真夜中のドロップアウトカウボーイズ@別館
ピンク映画は観ただけ全部感想を書く、ひたすらに虚空を撃ち続ける無為。
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福岡市在住のピンクス。ピンクスとは、ピンク映画愛好の士、を意味する造語である。
仮名遣ひは正仮名を使用。
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凌辱の爪跡 裂かれた下着
か行
/
2009年05月03日
「
凌辱の爪跡 裂かれた下着
」(2004/製作:フリーク・アウト/提供:オーピー映画/監督・脚本:国沢☆実/撮影:岩崎智之/照明:奥村誠/編集:フィルムクラフト/助監督:城定秀夫/監督助手:北村翼/撮影助手:橋本彩子・原伸也/照明助手:糸井恵美/音楽:因幡智明/スチール:佐藤初太郎/効果:梅沢身知子/協力:本田唯一/録音:シネキャビン/現像:東映ラボ・テック/出演:春咲ももか・美堀ゆか・村山紀子・竹本泰志・久保隆・世志男・THUNDER杉山)。
大手週刊誌『週刊クライシス』記者の由美(春咲)は男社会の中で冷飯を喰はされ続けるも、切歯扼腕して辿り着いたレイプ被害者を追跡取材する企画で一山当てると、今は編集長(俳優部的にはクレジットレスの国沢実)からも掌を返したかのやうに重用され栄華を掴んでゐた。対照的に編集長からはどやされてばかりのダメ記者で彼氏・章夫(久保)に抱かれながら、由美は大勢の男の指に体中を蹂躙される淫夢を見る。人気絶頂の五年前、偏執的なファンに犯され芸能界を引退した元アイドル・静香(美堀)の下へと取材に向かつた由美は、一足先に静香に会つて来た、三流ゴシップ誌『ウィークリースキャンダル』記者の沢木(竹本)と鉢合はせる。沢木もレイプ被害者を追つてをり、これまで由美とはそこかしこで遭遇する商売敵であつた。静香から日置(世志男)に犯された時の模様を聞き出しながら、由美は再び自らも男に強姦される妄想に囚はれる。取材後、静香は由美に、犯罪被害者として伏せるのではなく、氏名を明らかにしての記事を書くやうを求める。当時のトップ・アイドルとしての、輝ける日々の記憶を未だ捨てきれない静香は、醜聞すら利すとも、形振り構はぬ復帰を切望してゐたのだ。複雑な心境で静香宅を後にした由美を、沢木が待ち伏せる。沢木はフェミニストを自称しつつ、同じ女性の立場から被害者に同情しレイプ犯罪の非人間性を訴へるのではなく、結局、その記事は功利心の産物に過ぎないのではないかと、由美の取材姿勢をシニカルに批判する。一方、かつて由美の取材攻勢により、夫には秘密にしてゐた過去のレイプ体験が露見してしまひ、一方的に離婚され親権も奪はれた二宮改め旧姓倉橋真紀(村山紀子/ex.篠原さゆり)が、自分の方から取材して呉れと由美に接近する。だがそれは、真紀の罠だつた。THUNDER杉山は、真紀が由美をレイプさせるために調達した浮浪者・金田。真紀が金田を紹介して曰く、“五年間童貞”とのこと。ある一定期間女日照りの状態が継続すると、リセットで初期化されるのかよと苦笑したくもなるところではあるが、反面、ある特定の信仰の立場からは、都合のいい話だともいへようか。少し我慢してゐれば、再び処女なのだから。
箸にも棒にもかゝらない陰々滅々路線からはひとまづ離れてゐるともいへ、とはいへ矢張り手放しに詰まらないのかといふと、地味にさうでもない。ヒロインの周辺は、意外に充実してゐる。まづ最初に光るのは、調子のいい俗物編集長ぶりを嬉々と好演する国沢実、では勿論別になく(
なら書くなアホタレ
)、静香の回想濡れ場に登場する世志男。偏執的アイドリアンのポップな変態性を、綺麗に定着させる。組敷いた静香の股間に至近距離から大仰な一眼レフを向けたところで、アイドルらしからぬ―といふのも、何が何だかよく判らない話でもあるが―静香の大陰唇の黒さにブチ切れる件は絶品。国沢実の映画監督人生の中でも、画期的な抱腹絶倒の名シークエンスであらう。取材を終へた由美を送り出し際、芸能界復帰への執心を通り越した狂気の片鱗すらをも、曲がつた面長の表情に漂はせる美堀ゆかも、その瞬間にだけは確かに輝く。顔が曲がつてゐる点に関しては、確かに巨乳といへばさうであるのかも知れないが、加へて巨腹にそもそも巨骨でもある春咲ももかも、劣るとも勝らず同様といふか同罪でもあるのだが、“巨骨”といふのは何々だ。正直主演女優が一番詮ないのでもつと出番も欲しかつた、白い肌に黒い洋服の映える村山紀子は、篠原さゆり時代から変らぬない特の浮遊感と突進力とを発揮する。何より職業的好敵手を大胆に通り越した敵役たる、沢木の人物造形が素晴らしい。要はその目的は歪んだ八つ当たりでしかない、といへば全くその通りで実も蓋もなくなつてしまふのだが、表面的には人格が統合されてゐないかの如く支離滅裂にも見えかねない沢木の姿は、最終的には歪んでゐるとはいへ歪んだなりに筋は通してゐる。己独りの真実を抱へ、捨て台詞を残し由美と章夫の前から退場する際には、竹本泰志はこれまでに見たことのない表情を見せる。ところが問題は主人公、と序にその相方。由美のレイプ願望だか妄想は一切深化される訳でもないまゝ丸つきり付け焼刃にしか見えず、何だかんだの末に映画一本を経過しておいて、詰まるところは沢木から看破されもした精一杯背伸びした功名心から、由美は半歩も動きはしない。そんな、始末に終へず挙句に器量も不味いヒロインの、意に沿ふのみで甘やかすばかりの章夫も全く頂けない。提出された何やかにやを一切放置した上で、「でも今は抱いて」、「今は、思ひきり・・・・」とかいふ由美のヌルい求めに応じての濡れ場で締める幕引きには、正しく開いた口が塞がらなかつた。外堀から、二の丸三の丸までは実はしつかりしてゐながら、本丸がハリボテでは仕方がないといふ一作である。
そんな中で、ひとつの発見は。三年後、木端微塵な暗黒映画「
THEレイパー 暴行の餌食
」(2007)内に於いて、瑠依(安田ゆり)の部屋の壁を飾り居た堪れないどころの騒ぎではない気分にさせられる、座り込み両手で顔を覆つた髪の長い女の絵が、今作中由美の部屋の壁にも既に見られる。瑠依の部屋と由美の部屋が同じ部屋なのかといふところまでは、そのやうな気もしないでもないが、流石に確証を持ちかねる。絵に話を戻すと、ザ・イエローモンキーの4thアルバム「smile」(1995)のジャケットとほぼ同構図に思へたのは、当サイトの早とちり。「smile」ジャケは両足を折つた、いはゆるお姉さん座りの女が左向きに顔を覆つてゐるが、こちらの絵はといふと、右足は曲げてゐるが左足は前に伸ばして投げ出し、体の方向も右を向いてゐる。だからそれがどうしたのだと問はれたならば、別にどうもしやしないんだけどさ、とでもしかお答へのしやうもない。
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