真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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いんらん母娘 ~ナマで愛して~
深町章
/
2013年06月14日
「
母と娘 よがり比べ
」(2001『いんらん母娘 ~ナマで愛して~』の2013年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:武田浩介/企画:福俵満/撮影:清水正二/編集:酒井正次/助監督:佐藤吏/スチール:津田一郎/録音:シネキャビン/現像:東映化学/出演:河村栞・佐々木ユメカ・佐々木麻由子・かわさきひろゆき・佐藤幹雄・なかみつせいじ)。
元刑事の西村(なかみつ)は、丸腰のヤクザ者・尾崎(影も形も現さず)を殺害した罪で四年間服役。尾崎の情婦であつたのを事実上寝取つた格好の美雪(佐々木ユメカ)を伴ひ、出所した西村は死に場所を探し求めるつもりで故郷の山町に戻り、旧家民宿「
水上荘
」に逗留する。一方同じ山梨県甲州市は塩山、女遊びに明け暮れる夫に愛想を尽かし、平野直子(佐々木麻由子)は娘の亜弓(河村)を連れ帰郷。田舎の高校に馴染めず中退してしまつた亜弓は、夜の街で働き、父親と同じやうに客の男と遊んでゐる風にしか見えない直子の一見自堕落な姿にも思春期加速で過剰に反発、家を飛び出す。実は尾崎の敵討ちをする腹であつた美雪を一旦斥けた西村は山中、好きなだけ飲み食ひした後に首を吊るつもりであつた、亜弓と出会ふ。
配役残り登場順にかわさきひろゆきは、直子懇意の客・斉木。いはゆるよくある話といふ奴で、直子は二人で開く店の資金にと、預金通帳を斉木に渡す。普段通りの佐藤幹雄なのに案外田舎町にも馴染む佐藤幹雄は、亜弓の―退学したゆゑ元―同級生・和也。
深町章2001年全六作中第二作、最終的には袂を分かつた武田浩介を脚本家に擁し、各々居場所を失ひ偶さか巡り合つた少女と男に、思はぬ運命が悪戯する、新旧共々ヌルいタイトルには反し―といふか、公開題が反するな―正攻法のシリアスな一作。開巻最初の濡れ場直前に美雪が投げる、「ここがアンタの生まれ故郷か、誰か会ひたい人でも居るの?」といふ台詞が、ズバッと利いて来る終盤の大技は絶品。超絶の投球を放り込んだ、見逃し三振にも似た極上のカタルシスを味はへる。直子と西村がそれぞれ背負ふ人生の重さは、清水正二の熟練を借り一幕一幕に深みを与へる。そこまではよしとして、佐々木麻由子となかみつせいじ、脇を固めるのも佐々木ユメカや佐藤幹雄らを向かうに回し映画の看板を担はせるには、未完は未完にせよ大器の名には値しなかつた河村栞には、些か荷が重からう。やさぐれ少女気取りが、佐藤幹雄のメソッドに引き摺られてゐるやうにしか見えない。ラスト・シーンも娯楽映画に於ける拳銃信仰が、流石に無造作ですらある。それと地味なのか派手なのかもう一点、和也二度目の登場時が、最初とは別の日であることを示す手続きが亜弓の若干違ふ服装以外に存在せず、一手間足らぬ繋ぎは結構判り辛い。同年四ヶ月後の「トーキョー×エロティカ 痺れる快楽」(監督・脚本:瀬々敬久)を思ひ切つてピンク映画には含めないとすると、小川隆史が積年の若気を拗らせた「
社宅妻 ねつとり不倫漬け
」(2009/主演:小池絵美子)を除けば意外にも唯一となる麻由子×ユメカのツイン佐々木共演作は、それなりには攻め込めどそこそこのところで立ち止まりもする。
尤も、麻由子×ユメカ初共演作とはいへ、劇中直子と美雪が顔を合はせるカットはない。リアルタイムに小屋で一度観たきりの「トーキョー×エロティカ」のことは忘れたが、もしかすると基子も加へたトリプル佐々木が開巻にてジェット・ストリーム・アタックを敢行する「社宅妻 ねつとり不倫漬け」が、佐々木麻由子と佐々木ユメカが同一フレーム内に納まる唯一の作品となるのかも知れない。
もうひとつ今回、初物トピックを有した今作を
佐々木麻由子映画出演100本記念作品
と同じ三本立てで観た。有楽め、乙な番組を組みよる。もう一本のエクセス枠は高密度エロ映画、山内大輔の「
厚顔無恥な恥母 紫の下着で…
」(2007/主演:花野真衣)。
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