真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「激撮!15人ONANIE」(1990/製作:《株》メディア・トップ/配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/撮影:稲吉雅志/照明:守田芳彦/編集:酒井正次/助監督:広瀬寛巳/監督助手:渋谷一平/撮影助手:山川明人/照明助手:田端一/スチール:津田一英/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:岸加奈子・橋本杏子・井上真愉見・石川恵美・川奈忍・南野千夏・早瀬瞳・一ノ瀬まみ・高樹麗・山本純・原田知美・宮崎マリ・斉藤渚・藤村いづみ・浅香みちる・芳田正浩・山本竜二)。脚本の周知安は片岡修二の変名。出演者中、南野千夏がポスターには南野千秋、原田知美から浅香みちるまでは本篇クレジットのみ。御多分に洩れず、今回の遥か昔に先立つ1995年に「発情集団15人ONANIE」といふタイトルで、既に一度旧作改題済みではあるのだが・・・・一回目が1995年!?十五年ぶり二度目の新版公開、流石に凄まじい領域に足を踏み入れた感も漂ふ。
 開巻奥手な大学生の岩淵か岩渕竜也(芳田)が、文字通り美人女子大生の江藤倫子(岸)にしどろもどろしながらも意を決して告白する。が、仕方もなくあへなく呆気なく玉砕。そんな竜也から泣きつかれた先輩の園山(山本)は、いはく対人恐怖症でコンプレックスの塊、挙句に短小包茎といふ救ひやうのないダメ後輩のために、自身が三年前に通信教育で習得したとかいふ催眠術を伝授してやると胸を叩く。半信半疑といふよりは三信七疑くらゐの竜也に対し、園山は家を訪れた保険外交員(井上)、近所に住む未亡人、結構な大怪我で入院した際の看護婦を、糸をつけた五円玉を目の前で振る、だなどと清々しくポップなメソッドの催眠術でそれぞれ攻略した自慢話を披露する。ここで、三人の濡れ場要員―尤も、要は倫子以外は全員濡れ場要員ともいへる―の内未亡人と看護婦に関しては、カメラに捉へられるのは体だけで顔は映らない。さうなると、佐々木ユメカか原田ひかりででもなければ、殆ど特定のしやうもない件。催眠術の練習中、誤爆した竜也と意外に進んで応戦する園山との薔薇の花香る壮絶な一幕も経て、園山を伴なつた竜也は、石川恵美と連れ立つて歩く倫子に再戦を挑む。岸加奈子と石川恵美の二人揃つて、ミニスカートから煌くやうに覗かせる健康的な美脚が猛然と堪らない。ジュースを買ひに石川恵美が離れた隙に、竜也は倫子に二度目のアタック。とはいへ竜也の術は、倫子には全く効果を成さない。ところが、呆れて立ち去つてしまつた倫子の背後で、何時の間にか戻つて来てゐた友人嬢にはかゝつたらしく、その場で自慰を始めた石川恵美に園山と竜也は垂涎する。そんな中、実家の親が倒れた騒動が発生し、倫子の両親―父親役これも誰?―は娘を残し帰郷する。竜也のこともあり、一人で家にゐるのが不安な倫子はホーム・パーティーを思ひたち、友人といふ友人に電話をかけ誘ふ。その様子を、絶賛不法侵入あるいはストーキングで、山本竜二と芳田正浩といふ画面(ゑづら)的にイイ感じの出歯亀コンビは察知、勝負の一夜に備へ竜也の催眠術を最終調整するべく、園山は出張風俗店「ヴィーナスの館」から橋本杏子を呼ぶ。さうかうしつつ当日、女子大生六人がわしわしと集つた倫子宅に、竜也と園山も突入。その他大勢の中に、川奈忍や一ノ瀬まみがシレッと紛れ込んでゐる豪華さが驚異的。
 竜也か園山が“激撮”する要素は別にどころか全くない点はさて措き、15人もの女のONANIEを謳つた、異常に豪勢な一作。一線級の女優が惜し気もなく次から次へと登場するので、流石に些か奇異にも思ひjmdbに触れてみたところ当時公開は八月、お盆映画といふ格好なのであらう。パンチの効いたオチは光るが、催眠術で高嶺の花をオトさうぜ、だなどとゴキゲンな物語自体は、正味な話他愛ないといつていへなくもないと同時に、それにしても矢張り苛烈なバトルロイヤルを制したのは、麗しく順当に主演女優の岸加奈子。公園森の中のベンチに、倫子が石川恵美を待つ。そこに園山から背中を押され飛び込んで行つた竜也は、五円玉を倫子の目の前でプランプラン揺らし始める。その件の、「この人何してるんだらう?」と首を捻る倫子こと岸加奈子が見せる、キョトンとした、正しくキョトンとしたとしかいひやうのない、だからキョトンとした表情が超絶に素晴らしい、猛烈に素晴らしい、圧倒的に素晴らしい。残りの一切は最早瑣末と捨てたとて敢て構ふまい、この、岸加奈子永遠のキョトンを銀幕に刻み込み得た功績のみによつてでも、本作は映画史にその名を遺すべきである。そもそも、キョトンといふ擬態語を初めて編み出したのは、果たして何処の大天才なのか。話を戻して、初めは竜也―と園山も―の危機を回避する防衛目的であつた筈なのに、次第に勢ひづいた倫子が手放しで楽しげに、家に呼ぶ友達に電話を矢継ぎ早にかけ倒すカットも狂ほしいまでに可愛らしい。劇中唯一の発情集団ONANIEは園山に一手に引き受けさせ、竜也には玄関口での倫子と一対一の大将戦を演じさせる構成も見事に秀逸ではあるが、そのやうな娯楽映画としての頑丈な完成度さへ、この際野暮と忘れてしまへ。キョトンとする岸加奈子に心奪はれろ、それが全てだ、少なくとも俺にとつては。

 最後に、実は今作、看板に重大な問題を抱へてもゐる。闇雲な人海戦術を改めて順を追ひ整理すると、兎にも角にもまづ倫子。続いて後ろ二人は首から上が抜かれないゆゑ、誤魔化されてゐる可能性も厳密にはなくはないが、兎も角園山の武勇伝中に登場する外交員と後家と看護婦。倫子の友達で、竜也の拙い催眠術が誤爆する石川恵美。決戦の時を控へ、仕上げの練習台として招聘される橋本杏子。ここまでで六人。両親が家を空けた一夜、倫子宅に招かれた友達が矢張り計六人。となると要は、津々浦々の何処かでアルフレード氏に切り抜かれたのではなければ、 11人ゐる!ではなくして

 12人しかゐない!

 男二人を加へても無理矢理十四人、一体15といふ数字は、何処から湧いて来たのか。もしや、締めは―客席の―お前がついつい興奮し思はずピーウィーせれとでもいふことなのか?因みに、ポール・ルーベンスがフロリダでお縄を頂戴したのは、本作公開の翌年となる1991年のことである。

 以下は再見時の付記< DMMでカンニングしてクレジットを洗ひ直してみたところ、確かに女優の名前が十五人分並ぶ。ものの、画面に載るのはあくまで十二人、そこは譲れない。
 付記< 江藤家ホムパの面子はどうしても倫子入れて計七名、乾杯時の並びで画面左手前から、時計並びに高樹麗・不明(山本純?)・倫子・早瀬瞳・川奈忍・一ノ瀬まみ・南野千夏


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