真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「ザ・不倫ホテル ‐中出し熟妻‐」(2003『熟女たちのラブホテル 玉いぢり』の2011年旧作改題版/製作:サカエ企画/提供:Xces Film/監督:新田栄/脚本:岡輝男/企画:稲山悌二《Xces Film》/撮影:千葉幸男/照明:小川満/編集:酒井正次/助監督:小川隆史/音楽:レインボーサウンド/監督助手:北村隆/撮影助手:池宮直弘/効果:梅沢身知子/製作進行:阿佐ヶ谷兄弟舎/出演:夏木志保・しのざきさとみ・佐々木基子・なかみつせいじ・岡田智宏・高橋剛・丘尚輝)。
 山の手―描写は特にはないのだが―暮らしの主婦・木村晴子(夏木)は、夫の昭男(なかみつ)がリストラされた為、緊急出撃で初めてのパート勤めに。知つた人と会はないやうにと晴子が選んだのは、大胆にもラブホテル「LUNA PARK」。舞台設定込み込みで一足はおろか三足ばかりカッ飛ばした方便が、ピンク映画的で実に清々しい。「LUNA PARK」支配人・野沢英介(丘)も、勤務内容はといへば清掃が主だといふことで、当然未経験の晴子を気軽に採用する。「406、406・・・・」と後始末すべき部屋のナンバーをたどたどしく暗誦しておいて、大絶賛事の最中の405号室に文字通り闖入してみせる一応ポップな小ネタを挿みつつ、慣れない仕事にも晴子はひとまづ奮闘する。そんなある日、下手な親子ほどにも歳の離れた、関口凪子(しのざき)と山田公一(高橋)のカップルに、晴子は目を丸くする。事務所にて、凪子らにルームサービスで届けた極太その他のバイブを拭き清める晴子の手先から、欲求不満の気配を察知した野沢が蛮勇の斜め上を迸らせその場で手をつける一幕も、ここはデフォルトの勢ひで設けられる。野沢が晴子ににじり寄りながら、カーテンを後ろ手でシャッと閉める動作の高床式ばりな底の浅さは絶品。底の抜けたシークエンスに突入するに際して、それでもそれなりの不自然な自然さは、ある意味新田栄ならではといへばならではではある。
 佐々木基子は、晴子が片付け中の部屋に入室する形で、終に鉢合はせてしまつた御近所の神保千加子、商社社長夫人である。岡田智宏は神保商事(仮称)社員、同時に千加子間男の川井秀樹。慌てて退室しようとする晴子を、千加子は引き止める。二人は、見られてゐないと燃えないマニアさんであつた。
 開巻即座に詰んだ映画を、最後に改めて詰み直してみせる、悪い意味で律儀な一作。瞬殺のチェック・メイトを別の意味で華麗に叩き込むのは、いふまでもなくこの場合エクセスライクな主演女優。夏木志保の、シベリア鉄道よりも真直ぐな棒読みには、グルッと一周した上で明後日に振れた感興を覚えぬでも、この際病膏肓に入るに至つてはなくもないが、その時点では未だ妻に打ち明けられずにゐた―翌朝白状する―失業による失意から、未遂に終る冒頭最初の濡れ場の夫婦生活。直截に筆を憚らぬが、逆の意味で見事に萎んだ夏木志保の乳には愚息も力なく萎えるどころでは済まなかつた。なかみつせいじが引張ると、乳輪から先が妙によく伸びる伸びる。そんなギミックを見せられたとて欠片も嬉しくない、ゴムゴムの実でも食つたのか。一言で片付けるならば、何処から連れて来たんだよこんなババア(#゜Д゜)、といふ寸法である。木戸銭を落として観に来た商業映画にも関らず、エクセスのこの非道な仕打ち。いつそ枯れ果てよ、我が涙。ところでよく判らないのが、夏木志保に関してグーグル先生に尋ねてみたところ、夏木志保がイコール愛川京香とする記述がチラホラ出て来た。ところが、愛川京香とはいへども今作の愛川京香と、荒木太郎の「妻のいとこ 情炎に流されて」(2006/主演:平沢里菜子)に於いて三番手を担ふ、a.k.a.紅蘭の愛川京香とはレッドな別人。これは何か?愛川京香名義で活動する人物が、二人以上存在するといふことなのであらうか。閑話休題、果敢に気を取り直しその後の展開に喰らひつくと、佐々木基子初登場時に読める落とし処の、娯楽映画らしい論理性は本来ならば磐石、であつたものなのに。返す刀で凪子と山田の平素の姿をスマートに織り込む手際にも、実は実直な新田栄の地力がさりげなくも鮮やかに看て取れる。で、あるにも関らず、そのまま素直に畳めばいいものを、確かに尺を大きく余らせた気配も窺へるとはいへ、更に以降の夏木志保が男優三冠を余計に達成する、対岡田智宏戦は万里の長城並みに長大な蛇足感を不完全無欠に爆裂させる。序盤に伏線も敷設済みであることが逆に火に油を注ぐ、晴子未経験の潮噴きを回収する一手間も設けられるものの、斯様な惨劇紛ひに端から意味なんぞないことなどこの期に論を俟つまい。直前に置かれた完遂される木村夫婦の営みで、始終は全く問題なく綺麗に纏まつてゐた筈だ。


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