真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「淫蕩告白 兄嫁の濡れた午後」(2012/製作:Blue Forest Film/提供:オーピー映画/監督:竹洞哲也/脚本:小松公典/撮影監督:創優和/編集:有馬潜/助監督:小山悟/監督助手:奥村裕介/撮影助手:重田純揮・酒村多緒/音楽:與語一平/出演:宮村恋・倖田李梨・桃井早苗・津田篤・岡田智宏・岩谷健司・野村貴浩・玉城誠)。
 田舎駅のホーム、津田篤がスマホを弄る。表示されるスナップ写真は、順に桃井早苗・倖田李梨・岩谷健司・岡田智宏。主演女優の背中越しに、電車が駅に入る。口元を抜いて、タイトル・イン。
 退院後も松葉杖の世話になるフリーカメラマン・百田光(津田)と、業の深さを感じさせる配役が絶妙な、担当―であつた―看護婦・笹本彩(桃井)の情事。事後、田舎で農業を営む光の父親が、急死したとの報が飛び込んで来る。そんなこんなで大概ぶりの帰省、光を出迎へたのは、見知らぬ喪装の宮村恋。光が携帯を止められてゐた二年前、農家を継いだ兄・力(岡田)は奈々(宮村)と結婚してゐた。だから、現に現在は連絡が取れる以上、よしんば義姉とは初対面にせよ光が兄貴の祝言を知らなかつたといふのは、不必要な無理としか思へない。かくいふ小生も親不孝ぶりには自身がある―要らねえよ―が、妹の結婚式くらゐには―渋々―出てゐる。
 倖田李梨は、当時実は尺八までなら吹いて貰つた甘い秘密もある、光高校時代の教育実習生・旧姓不明の志穂。岩谷健司が志穂の夫、兼光高校時代の担任・高城玲二。玉城誠と同じくヨギプロダクション所属、といふか要は先輩格の野村貴浩は、光と連絡が取れず東京で荒れる彩に、声をかけるアンケーター。彩が加速する段取りの中、ゴム尺―だけ―を吹かれる背中しか見せない若い男は不明、定石からいふと演出部動員か。
 当人にはその気が全くないといふのに、力は光に、光にも農家を継ぐことを強ひる。自らが駆けつけ未遂に終つたものの、志穂がレイプ被害に遭つて以来、玲二は熱心に夜回りに参加してゐた。妙に厳重な奈々の戸締りも、光は気に留める。こんなそんなで昨今開けて来た田舎町に暗い影の漂ふ一方、力は町の青年団の団長に就任。以前よりも増えた力が家を空ける時間、光は奈々と何となく距離を近めて行く。
 先に小倉に飛び込んで来た第五作「三十路義母 背徳のしたたり」(脚本:エバラマチコ/主演:結城みさ)に一ヶ月遅れて、八幡に辿り着いた竹洞哲也2012年第四作。ひとまづは、「三十路義母」に於いて心許ないこと甚だしい初陣の結城みさに対し、手慣れた風情を窺はせた宮村恋は、初戦の今作から既に十二分に安定してゐる。大雑把にもほどがある乱暴な纏め方をしてみせると、二週間後に封切られる吉行由実の「新婚妻の性欲 求める白い肌」(表主演:羽月希/裏主演:上加あむ)と同様、最後の最後で全体を引つ繰り返し観客をハッとさせる趣向の一作。毒づきのソリッドさは確かに鮮烈なラストの強度は、そこだけ掻い摘めばそれなりに申し分ない反面、不用意ないしは不可解な点も少なくはない。木に竹を接ぐばかりの彩が募らせる、より直截には拗らせる狂気の愛に関しては、薮の蛇を突く枝葉に過ぎぬゆゑさて措くほかはない。光がスマホを紛失する一手は、それは果たして本当に必要なのかといふのと、最大の疑問は、光と玉安彩生(玉城)との遣り取り。光が松葉杖で、玉安を半死半生に追ひ込む非現実的な戦闘力は兎も角としても、ポワロどころの騒ぎではない千里眼を発揮した光が告白はされない兄嫁の濡れた午後を洞察してゐたとするならば、その後の遣り取りが全て、都会とカメラを捨て田舎で土に塗れる圧力に対する回避まで含めて、秘かに真実を手にした実は光の一人勝ちといふ格好となる。斯様に底意地の悪い、屈折した結末は果たして如何なものか。全てをつつがなく流す見解といふものも存在するのかも知れないが、己の粗忽も棚に上げ理想の名を借りた空理空論を振り回すと、どんなバカにでも判るやうに作ることが、量産型娯楽映画として然るべき姿でもなからうか。最後の濡れ場が回想であることの判り辛さ込みであちらこちらの未整理ないしは不手際が、フィニッシュの切れ味を些か減じたやうに見受けるところである。


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