真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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痴漢エロ恥態 電車・便所・公園
か行
/
2011年12月09日
「
痴漢だらけ 電車も、トイレも、公園も
」(1998『痴漢エロ恥態 電車・便所・公園』の2011年旧作改題版/製作:フィルム・ハウス/提供:Xces Film/企画:稲山悌二/プロデューサー:伍代俊介/脚本:有馬仟世/第一話『電車の痴漢』監督:勝利一 出演:風間今日子・村上ゆう・山内よしのり・吉田祐健/第二話『女子トイレ・盗撮』監督:坂本太 出演:浅倉麗・佐々木基子・山本清彦/第三話『公園の痴漢』監督:佐々木乃武良 出演:桜井倫子・葉月螢・樹かず・真央元/撮影:創優和/照明:藤塚正行/助監督:加藤義一/製作担当:真弓学/監督助手:竹洞哲也・細貝雅也/照明助手:荒木一也/効果:東京スクリーンサービス/編集:金子尚樹《フィルム・クラフト》)。出演者中、山内よしのりがポスターには山内健嗣、別名義である。葉月螢は、同じく葉月蛍、こちらはエクセスの横着。何れにせよ、フリーダムな世界である。商業映画のキャストの名前が、パブリシティに正しく載つてゐないとは。それはそれとして、今回は珍しく、新題が実にスマートだ。
第一話「電車の痴漢」、安田秋子(風間)の朝。起床一番、秋子は山ノ内商事九州支社に単身赴任中のダーリンに、惚気倒したモーニング・コールを入れる。正直清々しく、ギャグとしてでなければ風間今日子には似合はないシークエンスではある。とはいへ、新居の三十年ローンも抱へ、別の会社のOLとして共働きの秋子には悩みがあつた。それは、二ヶ月前から毎朝通勤電車の中で遭ふ、同じ男からの痴漢行為。けふも手の中に射精された秋子は、食欲もないとはいひつつ菓子パンをムシャムシャ喰ひ牛乳を1ℓパックから直でグビグビ飲みながら、友人で風俗嬢の森下純(青木)に相談する。素直に純は警察に相談してみてはといふが、さうも簡単には話が進まない。何故ならば痴漢氏の正体が、夫・守雄(山内)が一時帰京した際に自宅に連れて来た、上司の山下光輔(吉田)であつたからだ。金融絡みで粗相を仕出かした現社長の退任に伴なふ、守雄・山下と同じ大学出身である若林専務(後述)の新社長就任が確実視される、といふことは順繰りに守雄の出世とあはよくば本社帰還も期待出来なくもない中で、不用意に秋子が事を荒立てる訳には行かなかつた。山ノ内商事が、自身が働く店をよく接待で使ふことに思ひ至つた純は、画鋲ローターなる凶悪に物騒なギミックも無邪気に持ち出す一計を案じる。造作は全く遜色ないと同時に芝居のスキルは綺麗にゼロな、純が召喚する若林専務役の、とりあへず上品な初老の男が何者なのかは不明。
第二話「女子トイレ・盗撮」、「HORAビルヂング」OLの秋山弥生(浅倉)は、出入りする「マツミヤデンキ」の電気工で女の排泄の匂いに異常に興奮する、今村正人(山本)に盗撮がてら個室の中で犯される。事後、女の啜り泣きを前に我に帰つた今村を、弥生は言葉巧みに篭絡、アグレッシブに意地悪な上司の上島令子(佐々木)に対する犯罪的な、といふかそのものでしかない復讐を企てる。山ノ内商事若林専務(第二話に登場はせず)との商談を前に、令子を女子トイレに誘き出す段取り。令子に所望された白湯に下剤は兎も角、イチジク浣腸も混ぜるのは、それは経口でも効果を発するものなのか?ともあれ腹を下せば、結果的にはそれで構はないのかも知れないが。令子と今村を首尾よく纏めて葬り去り、意気揚々と社内を闊歩する弥生に、男性社員(竹洞哲也)が弥生宛の郵便物を届けに来る。中身は、弥生の痴態写真も掲載された投稿写真誌―ありものの雑誌に、スナップをベタ貼りしただけの代物―であつた。ところで第二話冒頭の、今村の御眼鏡には適はない、秋子の前に用を足す女が誰であるのか確認し損ねた。普通に考へれば佐々木基子とならうところだが、背格好からは、村上ゆうに思へなくもない。
第三話「公園の痴漢」、有美(桜井)はセックスのあまり上手ではない彼氏・政紀(樹)と青姦中、今日は妙に感じるかと思へば、何のことはないといふか何ととでもいふべきか、痴漢(真央)に触られてゐた。気付かれた真央元は慌てて逃げ出すが、山ノ内商事社員・浅岡春彦であることを示す社員証を落として行く。またしても山ノ内商事、どれだけの巨大企業なのか。友人・深幸(葉月)の家に遊びに行つた、有美は驚く。何やら事の最中と思しき様子に覗いてみたところ、深幸のお相手が浅岡であつたのだ。覗いてる時点で、人の痴漢行為をとやかくいへた義理にもないやうな疑問は強ひて一旦さて措き、浅岡が痴漢であることを証明する為に、政紀と深幸が―擬似で―野外で致す現場に、有美が浅岡を連れて行く。などといふ、清々しく底の抜けた状況をわざわざ設定したところ、何時の間にか二組のカップルによるスワッピングが正しく藪から棒に成立する。
互ひに尺の配分も均等な三監督によるオムニバス作といふと、「
人妻不倫痴態 義母・未亡人・不倫妻
」(2001/監督:しのざきさとみ・小川真実・佐倉萌/脚本:有馬仟世)、「
白衣の痴態 -淫乱・巨乳・薄毛-
」(2002/監督:坂本太・佐々木乃武良・羽生研司/脚本:佐々木乃武良)がひとまづ想起される。ここでさりげなく特筆すべきは、「人妻不倫痴態」の中で「第三話 不倫妻」(出演:佐倉萌・しらとまさひさ・岡田智宏)を担当した佐倉萌と同様に、今作が、勝利一と佐々木乃武良にとつてそれぞれ監督デビュー作となるといふ事実。尤も、だからといつて勝利一なり佐々木乃武良的に、どうだかうだと指摘し得るほどの特徴は、これといつても何も快晴の空の雲のやうに見当たらない。尤も尤も、電車痴漢といふ現代ピンク映画に於けるマスト・モチーフと、風間今日子のオッパイで魅せる第一話。頓珍漢な物言ひにもなるが、十八番の好青年ならぬ好変態に扮した山本清彦(a.k.a.やまきよ)が、大活躍もとい大暴れする第二話。展開自体の中身はへべれけながら、後述するフィニッシュが絶品の第三話。各篇の特色も鮮やかに、抜群の好テンポでサクッと一息に観させる、お気楽な娯楽に徹した裸映画ポップ・チューンの偉ぶらない多分傑作。別にバラバラのままで済ませておいても問題なからうところを、山ノ内商事を極細の縦糸に、全三話を一応首の皮一枚繋げてみせた小技も、何気なく光る。第三話の、即ちオーラス中のオーラス。有美と深幸の痴漢を難じるシャウトを合図に、周囲に潜んでゐた五、六名の痴漢・覗き師軍団が姿を現し綺麗に蜘蛛の子を散らすラスト・ショットは、オチとしての面白さだけでなく、まるで女神が微笑みかけたかのやうに映画的な完成度も高く、三篇による一篇を完璧な強度で締め括る。
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