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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

肉弾

2022-10-19 | 図書室

調べ物をしていて、1年間のカルテを全部めくった。

2021年度も鹿の角でやられた外傷のカルテがあった。

鹿による被害を調べているわけではないけど。

あと3年分調べる。

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ときどきニュースで、「クマが・・・」と報道されている。

本州だと「ツキノワグマ」か、となるし、北海道のニュースだと「ひゃ~ヒグマだ」とわかる。

しかし、ツキノワグマに襲われるのと、ヒグマに襲われるのはぜんぜんリスクが違う。

チワワに噛まれてもニュースにする必要はないし、土佐闘犬が人を襲ったら大事件だ。

クマのニュースは、クマの種類も報道すべきだと思う。

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さて、本の話題。本題。

あの川﨑秋子さんの冒険小説。

ひきこもりの大学生が、父親に連れて行かれた道東の山中で、ヒグマと野犬と闘うことで生きる力を再生させていく物語。

動物との格闘のリアリティーについてはもうちょっと、かな。

しかし、道東で羊飼いとして生活しながら小説を書いていたこの作家の言いたいことは伝わってきた。

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道東で、野犬の群れがシカを襲っているのが観られているそうだ。

人の被害が出る前に捕獲しようとしているらしい。

犬たちにも狩りができるんだな。

増えすぎたシカ対策に狼を導入してはどうかという意見もあるそうだ。

(小説「肉弾」の中でも紹介されている)

犬じゃあだめか?

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最近、筋トレしている獣医さんが増えてきたようだ。

世の中が筋トレブームだということを除いても、

診療の中で体を鍛えておく必要を感じるのだろう。

都会では、お化粧する男子が増えているそうだ。

筋肉を使わない都市生活より、体を使い筋肉の必要性を感じる田舎獣医の生活の方が、

生きる力を呼び覚ましてくれる生活なのかもしれない。

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おまえは狩りをして生きていく才能はなかったな。

でも本気出したら父ちゃんより強かったかな。

な。

 

 

 


猟犬探偵

2022-10-15 | 図書室

帯広の書店でみつけて購入。

漫画家も、原作者ももう亡くなっている。

舞台も、昭和61年。

あのころは、携帯もまだ普及しておらず、世の中の連絡は電話かFAXが主で・・・

しかし、現代の物語として読んでもそう違和感はない。

            ー

行方不明になった猟犬を探すことを生業にしている男。

祖父の遺産の広大な山林を相続し、ログハウスで一人暮らしている。

愛犬と。

そこへ舞い込む困った依頼。

連れ去られた盲導犬を探してくれとか、

シェパードと一緒にいなくなったサラブレッドを追ってくれとか・・・・

            ー

ハードボイルド小説へのオマージュも含まれている。

「ハードボイルド」なんてもう流行らないのだろうけど。

今はもう拡散して、薄まって、それでも多くの小説やドラマや映画に要素として含まれている。

あるいは、それと意識されずにベースになってはいる。

ひょっとしたら、私たちの世代を狙った復刻版なのかもしれない。

サイドキックとは相棒のことなのだそうだ。

相棒を亡くした私には楽しんで読めた。

            ー

犬の一生は人よりもはるかに短い。

犬を飼い続けるということは、犬のいくつかの生と死を見つめ見送ることになる。

人は犬の命の輝きと

避け難い終焉を

自分の人生に照射しつつ暮らすことになる。

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人が犬の生と死から学び教えられることは多い。

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相談してくれていたら、サラブレッドの物語はもう少しリアルにする方法を提案してあげられたかも;笑

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きょうは、予定の手術はなし。

昼、血液検査業務。

当歳馬の跛行診断。

大腿骨内顆のひどいOCD,あるいは形成不全、あるいは虚血性壊死だった。

繁殖雌馬の剖検。大腿骨頭の粉砕骨折。

夕方、1歳馬の腕節の外傷縫合。

 


ジェイク・バートンの一生

2022-07-01 | 図書室

 

この本は面白かった。

翻訳本かと思っていたら、日本人が書いている。

日本そして日本人との関わりもしっかり書かれている。

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私がスノボを始めたばかりで、スノボ業界に興味があるので面白く読めるのかもしれない。

しかし、サクセスストーリーとしても面白いし、

スノーボードの急激な改良や工夫も興味深い。

スノボ業界の栄枯盛衰、熾烈なライバル争いの経緯も面白い。

百を超えるスノボードメーカーが生まれ、そしてそのほとんどが潰れるか買収されていった。

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ジェイク・バートンがどれだけスノーボードというスポーツ、それに関わる若者たち、を愛していたかわかる。

この人が居なかったらスノーボード業界は今のようじゃなかったのだろうし、

スノーボードは今のように普及しなかったのだろう。

65歳で安楽死を選んで死んだ。

働きすぎでもあったのかもしれない。

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6月後半は疝痛はすっかり落ち着いた。

開腹手術もこの2週間で結腸捻転が1頭あっただけ。

競馬まで行けない2歳の手術が多い。

のど鳴りと、腕節の骨折と。

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職場のIT環境が変更され、メールアドレスが変わりました。

以前の職場のメールアドレスは使えなくなりました。

必要な方は、スマホへのショートメールでお問い合わせください。


ヒロくんとぼく

2022-06-18 | 図書室

病院の待合室に置いてあって読んだ。

おがわじゅりさんの、少年と馬の別れを描いた絵本。

とても優しい絵で、悲しいが温かいストーリーになっている。

少年ときずなで結ばれた乗馬。

しかし、肢を傷めて安楽殺されるしかなかった。

落ちこむ少年。

でも、新しい馬とまた乗馬を楽しむことを「ぼく」は願っているよ。

というお話。

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「白い人」が出てくる。

治せなくて、安楽殺する獣医さん。

残念。

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きのうは

3歳馬の跛行診断からスタート。

High 4 block が効いて、繋靭帯近位付着部傷害が疑われた。

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途中から並行して繁殖雌馬の蹄葉炎の深屈腱切断術。

この青草の季節。

体重オーヴァー、糖質過剰、だと馬は蹄葉炎になりかねない。

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これに並行して、肢軸異常のscrew抜去。

これは立位で。

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午後、私は血液検査業務。

43検体。

ほとんどが、「ロド」「肺炎」「発熱」「ロドチェック」

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手術室では喉頭方麻痺のTieback&cordectomy。

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私は、血液検査を終えて、子牛の剖検。

腹腔内膿瘍から、癒着による消化管閉塞を起こしていた。

これではどうしようもない。

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そのあと、1ヶ月齢の子馬の球節内反の矯正手術 single screw 。

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やれやれ、繁殖シーズンも終わったようだ。

 

 

 

 


夜、でっかい犬が笑う

2022-06-14 | 図書室

 

この作者の本は、むかし何冊か読んだように思う。

エッセイは毒舌と現代批判に満ちていてなかなか面白かった。

一般に思われている「作家」のようにはなりたくない小説家といった印象。

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犬の飼い主としてはろくでもない。

理想の犬、を求めながら、次々と大型犬を飼い、理想ではないと難癖をつけ、死なせてしまったり、人に譲ってしまったり。

夫婦そろってそのようだからあきれる。

時代が違っているのを差し引いても。

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理想の犬と言いながら、どうも犬の本来の性質や姿を好きになれなかったのだろうと思う。

ラブを飼って、明るすぎる、陽気すぎる、はしゃぎすぎる、と文句を言う。

アフガンハウンドを買って、毛の手入れがたいへん、走るのが速すぎる、体力がありすぎる、言うことをきかない、と気に入らない。

ジャーマン・シェパードに執着していたようだが、シェパードの中の犬的な部分が許せなかったようだ。 

そして、自分でも飼い主としてろくでもなかったことを認めている。

          ー

この作者なりに理想の犬を求めて、次から次へと大型犬を飼替える。

それでも知人に犬を飼うことを勧めたりもしているので、犬と暮らす喜びを感じてはいたのだろう。

その相手も「知人」でしかない。

「こんなやつ」という悪口雑言の対象になっているから。

ただ、その中にうなづける部分があるからエッセイとして面白いのだろう。

平成の御世にはすでに許されなかった女性蔑視表現もひどい。

「女の腐ったようなやつ」は、今はすっかり聞かなくなった。

そして、男とはどうあるべきか、という話も。

今はタブーなんだろう。

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夜、大型犬たちが夢の中で笑うのだそうだ。

それも無邪気に、楽しそうに。

この作家は自分のこだわりで、犬たちと楽しく遊びまわるのを自分に許せなかったのかもしれない。

それでも、飼いついで来た犬たちがあたえてくれた喜びを実は感じていたんじゃないか?

夜、でっかい犬たちが夢の中で笑うのだそうだ。

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午前中、3歳の喉頭方麻痺 Tieback&cordectomy。

午後、今週わたしは検査担当。

手術室では腕節の関節鏡手術。

そのあと、黒毛子牛の腹腔内膿瘍の術創ヘルニア?の診察。

つづいて、1歳馬の飛節の細菌性関節炎疑い。

全身麻酔で関節洗浄。

しかし、関節液の白血球数は80/μlだった。