真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「密通の宿 悦びに濡れた町」(2019/制作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:当方ボーカル/撮影監督:創優和/録音:山口勉/編集:三田たけし/音楽:與語一平/整音:吉方淳二/助監督:江尻大/監督助手:島崎真人/撮影助手:高橋草太・日高紘貴/協力:深澤浩子/スチール:田中幹雄/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:なつめ愛莉・南涼・倖田李梨・細川佳央・森羅万象・柳東史・櫻井拓也・ダーリン石川)。
 テトラポッドを背景に、細川佳央が釣り糸を垂れるロングにタイトル開巻。何某かの影響か単なる腕の問題か、さて措きその日もボウズの雲田雄太(細川)を、屋号不明な食堂の大将・鉄川哲男(森羅)が揶揄する。その頃雄太が主人の民宿「秀風荘」では、町を離れる災害支援のジブシー作業員・表野六児(櫻井)と、秀風荘を常用するデリ嬢・米川葵(なつめ)が最後のプレイ。餞別代りに雄太が弁当を寄こす、表野との別れに政治家一家に入婿、のち町長となる雄太の兄・野村現(ダーリン)が家を出た時の回想を噛ませて、葵いはく客が来るのが一大事の秀風荘に、見るからなスメルを漂はせる春木力也(柳)と蝶子(倖田)の夫婦が現れる。春木夫妻が大略を埋め、大体四十分前後で明らかとなる顛末。国からの補助金を撒き餌に、現が誘致した絶対安全を謳つた処理場が、以後も雄太や哲男は普通にその土地で暮らしてゐはする程度の重大な事故を起こし、兎も角事実上町は死ぬ。失職した現は失踪、哲男の娘で、現と不倫関係にあつた笑子(南)は、現を捜さうと往来に飛び出した瞬間車に撥ねられて命を落とす。配役残り、後頭部しか抜かれない三人の町民要員は特定不能で特に困りもしないが、沖縄に移つた葵の客である、眼鏡のデブがEJDにしては肥え過ぎてゐないか。永井卓爾に迫る勢ひの太りやうに目を疑ひ、果たしてEJDなのか否かも自信がない。
 第二十七回ピンク大賞に於いて優秀作品賞を始め、監督×脚本×主演女優×男優賞(森羅万象)を嘗めた2014年第三作「背徳の海 情炎に溺れて」(脚本:小松公典=当方ボーカル/主演:友田彩也香)の夢よもう一度と、小松公典が社会派ごつこに戯れた竹洞哲也2019年第一作。ん?話が終つてしまつてゐるやうにも思へるのは気にしないで。
 先に裸映画的な側面から触れておくと、過去パートで大概唐突に捻じ込む二番手濡れ場の木に竹を接ぎぶりにさへ目を瞑れば、ひとまづくらゐには安定する。矢張り二番手を務めた竹洞哲也前作「田園日記 アソコで暮らさう」(2018/脚本:当方ボーカル/主演:白木優子)では画期的に脱いでゐない南涼が、二戦目の正直で漸く絡みらしい絡みをこなし、なつめ愛莉は初端から、素立ちではあれ―多分―無修正の陰毛を披露する。
 片や物語の方はといふと、何かしらヤバい廃棄物の処理場が、人が住めなくなるほどではないインシデントを仕出かした。そこまでは酌めるなり語られるものの、具体的な枠組みが何一つ、本当に一ッ欠片たりとて構築されないとあつては、如何せん話の首が据わらない。その癖、得意とする―つもりの―会話劇は一向踏み込みもしないまゝに、あるいは同一円周上で相も変らず饒舌に花盛り。外堀ばかりを飾りたて、ハリボテにすら至らない展開の本丸を見やるに、未来を喪つた町を描く以前に映画自体が未来を喪つた、性懲りもなさの印象が兎にも角にも強い。土台が笑子の死に関して、インスタントな最期をぞんざいな音声情報のみで処理する、所謂―何が所謂なんだ―キキーッ死演出はこの期に及んでどうなのよ。苔生したクリシェを逆手に取る戦法もなくはなからうが、今作のシリアス嗜好もとい志向は、その手の捻くれた笑ひを呼び込むものでも求めるところでもあるまい。ついでにダーリン石川は、町長がその小汚いパーマ頭は如何なものか、弟の方が余程しつかりしてゐる。尤も、フレームに入る物理的時間に於いて、少なくとも形式的なビリング上は下位である倖田李梨にすら南涼が後塵を拝する一方、直截に片付けると無駄話に尺を割いた怪我の功名で、主演女優を愛でる分にはそこそこ以上に申し分ない。ヒールで砂浜を走り回る、何気か健康的な身体能力の高さを披露するのに加へ、スクリーン一杯になつめ愛莉が満面の笑みを輝かせるラスト・ショットが、少々無理からでもとりあへず、一篇を爽やかに締め括つてみせるのが数少ない救ひ。


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