真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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愛人OLゑぐり折檻
さ行
/
2011年12月18日
「
愛人OLゑぐり折檻
」(2011/制作:《有》大敬オフィス/提供:オーピー映画/制作・出演・音楽・脚本・監督:清水大敬/撮影:井上明夫/照明:小川満/美術:花椿桜子/音楽:サウンド・チィーバー/編集:酒井正次/助監督:作石敏幸/撮影助手:河戸浩一郎/照明助手:八木徹/演出助手:高橋緒出樹/スチール:山岡達也/協力:劇団ザ・スラップスティック、他/出演:藤崎クロエ・艶堂しほり《特別出演》・倖田李梨・大黒恵・羽田勝博・なかみつせいじ・山科薫・柳東史、他)。出演者中、大黒恵その他は本篇クレジットのみ。
朝の(株)山口商事、後のカットを見るに受付も兼務すると思しき警備員の石山(羽田)が、無造作にゾロゾロする頭数もぼちぼちな社員要員を一礼で迎へる。一群に続き出社した、部長の鮫島(なかみつ)は邪険も通り越し露骨な敵意を石山に剥き出しにし、更に続けて現れた金山弘美(藤崎)は、食生活をコンビニに支配された石山の為に、わざわざ作つて来て呉れた野菜サラダを手渡す。昼間のあれこれを経ての仕事終り、鮫島は元々愛人を囲ふ為に用意した借家である弘美宅に、退院した病母(大黒)が居るといふにも関らず構はず上がり込むや、聞こえよがしに弘美を犯す。無体極まりない所業ではあるが、しかもどちらかといふと憂へた表情がより魅力的であるやうにも思へる、藤崎クロエの超絶ボディが恣に蹂躙される一幕には、品性下劣な下衆ピンクスとしては魂の底の方をそれでも揺さぶられずにはをれない。忘れずにデス後は地獄に堕ちるんだぞ、俺。出し抜けに得意のダンスをメキメキ披露する倖田李梨が、先刻までとは様相を一変させ恐々帰宅した鮫島を待ち構へる。既に故人である、山口商事創業者の前社長(不明)の娘・恵子(倖田)は又しても
初登場時が排卵日
で、婿が弘美と一戦交へた直後だとは当然露知らず、子作り機運全開の夫婦生活を食事も風呂もさて措き敢行する。ところで、一篇丸々観終へた後に気付いたことだが、如何にも悪役らしい名前をつけたかつた気持ちは判らぬでもないが、入り婿である以上、普通に考へれば劇中なかみつせいじは山口姓ではないのか。清水大敬に対して、そもそも普通を求めるのがお門違ひ、といふ気もしないではないが。話を戻して、関係の終局と退職を再々切望する弘美に、激昂した鮫島が社内で暴力を働いた現場に、石山が割つて入る。弾みで派手に突き飛ばされた鮫島が、それ見たことかと我が意を得かけたところに、黄門様よろしく恵子登場。これは弘美は知らない因縁であつたが、資金繰りに窮した恵子父の前社長は手形詐欺に引つかかり、舎弟(こちらも不明)を連れたヤクザの沢木(柳)が山口商事に乗り込んで来る。その場に居合はせた当時沢木からは兄貴分の石山は、任侠道に反した沢木の遣り口を頑として肯ぜず、揉み合ひとなり突き飛ばした舎弟を死なせてしまふ。結果騒動は収まつたものの、石山は十年の臭い飯を喰ふ。服役後、いはば恩人の石山は警備員といふ形で山口商事に迎へ入れられたものであつた。浮気が発覚した鮫島は恵子に放逐され、目出度し目出度しと一旦相成つたのも束の間。正しく逆恨みの治まらぬ鮫島は、今や一家を構へる沢木に接触する。沢木は山口商事前社長の秘書で、かつて石山とも淡い恋愛関係にあつた美樹(艶堂)を、薬漬けにした上で性奴隷として虐げてゐた。かうして改めて振り返つてみると、起承転結の転部までの構成は、実は案外順当であるのかも知れない。
主要出演者中残り、清々しく木に竹を接ぐ配役の山科薫は、一応次期社長最右翼であつた鮫島不在の山口商事に、名目上は専務の恵子から招かれる、に止まらない経営コンサルタント・吉川正博。
珠瑠美の新版公開以外では初めて観た、jmdbのデータによれば「制服凌辱 狙はれた巨乳」(1998/脚本・監督:清水大敬/未見)以来となるらしい、羽田勝博十三年ぶりの銀幕復帰作。だからといふ訳があるのか別にないのか、寡黙な硬骨漢といふ役柄ともいへ、流石に少々硬い。序に、男主役でありながら、山科薫ですら与る絡みの恩恵にも、何故だか終に無縁。物語的にはひとまづ、鶴田浩二かはたまた高倉健か、不器用な―のと同時に戦闘スペックは高い―義侠の徒が、仁義を欠いた腐れ外道相手に積もり積もらせた怒りを爆発させる、仁侠映画最定番のフォーマット通りのものではある。下手に自分で一から十まで考へようとはしてゐないだけに、新味なり工夫の半欠片も見当たらない罪は否定し難いともいへ、その分致命的に仕出かすことを回避し得た逆説的もしくは消極的な功の方が、清水大敬の場合には上回るといふ甘目の評価が妥当なのではなからうか。加へて、隈なく頓着無い一部始終の中、純然たる繋ぎのカットを除けば、全篇無茶振り倒す演出匙加減のてんでへべれけ具合が、グルッと一周して逆に面白い。宇宙規模でよくいへば、ギターウルフのスーパーライト的な味はひがある、かな?清水大敬の、直截には出鱈目にも柔軟にあるいは従順に対処可能ななかみつせいじと柳東史の過剰演技は、元々明後日の映画を、明後日のままでもなほかつ加速する。殊に、感動的にカッコよく且つ間の抜けた沢木の死に際は絶品。「
性交エロ天使 たつぷりご奉仕
」、「
スケベな住人 昼も夜も発情中
」(共に2010/監督:竹洞哲也/脚本:小松公典・山口大輔)に続き三作目のピンク映画出演、兼主演作となる藤崎クロエとしても、桃色方面に於いては三度目の正直。観客の腰から下を撃ち抜く、即物的な煽情性には決して長けぬ竹洞哲也と比して、今回はより直截なAV畑でも名を馳せた清水大敬。男達の獣欲に藤崎クロエの豊満な肉体が乱暴に汚される邪なエクストリームは、ひとまづフルスイングで堪能させて呉れる。そんな中でも、見苦しく肥えた沢木組構成員(だから不明)も伴なひ、回想込みで劇中三度目の鮫島による弘美陵辱に際しては、しやぶれと吠えた直後に二穴責めしてゐたりなんかする。
顔射宣告から二、三度腰を振ると中に出す
やうなシークエンスを平然と撮つてみせる、清水大敬ならではのフリーダムが苛烈な濡れ場の最中相変らず垣間見えるのは、この期には一雫のチャーミングだ。最終的に弘美が結ばれ幸せを掴むお相手に、文字通り親子ほど歳の離れた清水大敬がのうのうと大将自ら出陣する―但し、夜の山口商事で石山を昏倒させる沢木手下も、多分清水大敬の二役―自堕落さは土台呑み込める筋合のものにはなく、余程清水大敬的には大切にしてゐるテーマなのか、わざわざ字幕にしてまで提出される、「生きてさへゐればいつかは、きつといい事がある・・・」(原文は珍かな)だなどといふ凡そ喰へない以前に、根本的に過てる―要点だけを述べると、何にもいい事なんてありはしない者の為にこそ、映画は作られるべきではないのか―メッセージに関しては、断じて固く絶対にこの甚だ安き命ある限り、到底首を縦には振れぬ。とか何とか野暮を強張つて言ひ募る割には、間違つても出来自体大したことはないどころでは済まぬ筈なのに、何となく妙に楽しめてみたりもする。不思議な一作である、といふよりは、矢張り単に小生が何処までも疲れ果ててゐるだけなのかも知れない。
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