真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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駄楽ひまなときブログ
行きつけのお店のブログ、下戸なのに。しかも閉めたんだけどね
ツイッタ
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友松直之のブログ
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SHIN氏のブログ、ピンク映画啓蒙運動も展開中
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自己紹介
福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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豊丸の変態クリニック
浜野佐知(的場ちせ)
/
2011年03月24日
「
豊丸の変態クリニック
」(昭和63/製作:旦々舎/提供:Xces Film/監督:浜野佐知/脚本:山崎邦紀/企画:稲山悌二/撮影:稲吉雅志・鈴木一穂/照明:秋山和夫・田中明/音楽:藪中博章/編集:金子編集室/助監督:毛利安孝/録音:ニューメグロスタジオ/現像:東映化学/挿入歌:『抱いて燃えて、男と女』マドンナメイトカセット文庫『豊丸』より《二見書房刊》/出演:豊丸・愛沢良子・平口広美・日比野達郎・小室河童・平賀勘一・久須美欽一・山崎邦紀・世良福助・ラッシャー三好・栗原早紀)。出演者中、世良福助は本篇クレジットのみ。
古めかしい巨大ワープロをカタカタ叩く、ライターの脇田朗子(栗原)が夜はライブスポットの歌姫としてステージに立ち、昼間は自身が開設するクリニックで異常性癖者揃ひの患者の相手をする、朱丸の正体を暴いてみせると誓ふ。タイトル・イン明け、後に扉も抜かれるライブスポット「POTATO」にて、殆どどころか完全に下着の破廉恥衣装の朱丸(豊丸)が、持ち歌「抱いて燃えて、男と女」を気持ち良ささうに披露する。悩ましい嬌声も織り交ぜ、男女の性の悦びを高らかに謳ふ当該楽曲は、豊丸に正しく捧げられたであらう風情も麗しい、セクシー歌謡の時代の波に埋れた名トラック。結構潤沢に人の集ふ「POTATO」店内に日比野達郎がゐるのは兎も角、その他ラッシャー三好と、サトウトシキ作に出演した形跡の見当たる世良福助も観客要員と推定されるが特定不能。代つてといふ訳ではないが、
翌年の浜野佐知痴漢電車
にも登場する小多魔若史と中村憲一、あと鈴木静夫が見切れてゐるのは視認出来た。朱丸クリニックを、マゾのホモで露出症のプロレスラー・朝木洪太郎(平口)が訪ねる。一方的にやられるだけの状態に快感を覚えてゐては出世出来ないと朝木は悩むが、少なくとも現在の感覚でいふと、それはそれで、ギミックとして十二分に成立し得るやうにも思へる。あの豊丸にしては随分と大人しい、プロレス風味以外は普通の濡れ場を通して朝木を奮ひ立たせるのに首尾よく成功した朱丸を、朗子が急襲。クリニックだなどと名ばかりで、実際に行はれてゐる行為は風俗店と変りないのではないか。と至極全うな疑問を単刀直入に切り出す朗子に対し、朱丸は患者との守秘義務を盾に取材拒否。靴フェチでマザコンの国立大学助教授・洲崎渇彦(日比野)とのこちらも通常戦も経た朱丸に、「POTATO」客席から乳を放り出し挑発した、露出狂女の作夜姫(愛沢)が接触する。自らの倒錯を肯定し、それを治療しようとするのが気に喰はぬと、オッパイだけでなく敵意も露な作夜姫を、「治すのが目的ぢやない」とする朱丸はひとまづ自陣に迎へる格好に。そんな朱丸クリニックの次なる患者は、露出の衝動に苦しんで、ゐるやうには別に見えない、嬉々と己の変りぷりを語る様が逆の意味で清々しい、少女マンガ家の泉田洋一(小室)。ヴィジュアル上はほぼ加藤賢崇の小室河童の素性は全く掴めないが、時期的に、小室直樹とカッパ・ブックスとを合はせて捩(もぢ)つた名義でなからうかとは推測される。作夜姫と泉田を引き連れ、ストリーキングを敢行した朱丸のある意味雌姿もとい雄姿を、こゝぞとばかりに朗子が激写。信義を重んじ一旦は拒んだものを、脅迫気味に内情を聞き出した洲崎への突撃の成果も踏まへ、朗子が『週刊JAPAN』から発表した朱丸の告発記事は大きな反響を呼ぶ。喜んだ編集長の石井(山崎)が朗子に、直ちに第二弾記事に取りかゝるやう促す一方、クリニックには、正体不明な立ち退きを強要する柄の悪い二人組(平賀勘一と久須美欽一)が現れる。クランケもしくはクライアントへの対応にも追はれ、朱丸は俄に窮地に立たされる。
女王の座に豊丸を戴いた、旦々舎一流の変態博覧会は、やがて単なる内トラ(内部エキストラ)に過ぎないのかと事前には思はせた、山崎邦紀の予想外の活躍も機に、超強力な娯楽映画へと上り詰める。蛇の道は蛇とでもいふべきネットワークを駆使し、朱丸は石井が、“荻窪の優子”女王様の奴隷である事実を突き止める。恥づかしいプレイ写真を突きつけられ、呼び出された石井がクリニックを恐々訪れてみると、朱丸はちやうどその時、二度目に来訪した平賀勘一と久須美欽一に、何故か素直に犯されてゐる最中であつた。それまで頑なに温存し溜めに溜めた、昨今虹の“アヘ”文化への惨事に遠く遡つた起源を窺はせなくもない、錯乱したかのやうに痴語を喚き倒す豊丸メソッドに満を持して火を噴かせて以降の、終盤の一気呵成が圧巻。久須美欽一に後ろから激しく犯されながらも、朱丸が長く垂れた黒髪の下に隠された瞳を、決戦兵器の起動をいよいよ宣言するかの如く輝かせる超絶のカットを通過した上で、終に豊丸覚醒。逆襲に転じた朱丸が、平賀勘一と久須美欽一を轟然と吸ひ尽くす鮮やかな外連が堪らない。主演女優の特異な個性を十全に展開に盛り込んだ、看板映画として屈指の完成度が燦然と輝く。作夜姫を正常位で抱く背中に、熱ロウと鞭の雨を降り注がせた朱丸は、平賀勘一と久須美欽一を圧倒した返す刀で石井も容易く攻略。ミイラ取りがミイラになる落とし処には唐突な印象も禁じ得ないものの、石井に朱丸追撃の中止を告げられ、失意の裡に「POTATO」に足を踏み入れた朗子が、居並ぶ変質者の皆さんから、群がるリビング・デッドに貪られる生者よろしく陵辱されるゾンビ乱交が改めて壮絶。挙句半裸の男達の海の中から、憐れ朗子の手足だけが僅かに覗く凄い無惨を画面手前に置き、朱丸が再び「抱いて燃えて、男と女」を朗々と歌ひ上げる画期的なラスト・ショットが完璧に、完璧な豊丸映画を締め括る。ここでも、シースルーの黒いタンクトップに青いビキニ姿の山崎邦紀は、朗子の左手側最前線で大ハッスル。素晴らしく魅力的なモチーフにも思へた、朱丸と作夜姫の対峙が深化させられる暇が残らなかつた点は惜しいが、まるでこの時皆が正方向の熱病に侵されてでもゐたのか、怒涛としかいひやうのない勢ひが素晴らしい快作である。
こゝから先は狭義の感想からは外れ、ほぼ雑記である。実は今回、北九州市八幡の前田有楽劇場は、全て新版とはいへ、浜野佐知・ストリーム・アタックを仕掛けて来た。看板映画の完成形たる今作に加へ残りの二本も、平素の攻撃的な女性主義だけでなく、浜野佐知が旧来の家制度にも対決を挑んだ痛快作「
川奈まり子 牝猫義母
」(2002)の、2010年旧作改題版「けもの道 義母と間男」に、ディストピア・ピンクの傑作「
SEX捜査局 くはへこみFILE
」(2006)の、2009年旧作改題版「Gスポ捜査官 快楽のライセンス」。感動的に充実した番組である、快哉を叫びたい。
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