獣医学会には集まらないし、その必要もない。

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P7060239_2 改修中の畜産研修センターの屋根裏から出てきたらしい。P7060242

  つわものどもが夢のあと。

この夏からまた新しい夢が集まる場になればと思う。