真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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痴漢通勤電車 OLたちの性/ex.DMM戦
さ行
/
2020年12月09日
「
痴漢電車 OL篇・Ⅱ
」(1993『痴漢通勤電車 OLたちの性』のVHS題/製作:アウトキャストプロデュース/配給:新東宝映画/監督:サトウトシキ/脚本:小林宏一/企画:田中岩夫/プロデューサー:岩田治樹/撮影:小西泰正/照明:林信一/編集:金子尚樹/音楽:E-tone/助監督:上野俊哉/現像:多分東映化学/録音:ニューメグロスタジオか銀座スタジオ/出演:伊藤舞・高樹麗・林由美香・紀野真人・中根徹・江藤保徳)。脚本の小林宏一はex.小林宏一で小林政広、音楽のE-toneは山田勲生の変名。何て辺りに、頓着してゐる場合でもなく。レス・ザン・情報量に改竄するどころか、驚く勿れ、クレジットが全く存在しない新東宝ビデオのど腐れ仕様に悶絶する、AV以下ぢやねえか。それゆゑ記載してゐるスタッフに関してはjmdbに概ね従ひ、ビリングはポスターに拠つた。
駅の改札と周囲の雑踏に心拍音を鳴らして、右足の靴紐が解けた足元、結べや。息を荒げてホームに辿り着いた男の首筋には、尋常でない汗。男が汗を拭いたハンケチを普通に水が滴るほど絞ると、不審がる左右の顔(不明)。ホームに電車が滑り込む、「白いパンティの女とヤリたい」、紀野真人によるモノローグ、略してキノローグ起動。曰く、ヘインズのパンティ―以下ヘイパン―を穿いた女とヤルのがコサカ保夫(紀野)の夢で、触るだけで判るヘイパンは、日本では売つてゐなかつた。それが、事実なのか否かは知らない。数人の女の尻で違ふ違ふした末に、保夫はヘイパンの女・礼子(伊藤)と巡り合ふ。最上もがな、もといいはずもがなな野暮を突つ込んでおくと、百歩譲つて触覚だけでヘイパンであると識別してのけたにせよ、それ、色が白だとは限らないよね。保夫が礼子の取り出したカッターで頬を切られる、幻影はこなれないカット割り以前に、甚大なモザイクにも遮られ甚だ判り辛い。流石にセットでハモニカまで吹いた上で、保夫は「結婚して頂けませんか」と出し抜けか藪から棒に求婚する。「それが、僕と礼子の出会ひだつた」、鐘の音先行で教会の画に、大正義メンデルスゾーンの「結婚行進曲」を被せてビデ題でのタイトル・イン。因みに新東宝ビデオに於ける「痴漢電車 OL篇」シリーズ構成的には、改題されてゐない無印第一作が、鈴木敬晴(a.k.a.鈴木ハル)1991年第二作「
痴漢電車OL篇 愛と性欲の日々
」(谷中康子と共同脚本/主演:岸加奈子)。パケには「痴漢電車 OL篇3」となつてゐる、「OL篇Ⅲ」が深町章1994年第二作「
痴漢電車OL篇 車内恋愛
」(脚本:周知安=片岡修二/主演:西野奈々美)。改めてかうして見てみると、一応正調の「痴漢電車OL篇」二作に、サトウトシキを無理からか適当に割り込ませた格好となる。
サクッと配役残り、保夫は日曜出勤の、コサカ家にお邪魔する形で二人纏めて登場する高樹麗と林由美香は、礼子の職場「アルプス化粧品」の後輩・伸子と珠美。少なくとも珠美は、一般職の制服を着てゐる。江藤保徳は昼飯時を一緒に過ごす点を窺ふに、恐らく保夫の職場「国際竹丸産業東京本社第二営業部」の同僚・木村。これまで観るなり見た限り、抽斗は一つきりしかないものの、江藤保徳の軽やかな渋味が、何となく癖になつて来た。男優部この三人の中では加速して二枚目に見える中根徹は、伸子と一緒に暮らす木村。木村がセックスの相性がからきしで別れた礼子元カレ、といふのに加へ、時期の前後は微妙ながら珠美は保夫の浮気相手で、なほかつ離婚以来二年女日照りの木村に漸く出来た新しい彼女が、伸子の二股目。だなどと狭過ぎる世間で徒にやゝこしく交錯する相関は、流石に非現実的であんまりかも。中折れた挙句会話を求める保夫を、珠美はフケツと難じる。繁華街にて保夫が交錯する、珠美が連れる新しい男に中田新太郎が飛び込んで来る瞬間、映画の絶対値が突発的に爆ぜる、ベクトルの向き乃至正負はさて措き。
ex.DMMで新東宝痴漢電車を片端から見て行くかとしたはいいが、案の定深町章特集になる、ものかと思ひきや。三本目でサトウトシキがヒットした、1993年第一作。神戸軍団(神戸顕一・樹かず・真央はじめ・山本清彦・森純)が特別賞に輝いたこの年のピンク大賞では、次作「
ペッティング・レズ 性感帯
」(1993 秋/脚本:小林宏一/主演:ゐろはに京子・林由美香)のベストテン一位に続いて、今作も五位に入つてゐる。
とは、いふけれど。木村とは対照的に、礼子と保夫がセックスの相性は抜群の反面、九分九厘問題は保夫にあると思しき、会話はまるで噛み合はず。セックスの相性と、会話の相性。手を替へ品を替へ、度々銘々の口頭に上るにしては一向に深化される訳でもない二極化は、テーマの名に値する大層な代物といふよりも、寧ろ六人―と中新―をああだかうだ動かす便宜的なモチーフに過ぎない風に、四天王の着てゐる御召物が見えない節穴には映る。それぞれ伸子と礼子を激しく求める田村と木村にはそれなりに血肉が通ふ一方、肝心要―である筈―の保夫はといふと、紀野真人の十八番と捉へるならばある意味相変らず、何が何だかな勢ひで闇雲に切迫するか、グジャグジャ惰弱に内向するばかり。終ぞ何処へも抜けないまゝに、全てを放り捨てたかのやうなラストには吃驚した。それは全体咀嚼音なのか何なのか、保夫の自閉の程度に同期してよりラウドになる謎音効も、意図的に狙つたものなのだらうが映画を不安定にする効果くらゐしか見当たらない。手数だけは多くなくもない濡れ場はことごとく短い上に、頑ななのか小癪なのかは兎も角、兎に角完遂は拒む、断固として拒む、絶対に拒否する。尺を六十分に七分も、余してゐるにも関らず。濡れ場を完遂させると、親が死ぬ呪ひでもかけられてんのか。そもそもな礼子と保夫とのに劣るとも勝らず、珠美と保夫のミーツが何気にでなく荒唐無稽。珠美がタンポンを換へる個室に、猛烈な便意に襲はれつつ、男子手洗は清掃中であつた保夫が已むに已まれず突入したところ、朝第三者に痴漢され“どうしやうもなくムズムズ”してゐた珠美に、保夫が強チンされる。アルプスと竹丸が、同じビルの階違ひとかいふ苛烈なコンビニエンスに関しては渾身の力を強ひて通り過ぎたとて、幾ら何でもそんな棚牡丹鴨葱スーパーファンタジー、林由美香のエンジェル・ボイスを以てしても、到底おいともそれとも呑み込める形に固定し得るものではあるまい。腰を据ゑて腰の砕けた艶笑譚として、端から映画の底を踏み抜くアプローチを採用するのでない限り。ペティレのベストテン一位も未だこの期に1mmたりとて理解してゐないが、同様に斯様な生えた草も枯れる代物が持て囃されてゐたのも、サトーと鈴が鳴れば涎を垂らし、トシキが転んでも笑つてゐた時代の忌むべき悪弊と、難じるほか例によつてない。
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