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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

ドイツの犬はなぜ吠えない?

2015-04-24 | 図書室

ドイツのイヌはなぜ幸せか? でドイツの犬飼い事情に興味を持ったので、この本も読んでみた。

  ドイツの犬はなぜ吠えない? (平凡社新書 359)
福田 直子
平凡社

 

この本もタイトルがどうかなと思う。

あとがきに書かれてもいるのだが、特定の主張はなく、ドイツのペット事情について紹介する内容になっている。

ドイツはペット行政「先進国」であるらしい。

それは市民の意識と行動に支えられている。

犬を飼うには安からぬ税金を払わなければならず、多くの人は犬とともにしつけの学校にも通う。

交通機関に犬も乗れるし、犬が入れるレストランやホテルもある。

しかし、犬をレストランのテーブルで食事させた有名人(獣医師だそうだ!)に他の客が注意したら、店は注意した客の方を追い出した。などいうエピソードも批判的に紹介されている。

さらにはテロリストまがいの動物愛護団体の活動もヨーロッパでは始まりつつある。

すべての動物を利用するのをやめるべきだ、と主張している団体もあるので、それは人が動物と暮らすことのかなりを否定することになる。

ペット、あるいはコンパニオン、さらにはパートナーとして可愛がるだけが動物との暮らしではないだろう。

獣医学や畜産学は、その中にしっかりと哲学をもっておかなければならなくなっているのかもしれない。

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今日は子馬の肢軸異常の診察。

中間種の新生子馬の喉頭内視鏡検査とフルリムキャスト装着。

繁殖雌馬の結腸捻転の開腹手術。

子宮内シストのlaser破砕処置。

入院厩舎に新生仔脳症の子馬2組。

この世にあって、今日一日すごせることの幸せを思わなければすべては始まらないと私は思う。

(う~ん、中国語では幸せhappyは「快楽」なの?)

人並みに扱えないなら動物を飼うべきではないと言っていたら、人はほとんど動物と暮らせない。

そもそもアフリカの草原でライオンに生きたまま食われるシマウマは不幸なのか?

ライオンは残酷なのか?

動物をつないで飼うのはいけないことなのか?

俺だってつながれて生きている;笑。

けど、救ってもらわなければならないほど不幸だとは思ってない。

 


ドイツの犬は幸せか??

2015-03-12 | 図書室

「犬と子どもはドイツ人に育てさせろ」という言葉があるらしい。

経済好調で、スポーツでも好成績を挙げていて、ゲルマン民族って何か持ってるのかと思わされることもしばしば。

それらを背景にこの本はタイトルを付けたのだろうけれど・・・・内容を表すという点ではどうかなと思う。

ドイツの犬はなぜ幸せか―犬の権利、人の義務 (中公文庫)
グレーフェ アヤ子
中央公論新社

「ドイツの犬はなぜ幸せか」というほど硬い内容の本ではない。

ドイツ人物理学者と結婚し、ドイツで暮らす日本人大学講師が、愛犬を語り手として一人称でドイツの家庭犬の育て方と暮らしを書いている。

1986年生まれのジャーマンシェパードとコリーのミックス犬で、大型犬だが室内飼い。

家は暖炉がありホームパーティーもできるような広さ、そして庭付き、向いは公園、ということだからドイツでも平均的な暮らしより裕福だろう。

きちんとしつけに取り組み、その内容や考え方も書かれている。

犬の学校へも通ったが、学校が好きではないようだったので初級で修了。

しかし、買い物に行った先で手を出してきた婦人に血がにじむ程度に噛み付く事件も起こしている。

ドイツでも犬の飼い方や育て方が確立されているわけではなく、問題もしばしば起こっているし、各地域で試行錯誤しながらどう付き合っていくか検討され、それが法整備につながっている部分もある。

ドイツでは、電車には犬も乗れる。

ホテルやレストランは入れるところと入れないところがある。

散歩のときリードを付けなければいけないかどうかは街ごとに決められている。

ドイツ「でも」休暇シーズン前にはペットを捨てる人が多く、動物保護施設が満員になる。

決して理想とは言えない現状だが、どうあるべきか考え、こうするべきだと考えたら実現するために実行に移す。その力強さがドイツ流かもしれない。

もちろん自分で考えるのだ。人任せにはしない。

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文庫版のあとがきに記されているドイツの動物に関する法整備とその元になっている考え方は興味深いし、日本の獣医師も知っておく必要があるかもしれない。

「動物を扱う人たちに、それぞれの種に適した扱い方の知識と能力が要求され、それが全項目にわたって一貫した規則となっている」


Equine Wound Management

2015-01-18 | 図書室

立派な翻訳書を送ってもらった。

自分の講演、症例発表、出張の準備もあり、時間が取れないが、読み進めようと思っている。

「馬の外傷」は基本的な、よくある、しかし難しい、被害の大きい課題だ。

もちろん怪我をさせないように管理できれば理想だがそうもいかない。

サラブレッドが外傷を負ってしまうと、ちょっとした傷でも痕が残って商品価値が下がってしまうことが多い。

まして、大怪我では途方にくれるしかないこともあり、治療に数ヶ月かかり、予後も想像つかないこともある。

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創傷治癒は外科学の基本で、病理組織学的に研究された理論が古い教科書にも載っていた。

しかし、近年、サイトカインや分子レベルで組織の再生が説明できるようになり、この本にも馬についての最新の創傷治癒理論が説明されている。

それを知り、実践に生かすことで、理論に裏付けられた外傷管理ができるようになればと思う。

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本の最初には翻訳にあたったJRAの若い先生方の名前が並んでいる。

こんな分厚い馬臨床の洋書を分担して翻訳できるのはJRAならではだろう。

そして関係機関に配っていただけるのはたいへんありがたい。

感謝。

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朝から湿った思い雪が降った。

暖かくて水分が多いので、夕方にはコチコチのアイスバーンになった。

車の運転に気をつけましょう。

イヌでも転びます。

じゃなくて、体をすりつけるヘンな奴。

 


犬旅・馬旅

2014-12-01 | 図書室

犬連れバックパッカーの続編なのだろう。

シェルパ斉藤の犬と旅に出よう (新潮文庫)
斉藤 政喜
新潮社

その間、何年かが経っていて、ゴールデン・レトリーヴァー連れで旅をしていたようだが、犬連れ旅をテーマにまとめられた本としてはこれが2冊目のようだ。

そして、その初代旅犬ニホとの突然の悲しい別れ。

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犬と濃厚な時間を持った人ほどペットロスには備えておかなければいけないのだろう。

その点、シェルパ斉藤さんは、たくましく、うまくできたのかもしれない。

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この本、題名のごとく、犬連れ旅のHow to本にもなっている。

世の中には動物嫌い、犬嫌い、アレルギーの人もいるので、どこへでも犬を連れて行くのが良いとは思わないが、時と場所と場合を考えればもっと犬連れ旅が許されても良いのではないだろうか。

この本の中では、関門海峡はフェリーで渡れず、トンネルは犬禁止で、犬止め海峡らしい。今もそのままなのか?

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日本全体では、フェリーも飛行機も以前よりは犬連れで乗りやすくなっているようだ。

ただの旅ではなく、引越しに伴う移動などもあるだろう。

動物の輸送手段としても環境が整えられるのは良いことだ。

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最近、うちはこういう感じ。

いちおうリードは着けているのでこれ以上運転を邪魔することはありません。

本当は車内に固定したバリケンに入れるのが理想で、

そうでないなら犬用シートベルトで後部座席に座らせるのが望ましく、

どちらも用意してあるし、やってはみたのですが・・・・笑

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馬連れ旅というか、馬で日本を縦断するのはもっと、はるかにたいへんだろう。

馬と日本を縦断

かなりの冒険旅行だ。

無事を祈る。ガンバレ!!

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それから

NOSAI日高、獣医師大募集中!!

 

 


チベットを馬で行く

2014-10-25 | 図書室
チベットを馬で行く (文春文庫)
渡辺 一枝
文藝春秋

この1ヶ月、この本を読んできた。
amazonで購入する前は、有名な作家椎名誠の奥さんが書いた旅行記だと思っていた。
写真が多くて、それほど厚くはない本だろうとなんとなく考えていた。
甘かった。
あとがきまで実に668ページある。
写真どころか挿絵すらひとつもない。
すべてが言葉で表現されている。
チベットを馬で1周する4000kmを超える旅。
そのどこもが富士山より標高が高い。
「もう10歳若く体力があれば・・・」という50歳になった女性がした旅。
もし旅の途中で死んだら、チベットの風習にならって鳥葬にして欲しいと夫に頼んででかけた旅。
本の内容は旅日記なのだが、その中に作者の人となりが表れ、日本やチベットや中国の社会問題が語られ、
チベットの自然が描かれ、家族への思いが書き留められている。
旅が終わるに近づくと、早く旅を終えたい気持ちと、旅が終わる寂しさとがあふれている。
本を読む側もその気持ちに同調することができた。
                       -
私は自分にはモンゴル系の血が流れているのかなと思うことがあった。
馬に魅かれるB型だし;笑。
でも、チベットかもしれない・・・・山好きだし。
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今朝、電柱にノスリを見かけた。
いつも冬に停まっている柏の樹はまだ葉を落としていない。