野外プレイ 覗きの濡れ場

　「野外プレイ　覗きの濡れ場」（2013/製作：Blue Forest Film/提供：オーピー映画/監督：竹洞哲也/脚本：小松公典/協力：エバラマチコ/撮影監督：創優和/編集：有馬潜/助監督：奥村裕介/撮影助手：酒村多緒/音楽：與語一平/協力：羽生研二/出演：吉瀬リナ・岩谷健司・毘舎利敬・倖田李梨・華田美蘭・津田篤・サーモン鮭山・沢井真帆）。出演者中、華田美蘭は本篇クレジットのみで、逆にポスターに載る華沢甘王がエンド・ロールには名前がない。協力の研司ではなくして羽生研二は、本篇ママ。
　砂浜で踊る吉瀬リナ、思つたよりボテッとしてゐる。風景に被せられる、トレジャーハンターの安藤実（津田）が妻・里奈（吉瀬）に、生まれ故郷の日本に行かうと誘ふ遣り取りを経て、足を引き摺る実が、波打ち際に追ひ詰められる。キャンピングカーの屋根の上で黄昏る里奈が、風に実の写真を飛ばされると「嘘つき」と呟きタイトル・イン。
　脈略のない配役を登場順に整理すると、倖田李梨の徒な別名義の華田美蘭とサーモン鮭山の恣な変名の華沢甘王は、事実上実の敵となる日系三世のトレジャーハンターでこちらも御夫婦、ロコ・ロドリゲスとモコ・ロドリゲス。唸り声しか上げないモコに対し日本語の達者なロコの、アテレコの主が手も足も出せず判らない。岩谷健司と毘舎利敬は、十作前となる2010年第四作「スケベな住人　昼も夜も発情中」（脚本：小松公典・山口大輔/主演：藤崎クロエ）からそのまゝの形でスピンオフする青森一郎と和歌山二郎の人呼んで血塗れ兄弟。捕らへた二人に止めを刺さうとするサーモン鮭山の二役目は、「スケベな住人　昼も夜も発情中」に於いて利き腕を潰され引退した殺し屋・八戸（も、サーモン鮭山）を自ら始末した、八戸の弟なのに九戸ではなく七戸。七戸曰く、血塗れ兄弟と八戸、それにジョンの四人が、四大殺し屋とかつては称へられたとのこと、鄭龍一ぢやないんだ。「スケ昼」前々作の「超スケベ民宿　極楽ハメ三昧」（脚本：小松公典・山口大輔/主演：赤西涼）以来久々の沢井真帆は、一同がああだかうだする近隣で御先祖様が遺した―かも知れない―埋蔵金を探す、徳川家末裔の女子大生・徳川康代。そして改めて倖田李梨は、この人もスケ昼スピンオフ、受験界の魔女といふよりは寧ろ魔人・京大東大子。
　昨今訳の判らない勢ひで畳みかける、小倉に飛び込んで来た竹洞哲也2013年第一作。三月封切りのガッチガチの新作が、どうして三ヶ月と経たずに関門海峡を渡るのか、直営館に毛を生やした早さだ。竹洞組が十八番とするのか自家中毒に陥るとするのかはよくいへば議論が分かれる、錬度の概ね低い有象無象が他愛なくすらない空騒ぎを繰り広げるキャラクター劇に、里奈・実夫妻の“宝”を軸とした浪花節を無理から捻じ込んだ一作ではあるのだが、直前に八幡で生煮える2012年第四作を観て来たのが不幸中の禍と作用したのか、案外のんびりと楽しめた。尤もその点に関しては、映画の出来不出来といふよりは、それぞれの観客のその時々の気分なり体調に全く支配される、純然たるランダムな匙加減に過ぎないやうにも思へる。キレを欠いた主演女優と、造形の適当なロドリゲス夫妻は綺麗に機能不全。津田篤は、案外蚊帳の外。トレジャーハンターだ殺し屋がワラワラ出て来る割には、意欲と能力を共に激しく欠いたドンパチ的な丁々発止の酷さは、筆舌に尽くし難い。反面、岩谷健司と毘舎利敬は二枚揃ふと強さを発揮し、倖田李梨は高打率のマシンガン・トークで気を吐く。予想外といつては失礼だが光つてゐたのが、エンド・ロールに際しても何気に吉瀬リナを喰つてみせる沢井真帆。三年ぶりのピンク帰還に加へ、そもそも初陣から数へれば何と六年といふ意外に長いキャリアを誇る割には、過去最高に若々しく弾けて見えたのは気の所為か。猿化した二郎を相手に、康代がネタ上も裸的にも、結構美味しいところを持つて行く。