真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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昼下りの暴行魔 団地妻を狙へ!
あ行
/
2011年02月04日
「
団地妻暴行 そそり立つ
」(1995『昼下りの暴行魔 団地妻を狙へ!』の2010年旧作改題版/企画・製作:フィルム ハウス/提供:Xces Film/監督・脚本:上田良津/プロデューサー:伍代俊介/撮影:創優和/照明:金子高士/編集:金子尚樹《有》フィルム・クラフト/助監督:松下朋央/製作担当:真弓学/録音:ニューメグロスタジオ/効果:協立音響/現像:東映化学/監督助手:大内幹男/撮影助手:立川亭/照明助手:小林めぐみ/ヘアメイク:KEI/スチール:本田あきら/出演:江崎由美・小川真実・本城未織・平賀勘一・久須美欽一・真央元)。
開巻から早速、画面設計に躓いてみせる。いはゆる団地妻の島崎康子(江崎)が、御近所の北野由美子(小川)と上り坂を歩き越え越え世間話する中で、夫が不倫してゐるらしき悩みを零す。といふシークエンスではあるのだが、道端から生ひ繁る草が邪魔で、向かつて右に立つ康子の顔が全然見えない。開き直ると進んで見せたくなる容姿でもないといつてしまへば確かにその通りなのかも知れないが、小川真実はとつくに見切れてゐるといふのに、主演女優が何時まで経つても満足に抜かれないのは画として実に間抜けである。先走るが監督は初船出とはいへ、ファインダーを覗いてゐるのは紀野正人―本篇撮影クレジットはあくまで創優和―である以上、もう少し考へて欲しい。仕方がないので話を戻すと、物陰から不審な真央元が、そんな康子に狙ひを定めたところでタイトル・イン。
自宅にてエアロビ中の康子を、宅配便の配達を装つた便利屋・木村健一(真央)が襲撃する。ここで主演の江崎由美と真央元に関して、それぞれ話を逸らせ、もとい膨らませると。江崎由美は首から下はそこそこの威力もしくは魅力を誇るラインをしてはゐるのだが、首から上がどうにもぎこちないといふか強張つてゐるとでもいふか、兎も角明白な不美人でもないものの、明確に何かが不足してゐる。どうにもかうにも一本の劇映画を背負はせるには荷が重からう全方位的な心許なさは、ある意味といふか直截にいへば別の意味でエクセスライクである。対して御馴染み真央元の方はといふと、どういふ事情があつたものかは勿論与り知らぬし推測のしやうもないが、声は別人がアテてゐる。それでは果たして、今回真央元のアテレコの主が一体誰なのかといふと、吹かれなくとも飛ばされるドロップアウトの名を賭して断言しよう、間違ひなく木村の台詞を読んでゐるのは山本清彦(a.k.a.やまきよ)である。これは誰の声かと小屋の暗がりの中必死に摸索しながら、山本清彦の名前に辿り着けた瞬間には、思はず聞き分けた俺の耳にガッツポーズした。手前味噌はさて措き再び話を戻すと、木村は康子を手篭めにした事後、「依頼人の注文でね、悪く思ふなよ」と写真を撮る。とそこに、由美子が康子を訪ねて来たため入れ違ひに木村は逃げる。詳細は清々しく不明な小包みの中から取り出したバイブで、強姦されたばかりであるといふのに康子が耽り始めた自慰から流して、ラブホテルでの、案の定康子の夫・邦彦(平賀)と、部下の川上翔子(本城)の不倫の逢瀬。流してとはいひつつも、まるで展開がつゝがなく流れはしないのは、この際いふまでもなからう。正味な話が、木に竹を接いでばかりの映画ではある、といふか、ばかりでしかない。兎も角、不倫相手に本妻との離婚を強く乞ふ翔子は、一戦終へ邦彦がシャワーを浴びる最中に、何事か雇つたらしき相手と首尾の確認を問ふ連絡を取る。今度は由美子と、その夫・光次(久須美)の夫婦生活。その日は妙に燃える由美子が後ろからの挿入を要求するのを、光次は不審がる。この場面にしても、“獣の体位”とでもいふ寸法でもあるまいに、小川真実と久須美欽一の夫婦が一々後背位如きで―肛姦ではない―何を洒落臭いことを、といふ違和感が先に立つ。翌日か、相変らず張形でオナニー中の康子を、未施錠の玄関から悠然と侵入した光次が陵辱したところで、元々覚束ない映画の底は完全に抜ける。
改めて、大蔵映画(現:オーピー映画)に転戦して以降の作品にはソリッドな好印象もウッスラ残つてはゐた反面、以前エクセス最終第四作「
不倫狂ひの人妻たち
」(1997/主演:坂上みすず)を観た際には頭を抱へさせられた、上田良津のデビュー作である。これがどうしたものか、「不倫狂ひの人妻たち」に劣るとも勝らない、まるで木端微塵といふ言葉は今作のためにあるとすら思へて来るくらゐに、まあ一言でいふとどうしやうもない一作、一言にもほどがある。そもそも後の濡れ場では語られる、一度目の北野夫婦の夜の営みの時点で、康子のレイプ現場を目撃した旨を、由美子が光次に話した件をガッサリ割愛したまゝお話を進行させるのが致命傷。その所為で、島崎家に光次が侵入した時点で壮絶な唐突感が明後日に火を噴く。尤も、仮にその段取りを踏まへた上であつても、出鱈目極まりなく火に油を注ぎに行く光次も光次で猛烈に如何なものか、といふ次第で矢張り映画が瓦解するであらう点に些かの変りはない。木村から連絡を受けた康子が、旦那の因果を女房に報はせるべく、誘き寄せた由美子を犯させるのも十二分に酷いどころでは済まず滅茶苦茶だが、挙句に既に壊れた物語を更に鞭打つのは、二度目の邦彦と翔子の密会。翔子から不貞の証拠だと称した、木村が撮影した康子の痴態が収められたフィルムを受け取つた邦彦が、何故だか妻を一欠片たりとて疑ひもせずに、即座に激昂し訣別を言明してみせるまるで意味の判らない頓珍漢展開が、二つ目の致命傷。再殺したいのか、上田良津は自身の処女作を。邦彦のリアクションが非感動的に呑み込めずに、思ひきりポカーンとした、開いた口が塞がらないとは正しくかういふ状態である。大体翔子も、現像を面倒臭がつてフィルムを渡すなよ。プリントを突きつけ、有無をいはさずケリをつけてみせればいい。とかく事欠かないのは、グルッと一周してアバンギャルドの領域に突入しかねない、スーパールーズなツッコミ処ばかり。結局以降は、自暴自棄になり金も支払はなくなつた翔子を、またしてもな報復として木村が強姦した上で、北野夫婦から島崎夫婦、二組の夫婦がグダグダに移行するそれぞれの濡れ場と共に、何故だか各々の関係をシッポリと修復させるラストは、娯楽映画を然るべき着地点に落とし込まうとした気配の窺へなくもないが、この期にてんで纏まりなどするものか。斯くも綺麗な支離滅裂にも、さうさうお目にはかゝれまい。二つの大穴の御蔭で、話の進行が全く成り立たない。自声も聞かせずに真央元が、強姦三冠を達成するのみの詰まらないだとか面白くないも通り越して、最早虚しささへ覚えるやりきれない代物である。本題が一切成立しないのに横道も裏筋もあつたものではないが、大体本城未織も本城未織で、そもそも一体この人は何度、“一番美人な三番手”を務めれば気が済むのか。
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