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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

限界集落株式会社

2017-01-16 | 図書室

この本も空港の本屋で買った。

山奥で、稲作を主体にした農業では成り立たず、人口が減り、集落として持続していくことができなくなりつつある地区に、

たまたまやってきた企業コンサルの青年実業家が、

自分のハウツーを注ぎ込んだり、農業について学びながら、過疎化に悩む集落を再生させていく物語。

かなり軽いタッチで書かれていて、漫画風だ。

リアリティーより都合のよさが優先されている。

登場人物の設定や活躍もうまくいきすぎ。

しかし、どこかの村でこうした成功例があったことを見聞きしているので、まったくの夢物語にしか思えないということもない。

限界集落株式会社 (小学館文庫)
黒野 伸一
小学館

続編も書かれているので、それなりに評判が良かったか、売れるかしたのだろう。

ただ、現実はこんなに甘くないし、農業も畜産ももっと複雑でたいへんなもんだ。

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私は漫画チックな小説ではなく、こちらの方にもっと現実味を感じた。

http://myfarm.co.jp/

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入院馬は帰って行った。

肢の痺れと痛みもずいぶん良くなっていた。

今日は、1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。

午後は、2歳馬の種子骨骨折の関節鏡手術。

 


昭和の犬

2016-10-10 | 図書室

幸せそうには思えない女の子が、昭和の時代の中で成長していく物語。そして、そばにはいつも犬がいてくれた。

昭和の犬 (幻冬舎文庫)
姫野 カオルコ
幻冬舎

幸せそうには見えないだけに、犬がそばにいることが安らぎに思える。

その女の子が恵まれていないとしたら、それは父親によるところが大きいのだけれど、彼女の犬の扱いのうまさは父ゆずりでもある。

昭和33年生まれの彼女。

昭和35年生まれの私には、記憶を呼び起こされて、感慨深いものがあった。

戦争が終わって、10数年しか経っていない時に生まれたのだ。私たちは。

もう平成でさえ30年近くなるというのに。

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韓国行きのあいだに、空港で、機内で、早朝のゲストハウスで、読んでしまった。

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あの頃・・・・・

昭和は遠くなりにけり、かな。

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君は平成の犬だね~


破裂

2016-09-05 | 図書室
破裂
久坂部 羊
幻冬舎

娘が図書館から借りてきていて、返すのを頼まれた。

途中の空き時間に読み始めたら面白くて、最後まで読んでしまった。

医療ミステリーで、内容は、医療事故、内部告発、医学部の教授選、老齢医療、安楽死、手術ミス、医師の麻薬中毒、不倫、健康保険の財政破綻、老人・痴呆介護、官僚の不正、報復殺人、医療裁判など、あまりにもたくさん。

誰かを、何かをモデルにしていることでリアリティーと興味をくすぐられ、退屈せずに読める。

無垢で無実の善人は出てこない。

しかし、極悪非道の悪人も出てこない。

一番のテーマはPPKならぬPPPだ。

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今日は、2歳馬のTieback&Cordectomy.

午後は、1歳馬の腕節の血腫の超音波画像診断。

症例の相談多数。

実習生のレポートの整理と評価記入。

関節鏡の光源装置の不調の点検の立会い。

コンプライアンス内部監査。

メールと電話での連絡多数。

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産業動物獣医学会で発表テクニックとして感じたことのひとつ。

発表時間が7分になって以前より短縮されているのにスライドが多すぎる。

文字がいっぱいのスライドを出しながら、別なことをしゃべるので、見ている方は聞きながら読まなければならない。

そんなことは無理。

聴衆が読めないスライドを出しても、聴衆は理解も納得もしてくれない。

 

 

 


世界屠畜紀行

2016-08-26 | 図書室

今日は、準急患で2歳馬の結腸便秘。

午後は血液検査に、

当歳馬の後肢の跛行診断。

興奮して跛行見せず。

こうなると画像診断しかできることはない。

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図書館でみかけたので読んでみた。

世界屠畜紀行
内澤 旬子
解放出版社

すごい労作だ。

生き物の命を奪い、食肉にする、というのは肉食をする以上避けられないことなのに、世間一般には目に触れないようになっている。

おまけにその作業に従事する人たちは差別的な扱いを受けている国もある。

日本もだ。

では海外諸国はどうなのか?

ということで、筆者はアジアもアラブもヨーロッパもUSAもその現場を観て回り、スケッチ画と文章でルポしている。

写真を撮るのは断られたり、嫌われたりすることが多い現場なので、写生するというのは良い方法だったのかもしれない。

著者が細部まで入念に観察していることも伝わってくる。

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取材対象は、素朴な農村での自家だったり、USAの巨大企業のまるで工場のような処理場だったりする。

その中で働く人たちのインタヴューも含まれていて、国や文化や民族や歴史や宗教によって「食肉」にまつわるさまざまがどう扱われているかもわかる。

ただ、読んでいて疲れてしまった。

興味深いのだが、途中で面白くなくなってしまった。

資料としてなら良いのだが、読み物としては著者の視点に共感できないとつまらないのかもしれない。

しかし、多くの人にお勧めする。

読んでみてみ。


都会の犬は・・・・生産地の馬は?

2015-06-13 | 図書室

このあたりは車道に、「馬横断注意!」の看板があったりするし、

「競走馬輸送中」と書かれた馬運車もしょっちゅう走っている。

「馬なんだから、気をつけろよ」という感じであり、

その前には(高価な)とか、(神経質な)とかが入っているように思われる;笑。

(「馬を運んでるんでゆっくり行きますからお先にどうぞ」という風に受け取れないのはどうしてだろう・・・・・・?)

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犬のウンチを拾うのは飼い主のつとめだとは誰しも思う。

都会の犬はたいへんなのよっ!―正しい犬の飼い主入門
天谷 これ

山と溪谷社

でも、都会じゃそれでは済まないようだ。

都会のマンションで秋田犬を飼い始めた筆者の周囲とのドタバタを「勝負」として書いている。

秋田犬を危険な犬種としている宿泊施設や地域もあるらしい。

むかしはあちこちで番犬として飼われていたように思うが・・・・

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馬なんだからよ~、そっちが気をつけろよ。と言いたげな看板や馬運車をあちこちで見かけるこの地域を私は嫌いではない。

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今日は、

1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。

当歳馬のALD肢軸異常のscrew抜去。

3歳競走馬の第三中手骨内顆からの螺旋骨折のスクリュー固定。

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牛肉もシカ肉も与えるけど、馬肉はやったことはありません。

食べ物だと思われたら、散歩どころじゃありませんから・・・・・