真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「女同士の痴戯 むせび泣き」(1995『濃密愛撫 とろける舌ざはり』の2007年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:渡邊元嗣/脚本:五代暁子/企画:中田新太郎/撮影:清水正二/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:羅門ナカ/監督助手:菅沼隆/撮影助手:長谷川卓矢/照明助手:小田求/スチール:津田一郎/録音:シネ・キャビン/現像:東映化学/出演:林由美香・吉行由実・貴奈子・橋本杏子・山ノ手ぐり子・しのざきさとみ)。久し振りにつきいはずもがなを、助監督の羅門ナカは、いまおかしんじの変名。撮影助手の長谷川卓也ではなく卓矢は、本篇クレジットまゝ。出演者中、山ノ手ぐり子は本篇クレジットのみ。
 タイトルはオーラスに、田舎駅、風見まりえ(林)が降り立つ。線路をホテホテ歩き始めたまりえは、一旦追ひ抜いた女・曾根崎透子(しのざき)と、暗めの風情に入水を図つたものかと観客目線では思ひかけながら、透子が川に帽子を落とし窮してゐるところに再会する。宿を取つた二人は本格的な百合を開花、互ひにビアンである旨をカミングアウトする。心臓を患つたまりえの姉・忍(橋本)が、裸は見せずに顔だけ見せる―まりえの―短い帰省を経て帰京したまりえと透子は、まりえは絵本作家、透子はダンサー。各々の夢を追ひ駆けられてゐることを条件に、三ヶ月後の再会を約し別れる。
 配役残り吉行由実が、まりえにはスポンサーなりマネージャーと言葉を濁す、透子のパートナー・由香里。実際には婚約者に裏切られボロボロになつてゐたのを救つた縁だか恩とやらで、透子をレズビアン・バーでストリップさせる。その際の扮装がいはゆる「愛の嵐」のアレなのは、当時的には仕方なさの範疇にギリギリ納まるのかも知れないにせよ、この期に及んだ今の目からすると正直いい加減こそばゆい。それはさて措き透子と由香里が咲き誇らせる、巨山が四峰並んだ大輪の百合は圧巻。ボーイッシュな造形がこちらもむず痒い貴奈子は、こちらはまりえの同棲相手・久美。イコール五代暁子の山ノ手ぐり子は、まりえが絵本を持ち込む編集者・葉月。
 本数自体からマッタリしてゐた時代、渡邊元嗣1995年最終第三作と―残りは新東宝とENK薔薇族―この期に及んで駅前にて邂逅。何だかんだで結局約束の日の一年後に漸く、まりえと透子が再々会を果たすまでの物語。何よりユニークなのが絡みは全て百合畑に回収し、劇中男が見切れもしない点、正しく百合族映画といつた趣がある。それは兎も角、キレを失したナベにとつてベタな展開は容易に平板なダルさに堕し、三十路前にして不思議なほど美しく輝き始める林由美香も未だリファインに遠い。河原乞食の真似事を禁じられたお姫様が、月明りの下動物たちにダンスを披露する。まりえが透子をイメージして描いた劇中童話『おひめさまのダンス』の件は渡邊元嗣らしい渾身のエモーションを撃ち抜きかけつつ、全般的にはモッサリした印象に尽きる一作。まりえと久美の組み合はせで濡れ場を締めた後に、諸々の顛末込みともいへまりえと透子の再々会で正直漫然と尺を喰ふ、工夫を欠いた構成も裸映画的には地味に厳しい。


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