真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「凌辱レズビアン」(1989『沙也加VS千代君 アブノーマルレズ』の2010年旧作改題版/企画:《株》旦々舎/配給:新東宝映画/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/撮影:稲吉雅志/照明:出雲静二/音楽:藪中博章/編集:金子編集室/助監督:渡辺武・毛利安孝/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化工/出演:沙也加・風見怜香・芳村さおり・直平誠・平口広美・ラッシャー三好・山崎邦紀・千代君)。
 東京の街を、毛皮のコートに赤いストッキング、黒のハイヒールの沙也加(彼女自身)が闊歩する。頃合を見計らつて、コートの前を開いた沙也加が陰毛も半分露な赤いボディ・スーツ姿を開陳するタイミングでタイトル・イン。恥づかしいのか色んな意味での危険も覚えるのなら、そんなお痛仕出かさなければいいのに小走りで逃げる沙也加を、直平誠が回す馬鹿デカい高級車が拾ふ。走り始めた車の自動車電話を直平誠が取ると、東京に出て来た何処ぞの県会議員夫人・若泉(風見)が、シティプラザホテルの2859室で沙也加を待つとのこと。沙也加はレズビアン専門の、高級娼婦であつた。沙也加と風見怜香の濃厚な濡れ場が展開される中、表に停めた車で女主人の帰りを待つ直平誠は零す、「プロのレズなんて、もうやめようよ」。真性のビアンであると思しき沙也加相手に、かつて玉砕した過去も持つ直平誠は、身悶えんばかりの届かぬ想ひを抱へてゐた。再び客の下へと呼び出されたホテルの一室に沙也加が顔を出してみると、そこには好色家で金は持つてゐるやうだが目下不能のゴンダマンゾウ(平口)と、先にマンゾウに買はれた千代君(彼女自身)が既に事の眞最中。平口広美は台詞回しは山下ならぬ水野将軍だが、ガッシリとした筋肉質の体躯は銀幕に素晴らしく映える。沙也加と千代君の百合の花香る絡みに、興奮して剛直を取り戻さうかといふコンセプトのマンゾウに対し、沙也加は脊髄反射で臍を曲げる一方、両刀遣ひの千代君は以前から苛烈で一方的な敵対心を、“三年絶頂”とかいふロシアのサンボの裏技のやうな異名も取る沙也加に向けてゐた。何やら一度沙也加と寝た女は、三年はその時の強烈なエクスタシーを忘れられないらしい。マンゾウが気軽に差し出した、百万円の札束を見るや沙也加はコロッと方針を曲げプレイに参戦、目出度く射精にまでこぎつけたマンゾウは、沙也加V.S.千代君、どちらの淫技がより優れてゐるのかを競ふ対決を、勝者に八百万、敗者にも二百万の賞金を提供する条件で申し出る。一旦は一笑に付した沙也加ではあつたが、根岸(芳村)との仕事に向かつた隙に、直平誠は千代君に陵辱されボロボロにされてしまふ。憐れな直平誠に身を任せた沙也加は、終に売られた喧嘩を買ふ決意を固める。ベビーフェイスには不釣合ひにも思へる伸びやかな肢体を誇る芳村さおりは、淫具装着の上の羞恥連れ回しに屋内では熱ロウと、更に意外なハードプレイを堪能させて呉れる。
 直平誠の沙也加に向けられた不純で不順な純愛も絡めた、沙也加と千代君、コールガール界の二大巨頭が互ひのプライドを賭け激突するといふ構図は、その限りに於いては本来娯楽映画として定番らしい磐石さを誇る。さうはいふものの、開巻に続き後にも繰り返される、浮き足立つた沙也加の闇雲な露出遊戯にそこはかとなく漂ふ明後日感が、最終的には全篇を支配する。珍奇な微笑ましさが最も爆裂するのはある意味順当に、正しくクライマックスの最終決戦。海岸沿ひの幹線道路に相対した沙也加と千代君は、コートを脱ぎほぼ全裸となると双頭ディルドーにて結合。どちらが先にイカされるのかに鎬を削る二人の女に、橋の下も更に結構離れた地点から、画面向かつて一番右のマンゾウに、中央のラッシャー三好と、左には和服姿の山崎邦紀まで加へた三人の判定員が固唾を呑む。傍らには激しく車も行き交ふ、白昼の歩道上にて繰り広げられる過激バトルの微妙な及び腰に加へ、審判三人組も、もう少し近くに寄つて見ろよ!とでもしかいひやうがない、ロケーションの間抜けさが可笑しくて可笑しくて仕方がない。挙句に先に達した千代君が潔く負けを認めるに至つては、マンゾウはまだしも、何しに出て来たのか画期的に判らないラッシャー三好(現在ラッシャーみよし)と山崎邦紀(現在山﨑邦紀)の木偶の坊ぶりは最早感動的。ここは登場人物のエモーションの流れとしては正方向に鮮やかでもあるにせよ、ピンクにしてはらしからぬ都合二度の血飛沫を二度目は自ら迸らせる直平誠改め直平マコ(勝手命名)まで交へて、三か月後、あくまでコンビではなくトリオの“最強のレズ軍団”が結成される大笑必至のラストには拍手喝采。浜野佐知一流の女性上位主義はこの際エッセンスのひとつと脇に措いておくとして、素直に頭か腹を愉快に抱へるのが吉といへよう頓珍漢映画のケッ作である。

 「“・わ・”→“お・わ・”→ “お・わ・り”」と幕を閉ぢる前作「痴漢電車 やめないで指先」と、「“・わ・”→“・わ・り”→“お・わ・り”→“・わ・”→ “お・わ・”→“お・わ・り”」とやゝこしく締める二作後の「痴漢電車 朝から一発」の間のミッシング・リンクを繋ぎ、エンド・マークは現在デフォルトの「FIN」ではなく、「“・わ・”→ “・わ・り”→“お・わ・り”」と打たれる。さうなると、更に間に挟まれる1989年第四作「い・ん・ら・ん 乱れ咲き」(主演:中村梨沙)は、一体如何なる終り方をしてみせるのかといふ興味も俄然湧いて来るところではありつつ、「い・ん・ら・ん 乱れ咲き」はエクセスか・・・・何とかならんもんかいな。


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