真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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浮気妻 寝室の覗き穴
や行
/
2016年04月10日
「
浮気妻 寝室の覗き穴
」(2015/製作:オフィス吉行/提供:オーピー映画/脚本・監督:吉行由実/撮影監督:田宮健彦/編集:中野貴雄/録音:大塚学/助監督:江尻大/監督助手:増田秀郎/撮影助手:高嶋正人/スチール:本田あきら/ポストプロ:スノビッシュ/仕上げ:東映ラボ・テック/出演:椿かなり・柳東史・樹カズ・あやね遥菜・和田光沙・井尻鯛・デカ増田・ピン希林・吉行由実・里見瑤子)。出演者中、井尻鯛・デカ増田・吉行由実は本篇クレジットのみ、要は全員演出部だ。撮影助手とスチールの間にクレジットされる選曲担当に力尽きる、瀬下といふ苗字だけで辿り着けるかと思つたが、結構大勢ゐらつしやるのね。
汗ばむ胸元と首筋を舐め、憔悴しきつた下着姿の椿かなりを、女刑事(和田)が取調べる。色気を優先させたのかも知れないが、不自然なシークエンスではある。名前を訊かれた秋元梨花(椿)が、「秋元梨花、誠の妻です」と振り絞りタイトル・イン。私称
第二ミサト
の秋元邸、会社社長である夫・誠(柳)に誘はれた、外賓を歓迎するレセプションへの出席を何だかんだと断つた梨花は、浮気相手でジャーナリスト(笑)の仁科雄二(樹)に電話を入れる。逢瀬に着て行くつもりの白のワンピースを、誠の幼馴染でもある家政婦の一ノ瀬優子(里見)がクリーニングに―梨花の指示で―出してゐたのに激昂した梨花は、ヒステリックに取りに行かせる。慌てて走る優子と擦れ違ひ、以降散発的に顔を見せる吉行由実は、秋元家お隣のタカノ、ウォーキングが日課。樹カズが「
JCVD
」(2008)以降のJCVDばりの渋味を増した色気を爆裂させる、シャワー・ルームでの濡れ場初戦。二枚目と絡む主演女優をスタイリッシュに押さへるのは如何にも吉行由実らしいカットともいへ、窓から溢れるやうに差し込む外光が、白々と飛ぶ惨劇を残念ながら回避出来てゐない。飾られた絵を外すと誠夫婦の寝室を窺へる優子の覗き穴、幼女が川に落ちただか落とされる、梨花が度々苛まされる悪夢を投げつつ、仁科が出発する一週間の九州への取材旅行にどうにかして随伴したいと思案する梨花は、セレブ臭をひけらかす自ブログにコメを寄こした、怠け者の在宅プログラマー・津川七恵(椿かなりの二役)の顔写真アイコンに注目する。
配役残り、さらだたまこが前作から使用する変名であるピン希林は、両親の去就の説明が確か見当たらない梨花の育ての親・滝山芳子。いはずもがなを憚らぬと、こちらは江尻大の変名の井尻鯛は、梨花と七恵がミーツするオサレなカフェにシュッとして見切れる、孤高のラッパーEJD、途中からは与太。何処まで温存するのか地味にハラハラさせられたあやね遥菜は、梨花をどうかした勢ひでやきもきさせる、仁科のアシスタント・楠田彩奈。もしかすると、“百鬼夜行をぶつた斬る、地獄の番犬”ことデカマスターとかけてゐるのかも知れないデカ増田―当然イコール増田秀郎―は、和田刑事に同行する刑事。何度かスナップが抜かれなくもない誠の前妻・玲子(故人)役が、画が遠過ぎて識別不能。
画期的な新機軸で甘美なる恍惚を撃ち抜いた革命作「
お昼の猥談 若妻の異常な性体験
」(主演:奥田咲・羽月希)に続く、吉行由実2015年第三作。窃視家政婦ものに、デジタル化の便利な恩恵を享受しつつ、同時にメガネ地味女ver.の椿かなりの魅力を通り越した威力を撃ち抜く替へ玉サスペンスを絡める。ものかと、思ひきや。二作前の闇鍋怪作「
お天気キャスター 晴れのち濡れて
」といひ、ことによると椿かなりには吉行由実を狂はせる魔性といつたものでもあるのか、確かに伏線は敷設済みともいへ、それまでの一切合切を吹き飛ばす終盤の破天荒には度肝を抜かれた。替へ玉サスペンスは片足突つ込んでないにせよ、公開題を見るに、恐らく当初企画では主眼であつたのではあるまいかと思しき、寝室の覗き穴に至つては完全に意義が消滅してしまつてゐる、穴があらうとなからうと関係ない。裸映画的には遅きに失した感もなくはない二三番手の連続投入は、力技の衝撃展開を無理から畳み込むには、要はどさくさに紛れ込ませるには寧ろ最適のタイミングであつたのかも知れないが、それにしても真の黒幕は理恵なのかミタなのか、それともなのかといつた辺りは、荒れたオフ・ロードを馬力頼みのダンプカーで強行突破したが如き結末なだけに、せめて座らせておいて欲しかつた感は残す。女子トークピンクの奇跡の前後で、椿かなりが魔女の扮装で高笑ふ2015年。
荒木太郎
・
清水大敬
とともに監督デビュー二十周年を迎へる2016年、
吉行由実
から何を仕出かすかと色んな意味で目が離せない。
一点些末、タカノが秋元家に自家製のパンをお裾分けに来る際にも、劇中着たきりのウォーキング・ウェアなのは、吉行由実が女であるだけになほさら、奇異あるいは一手間端折つた横着に映る。
真の黒幕は誰なのか< 右乳下の黒子の件を想起すると、誠のセンもギリギリ残るんだよなあ
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