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馬医者残日録

サラブレッド生産地の元大動物獣医師の日々

早産子馬の新生子不適応症候群NMS

2019-04-21 | 新生児学・小児科

その子馬は胎盤炎で、2週間早く生まれてしまった。

生まれて半日は元気で、起立し、親から哺乳できたが、そのあと立てなくなり、foal squeezeにも反応せず、夜中じゅう暴れたらしい。

翌朝、運ばれてきた。

で、鎮静剤を投与したが、あまり効果がない。

頸静脈カテーテルを留置して輸液を開始する。

膀胱破裂を予防するために尿道カテーテルを留置する。

子馬はすでに暴れて目の周りを腫らし、擦りむいてもいた。

鎮静剤を投与しても暴れるので、牧場の人は馬房でつきっきり。

母馬は・・・・・あの有名馬のおかあさんなのだが、危ない馬。

耳を倒して、咬みに来る。

後肢は削蹄できない馬だそうだ。

子馬は持続点滴にジアゼパム(精神安定剤)を混ぜたがそれでも暴れる。

夜中は、牧場の人にシリンジを渡して、必要な時にはポートから投与するよう指示した。

でないと、目も離せない。トイレにもいけない。

              ー

翌日、子馬の状態は安定していて、寝たまま指を強く吸える。

吸いたくて、あちこち吸い付いてくる。

哺乳ビンでミルクを飲ませたら、3時間ほどおとなしく寝た。

立つ気になったタイミングで介助してやるとなんとか立てるようになったので、

母馬のところへ吸いにいく練習をした。

おかあさんには鎮静剤を投与した。

子馬は一度立つと今度は自力で寝れない。

胸を締め付けて寝かせた。

これがfoal squeeze の基本作用。

さらに翌日、子馬は自力で起立できるようになり、母馬も鎮静剤を投与しなくても乳を飲ませるので、退院とした。

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今日は、午前中1歳馬の飛節OCDの関節鏡手術。

当歳馬の皮下膿瘍のデブリドと洗浄。

2歳馬の去勢。

当歳馬の鼻骨陥没骨折のプレート固定の予定だったが、状態が良いので中止した。

明日もプレート固定の予定が入っている。

 

 


新生子馬の腓腹筋断裂のキャスト固定

2019-04-18 | 新生児学・小児科

子馬はお産のときに腓腹筋断裂を起こすことがある。

実際には、筋断裂というより、大腿骨への腓腹筋付着部が剝がれている。

大きな血腫が形成され、貧血し、黄疸が出たりもする。

何より寝起きができなくて、あきらめられていることが多い。

内出血がひどいと、貧血で死んだりもする。

                -

大腿部に血腫ができている新生子馬がいるので診てほしい、とヴェテランの先生から電話。

大腿骨折か、あるいは腓腹筋断裂、と検討をつけて待つ。

来院したら、腓腹筋断裂のようだ。

片方だし、程度としてはひどくない。

腓腹筋断裂すると、飛節を引きあげられず、飛節が地面まで落ちて後膝が伸び、飛節は屈曲してしまう。

後膝をキャスト固定することはできないが、飛節を伸びた状態に保ってやると子馬は立ちやすくなる。

ということで、

キャスト固定した。

数週間の看護・介助が必要だ。

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二日後、キャストの緩みと当たりが心配されて連れてこられた。

子馬の立ち方、歩き方はこの障害としては良好。

1週間はこのキャストのまますごしてもらうことになった。

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夜中に、難産で切胎したけど、下半身が出せない、と相談の電話が来た。

母馬は、獣医師が到着したときには起立不能で、連れてはいけない、とのこと。

できるアドバイスはしたが、翌日剖検に運ばれてきた。

この状態で産道へ入ってきていた。

左の飛節はひどいかっこうで屈曲している。

奇形か?と思ったが、腓腹筋断裂していた。

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臨床はとても面白い。

スリリングでエキサイティング。

馬の臨床をやるなら生産地だ。

 

 


開腹手術Day 2nd case とその合間のNMS治療

2019-03-27 | 新生児学・小児科

昼、分娩後の繁殖雌馬の疝痛の依頼。

来院しても痛い。

血液も悪い。

結腸捻転だろう、で開腹して問題ない。

予想通り結腸捻転。

けっこうひどかった。

                 -

私は、今週検査当番。

血液検査件数も多い。

子馬のベビーチェックに、分娩後の繁殖の不調に、すでに生まれている子馬の検査、etc.

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NMSの子馬の片方は回復して、自力で起立できるようになり、親からも哺乳できるようになった。

IgGが低いようなので、血漿輸血することになった。

寝て、立って、オシッコ垂れて、乳飲んで、寝る。

が、新生子馬の生活。

それができるようになれば退院できる。

それができるようにならないと子馬は成長できないし、どんどん衰弱する。

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すでに夕刻。

しかし、来院した24日齢の子馬がやっぱり痛い。

to be continued

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夜間放牧を終え、朝に一旦厩舎へ入る1歳馬たち。


糞塊による小結腸閉塞

2019-03-22 | 新生児学・小児科

休み明けで戻ってきたら、馬運車が3台とまっていた。

入院畜が複数いるみたいだ。

          ー

子宮穿孔を立位で縫合した繁殖雌馬。

結局、便の出が良くなく、腹膜炎になり、開腹手術したら小結腸の腸間膜が大きく破れていたそうだ。

小結腸は壊死していなかった。

          ー

NMS新生子不適応症候群の子馬。哺乳瓶で飲めるが、立てない。

          ー

前日から疝痛の3週齢の子馬。絶食中。

          ー

午前中に予定していた腕節の骨折の競走馬が来院した。

術前のXray画像は届いていない。

X線撮影しなおしたらchip fracture ではなくslab fracture 盤状骨折だ。

休養期間や予後が異なるので、あらためて馬主に連絡しなければならない。

結局、手術は延期。

急患ではないのだから、術前のX線画像を得て手術予定を組まないとこういうことになる。

予定もつまっているのに、予定をあけることになる。

          ー

当歳馬の胃内視鏡検査をしたが、胃潰瘍はなし。

それなら疝痛は腸閉塞だ。

おそらく小結腸。

と検討をつけて、空いた時間で開腹手術することにした。

小結腸に親の糞と思われるものが詰まっていた。

腸管は傷んでいなかったので、もみほぐして推送する。

              ー

続いて予定の上腕二頭筋滑液嚢炎の洗浄。

午後は喉頭片麻痺。

それから1歳馬の尺骨骨折のプレート固定。

こんだけやって、まあ5時には終わった。

 

 


foal squeeze

2019-03-12 | 新生児学・小児科

夜9時半に生まれた子馬が、立ち上がって自分で乳を飲んでいたものの、夜中2時ころから起きなくなり、バタバタ暴れた、ということで、NICU管理のために来院した。

新生子脳症の症状なので、Madigan foal squeeze を行っているところ。

フィナステリドも飲ませた。

尿道カテーテル、経鼻カテーテル、静脈カテーテルも留置。

翌朝には起立できた。

                -

しかし、結局この子馬は3日齢であきらめることになった。

肩周囲の損傷もあり、神経症状も続き、感染も起こしていた。

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この春の実習生たち。

運んでいるのは難産でひっぱり出された子馬。

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「今年の実習たちはよく動きますね」

とほめられた。

「朝、『見てないで動け!』ってオレに怒鳴られたのさ」;笑