真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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2007年九月で消滅した旧本館より継続して使用中の掲示板です
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駄楽ひまなときブログ
行きつけのお店のブログ、下戸なのに。しかも閉めたんだけどね
ツイッタ
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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濡れ濡れ 三段責め
は行
/
2011年03月18日
「
痴女の羨望 淫乱渇く
」(1993『濡れ濡れ 三段責め』の2010年旧作改題版/東京スポーツ 中京スポーツ 大阪スポーツ 九州スポーツ連載 姫ゆりの『小道具でエッチ』より/製作:獅子プロダクション/提供:Xces Film/監督:橋口卓明/脚本:瀬々敬久・橋口卓明/撮影:下元哲/照明:伊和手健/編集:酒井正次/助監督:田尻裕司/監督助手:榎本敏郎/撮影助手:中尾正人/照明助手:広瀬寛巳/スチール:西本敦夫/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:姫ゆり・伊藤清美・高木杏子・山口健三・池島ゆたか)。然し旧題新題とも、清々しいまでに適当などうでもよさ感が堪らない。
イヤリングで乳首を挟みつけての、主演女優のオナニーで軽快に開巻。留守番電話には、出演する映画の助監督・田尻(声のみながらヒムセルフか)からも連絡の入る、今やAVに止(とど)まらず、執筆業や女優業に加へストリップと、幅広く活動する姫ゆり(ハーセルフ)こと本名―今作のみ設定なのかも知れないけれど―原田恭子。マンションの玄関には“姫ゆり(原田恭子)”などといふ、無防備な表札も揚げられる。田尻裕司の一つ前に伝言を吹き込んだ、実名東京スポーツで別に構はないやうな気もするのだが、劇中では何故か東西スポーツ紙の記者・坂上章(池島)と、ゆりは新聞に掲載するコラムの依頼といふ商談なのに、オフィス街とはいへあくまでそこら辺の街頭で待ち合はせる。ところが、その場で三年前の元カレ・菊池雄二(山口)の姿を遠目に見かけたゆりは、用件もそこそこに坂上を捨て男を追ふ。安普請にも起因しようそこかしこのちぐはぐさが、如何にもらしいところではある。あへて限界と咎めずに、ここでは好意的に愛嬌と捉へたい。とりあへず喫茶店で旧交を温めた菊池は、ゆりと判れた直後に結婚してゐた。自身も結婚した風を装つたゆりは、菊池とさりげなくガツガツ連絡先を交換する。配役残り出演順に、束の間のピンク実働期間の中で、松岡邦彦のデビュー作「
本番露出狂ひ
」(1993/脚本:山岡隆資)のヒロインも務めた高木杏子は、風貌から窺はせる意志の強さを行動にも移す、菊池の妻・洋子。色の軽いショート・ボブが吃驚させられるくらゐに可愛い―失礼な話だが―伊藤清美は、最終的には消化不足でもあるものの、風情で夫婦仲の微妙さを漂はせもする坂上の妻・好子。今作中、占める比重は洋子の方が圧倒的に高く、高木杏子が伊藤清美よりもビリング下位に置かれる不遇は少々解せない。さて措き、坂上から与へられた、何気ない日常品を駆使してのセックス指南、とかいふぞんざいな御題に頭を抱へたゆりは、渡された名刺の裏に書かれた電話番号を頼りに菊池に助けを求める。菊池も菊池で、高木杏子ほどの超絶美人の妻がゐるにも関らず、洋子の目を盗み盗みゆりの話といふか、より直截には誘ひに乗る、更に直截には腹。
登場順に、画的には映えるが実際にはベタベタしさうな練乳プレイ。直ぐに剥ぎ取つてしまふ上半身を締めつけたラップも噛ませた、こちらはヴィジュアル上は微妙にラッシャー木村に見えなくもない辺りが、そこはかとなくファニーな黒ストッキング・プレイ。坂上夫婦が披露する、暴漢に自宅を襲撃された設定での擬似強姦プレイの詳細は不明であるのは兎も角、締めの交錯する菊池×洋子戦とゆり×坂上戦とを彩る、それぞれ別の場所で情交する者同士が通話する相互電話プレイ。『小道具でエッチ』にて紹介するに当たり、姫ゆりが種々のプレイを実地体験してみるといつた方便で、濡れ場濡れ場を連ねる構成は裸映画として全く頑丈で、実に麗しい。そこから先劇映画的には、18年前の1993年といふと、ポケベルならばまだしも携帯電話が今のやうには普及してゐなかつた世相を反映して、不倫相手と自宅の固定電話を通して連絡を取り合はざるを得なかつた無造作なもどかしさが、力技もそれはそれとして終盤順当にドラマを収束させる中盤を起動する。菊池のポップに怪しげな雰囲気を察知した洋子は、リダイヤル機能を用ゐ呆気なく泥棒猫の存在に辿り着く。そのまゝ最短距離で夫を奪還すべく動き始める洋子の姿は、最終的にはスッカスカに薄い展開ともいへ高木杏子の重心の低い決定力が活き、それなりに始終の推移を支配する。ゆりとの関係に於いて菊池と比べ描き込みが物足らず、取つてつけられた印象が弱くはない坂上の一応純愛が迸る、ダブル・メインイベントを成すゆりと坂上の一戦に際して初めて火を噴く、下元哲必殺のソフト・フォーカス撮影。一方、火遊びを強制終了した旨宣告された―この件で食卓に並ぶのが、赤々と血も滴る分厚いステーキなどといふディテールも心憎い―菊池が、隣に潜り込んだ洋子の体の上のシーツを恐々剥いでみると、事前に夫のコートに折り込まれた東スポ紙を妻が発見するカットも挿んだ上で、下半身はラッシングな黒ストッキングであつたといふショットの戦慄も、女の乳を見せつつ鮮やかに映画的。穴のない女優三本柱にも支へられ充実した絡みの数々が落とし込んだ、詰まるところは他愛ないといへなくもない物語を、ひとまづ一件を落着させ、今度はストリップの巡業に旅立つゆりのラスト・カットが綺麗に締め括る。良くも悪くもクイクイ飲める水のやうな、何でもないやうでゐて、案外満更でもない幸福な一作である。
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