真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
 



 「受験ママ 禁断の関係」(1991『いんらん家族 義母の寝室』の2008年旧作改題版/製作・配給:新東宝映画/監督:深町章/脚本:周知安/撮影:稲吉雅志/照明:守田芳彦/編集:酒井正次/助監督:広瀬寛巳/監督助手:榎本詳太/撮影助手:相馬健司/照明助手:小田求/スチール:津田一郎/録音:銀座サウンド/現像:東映化学/出演:井上真愉見・早瀬瞳・望月麻子・南条千秋・芳田正浩・池島ゆたか)。脚本の周知安は、片岡修二の変名。正直にいふが今感想中女優の配役は、ビリングからの推定である。この頃の女優部ともなると、正直手も足も出ない。
 高校三年生の轟ワタル(南条)が受験勉強に悪戦苦闘する一方、母・明子(井上)と父親(池島)は、まるでお構ひなしの夫婦生活。受験勉強してゐようがゐまいが、夫婦の営みなんぞ息子であらうとなからうと、基本的に他人には憚らうものだが。洩れ聞こえる母親の嬌声に、ワタルは勉強がてんで手に着かない。おまけに姉の悦子(早瀬)まで、帰宅するなり派手な自慰に耽り、弟の焦燥に火に油を注ぐ。ワタルが仕方なく、勉強机の大抽斗からエロ本を取り出し右手の恋人で未だ実戦投入前の試作機を慰め、そのまま寝落ちたところ翌朝明子に放つた精まで見られてしまふ、胸が別の方向にキュンとなる件なんぞ挿みつつ、家族を大事件が襲ふ。性欲だけは盛んな父親が、部下の不倫相手(望月)との間に子供が出来たどころか、堕ろさせもせずいづれ生まれて来る子供を、悦子・ワタルの弟あるいは妹として明子に育てさせるといふのだ。憤慨紛れに感情の平定を失したワタルは、再び明子に自家発電を目撃された勢ひに任せ、終に母親と禁断の一線を越える。芳田正浩は、わざわざ悦子がこつそり自宅に連れ込んでは、大胆にも家族に秘密で事に及ぶ恋人。覗くワタルに見せつけるほかには、給料日前でホテル代にさへ欠く、とかいふ方便に必然性は全く見当たらない。
 余程幸福かあるいは遠い昔を既に忘れてしまつた者を除いては、観客の誰しもを嫌な意味でモジモジさせざるを得ない、ワタルの切実過ぎる写実的な童貞受験生ぶりと当然のことながら古びた肌触り以外には、漫然と濡れ場濡れ場が重ねられるばかりの、眠たくならないのが我ながら不思議にすら思へる低めの水準作、ともいへるところであつたのだが。オーラス思はぬ力技で映画を引つこ抜くと、万事を丸く収めなほかつ失ひかけてゐた目標を取り戻した主人公が前を向いて再び、そして力強く歩き出したところで締めるラストは、娯楽映画としてそれなりに磐石。唐突さは否めない大技への布石が、もう少し明示的に置いてあつても良かつたやうな感触は残るが、脚本・監督それぞれの両ベテランの、狙ひすました一撃が綺麗に決まる様は鮮やかに、鑑賞後の心持ちも実に爽やかな一作である。

 ところで、改めて振り返つてみるとこれ旧題は、微妙にオチ割つてなくね?


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )